ASDの中核症状を事例から読み取る
看護師国家試験 第113回 午前 第112問 / 精神看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(22歳、男性)は、高校卒業後に就職したが、同僚との関係がうまく築けず、転職を繰り返している。「他の人と自分はどこか違う。自分の将来が不安だ」と感じたAさんは精神科クリニックを受診し、自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)と診断された。 Aさんは小学生のころから他人の気持ちが理解できないときがあり、対人関係を築くことが苦手で、学校で孤立していた。また、偏食が強く、るいそうがみられたために、同級生から容姿のことでいじめられたことがあった。中学校や高校では忘れ物が多く、集団生活になじめなかった。 Aさんに認められるのはどれか。
- 1.被害妄想
- 2.予期不安
- 3.ボディイメージの障害
- 4.コミュニケーションの障害
対話形式の解説
博士
博士じゃ。今回は自閉症スペクトラム障害の症状理解じゃ。
アユム
Aさん22歳男性、ASDと診断されたんですね。
博士
エピソードを整理してみよう。どんな困りごとがあるかの。
アユム
他人の気持ちが理解できない、対人関係が苦手、転職を繰り返している、です。
博士
そうじゃ、これは典型的なコミュニケーションの障害じゃ。
アユム
被害妄想はどうですか、いじめられたと書いてありましたが。
博士
被害妄想は事実無根の思い込みじゃ。Aさんは実際にいじめられており、妄想ではないぞ。
アユム
予期不安は将来の不安とは違うんでしょうか。
博士
予期不安はパニック発作の再発を恐れる不安じゃ。Aさんの漠然とした将来不安とは別物じゃ。
アユム
ボディイメージの障害は。
博士
それは神経性やせ症の特徴症状じゃな。太っていないのに太っていると感じる歪みじゃ。
アユム
Aさんは偏食とるいそうがあるけれど、身体像の歪みの記述はないですね。
博士
よく読めておる。ASDの中核はDSM-5でも社会的コミュニケーションと対人相互反応の欠陥じゃ。
アユム
それに加えて興味の限定や反復行動もありましたね。
博士
そうじゃ。Aさんは忘れ物が多いという情報もあるから、ADHDの併存も疑われるぞ。
アユム
発達障害は併存することが多いんですね。支援は何がありますか。
博士
社会生活技能訓練や認知行動療法、環境調整、就労支援じゃな。
POINT
ASDの中核症状は社会的コミュニケーションの障害と限定的・反復的行動様式です。Aさんの対人関係困難や転職反復はコミュニケーション障害に合致します。被害妄想は統合失調症、予期不安はパニック障害、ボディイメージの障害は摂食障害に特徴的な症状で、Aさんのエピソードには当てはまりません。発達障害は併存も多く、包括的な支援とSSTなどの介入が重要となります。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(22歳、男性)は、高校卒業後に就職したが、同僚との関係がうまく築けず、転職を繰り返している。「他の人と自分はどこか違う。自分の将来が不安だ」と感じたAさんは精神科クリニックを受診し、自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)と診断された。 Aさんは小学生のころから他人の気持ちが理解できないときがあり、対人関係を築くことが苦手で、学校で孤立していた。また、偏食が強く、るいそうがみられたために、同級生から容姿のことでいじめられたことがあった。中学校や高校では忘れ物が多く、集団生活になじめなかった。 Aさんに認められるのはどれか。
解説:正解は4です。自閉症スペクトラム障害(ASD)の中核症状は、社会的コミュニケーションと対人相互反応の持続的な欠陥、および興味・行動の限定や反復です。Aさんは「他人の気持ちが理解できない」「対人関係を築くのが苦手」「同僚との関係が築けず転職を繰り返す」と、まさにコミュニケーションの障害に該当するエピソードを明確に示しています。
選択肢考察
-
× 1. 被害妄想
被害妄想は統合失調症や妄想性障害でみられる症状で、誰かに攻撃されている・陥れられているといった訂正不能な誤った確信です。Aさんのエピソードには該当する内容がありません。
-
× 2. 予期不安
予期不安はパニック障害でみられ、また発作が起こるかもしれないという不安で行動制限を生じます。Aさんの将来への漠然とした不安とは病態が異なり、ASDの中核症状でもありません。
-
× 3. ボディイメージの障害
ボディイメージの障害は神経性やせ症(摂食障害)に特徴的で、るいそうしているのに太っていると認識する歪みです。Aさんは偏食とるいそうはありますが、身体像の歪みに関する記述はありません。
-
○ 4. コミュニケーションの障害
ASDの中核症状である社会的コミュニケーション障害が、Aさんの幼少期からの対人関係困難、同僚との関係構築困難、転職の繰り返しといったエピソードに典型的に現れています。
DSM-5ではASDの診断基準として、社会的コミュニケーションと対人相互反応の欠陥、限定的・反復的行動様式の2領域に症状が発達早期から存在することが要件とされます。Aさんの「忘れ物が多い」「集団生活になじめない」はADHD的特性の併存も示唆され、発達障害は併存することが多いです。支援としては社会生活技能訓練(SST)、認知行動療法、環境調整(構造化、視覚支援)、就労支援などが有効です。
自閉症スペクトラム障害の中核症状を、事例から読み取る問題です。
「状況設定問題」の関連記事
-
処方薬がいつしか「快感の道具」に…乱用と急性中毒はどう違う?
処方薬を陶酔目的で逸脱使用し社会生活に支障が出ている状態を、急性中毒・拘禁反応・乱用・フラッシュバックのどれ…
114回
-
入院でぴたりと薬を止めたら…48〜72時間に襲う離脱症候群の正体
ベンゾジアゼピン系抗不安薬の長期大量服用者が急に断薬された際、48〜72時間に出現しやすい症状を問う問題。離脱症…
114回
-
ひとりで抱え込まないために—依存症回復を支えるセルフヘルプグループ
物質使用障害の回復期にある若年女性に勧める社会資源を問う問題。「1人暮らし+復学」という生活希望に合致し、依存…
114回
-
精神看護のセルフケア6項目で「いま何が一番大事?」を見抜く
Underwoodのセルフケア6領域に基づき、入院急性期の統合失調症患者で最も優先される観察項目を選ぶ。昼夜逆転を伴う…
114回
-
SSRIの飲み始めに襲う「吐き気」の正体—自己中断を防ぐ服薬指導
うつ病急性期の高齢患者と家族へのSSRI服薬指導の要点を問う問題。初期消化器症状の事前説明によって自己中断を防ぐ…
114回