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妊娠初期に起こる体の変化〜なぜ「便秘」が答えになるのか〜

看護師国家試験 第115午前113(状況設定問題)

国試問題にチャレンジ

115午前113

状況設定

Aさん(24歳、初妊婦、事務職)は妊娠8週であり、両親と3人で暮らしている。パートナー(24歳、大学院2年生)は就職が決まっており、Aさんと結婚する予定である。 Aさんは「特に朝の気持ち悪さがつらくて、あまり食べられません。ご飯が炊き上がるにおいだけで吐き気がします」と話す。妊娠経過は順調である。

Aさんは「妊娠することは考えていなかったので、自分の体にどんなことが起こるのか想像もつきません」と話した。看護師は、次の妊婦健康診査までに生じやすい変化について説明することにした。 Aさんに説明する内容で適切なのはどれか。

  1. 1.便秘
  2. 2.尿漏れ
  3. 3.腰背部痛
  4. 4.下肢のけいれん

対話形式の解説

博士博士
今日は妊娠8週の初妊婦Aさんに、これから起こる体の変化を説明する場面じゃ。選択肢は便秘、尿漏れ、腰背部痛、下肢のけいれん。さあ、どれが妊娠初期に説明する内容として適切かのう?
サクラサクラ
えーと、妊娠中の症状っていろいろ聞きますけど…全部妊娠中に起こるイメージがあって迷います。妊娠8週って、まだお腹は目立たない時期ですよね?
博士博士
その通り。8週はまだ子宮も鶏卵大〜手拳大くらいで、外見上はほぼ変化が分からん。だからこそ「子宮が大きくなることで起こる症状」はまだ出にくいのじゃ。
サクラサクラ
あ、なるほど。じゃあ尿漏れとか腰痛は、お腹が大きくなってから起こる症状ってことですか?
博士博士
そういうことじゃ。尿漏れは増大した子宮が膀胱を圧迫し、骨盤底筋がゆるむことで起こる。腰背部痛も子宮が大きくなって重心が前にずれ、背中が反るような姿勢になることが原因。どちらも中期以降に多い変化じゃな。
サクラサクラ
下肢のけいれん、いわゆる「こむら返り」もそうですか?
博士博士
うむ。こむら返りは循環血液量が増えて電解質バランスが揺らいだり、子宮が下肢の血管や神経を圧迫することで起こる。これも中期から後期に増える症状じゃ。
サクラサクラ
すると残るのは便秘ですね。でも、なぜ妊娠初期から便秘になるんですか?子宮はまだ小さいのに…。
博士博士
良い疑問じゃ!カギは「黄体ホルモン(プロゲステロン)」じゃ。妊娠が成立すると、子宮を収縮させないようにプロゲステロンの分泌が一気に増える。ところがこのホルモンは子宮の平滑筋だけでなく、腸管の平滑筋にも作用して蠕動運動を抑えてしまうんじゃ。
サクラサクラ
子宮を守るためのホルモンが、腸の動きまで止めちゃうんですね。
博士博士
さらにAさんはつわりで食事量も水分摂取量も減っておる。これも便秘を悪化させる要因じゃ。だから「妊娠初期=ホルモン由来の変化(つわり・便秘・眠気・頻尿)」とまとめて覚えるとよい。
サクラサクラ
頻尿も初期からあるんですか?まだ子宮は小さいのに不思議です。
博士博士
初期の頻尿は子宮の物理的圧迫というより、骨盤内のうっ血や膀胱が子宮にわずかに押されること、ホルモンの影響で生じる。中期にいったん落ち着き、後期に再び子宮が大きくなって頻尿が戻ってくる、という二相性が特徴じゃ。
サクラサクラ
時期によって同じ症状でも原因が違うんですね。便秘の場合、Aさんにはどんな指導をすればいいですか?
博士博士
水分をしっかり摂る、食物繊維(野菜・果物・海藻・豆類)を意識して摂る、無理のない範囲で体を動かす、決まった時間にトイレに座る習慣をつける、というのが基本じゃ。薬が必要なら酸化マグネシウムなど妊娠中も比較的安全な緩下薬を医師と相談する。
サクラサクラ
Aさんは「自分の体に何が起こるか想像もつかない」と話していましたよね。先に知っておくと安心しますね。
博士博士
その通り。看護師の役割は「これから何が起こりやすいか」を時期に合わせて先回りして伝えること。予期的指導(anticipatory guidance)といって、母性看護では非常に重要な視点じゃ。

POINT

妊娠8週の初妊婦に対し、次回健診(おおむね妊娠12週前後)までに生じやすい妊娠初期の身体変化を選ぶ問題。ホルモン変化に起因する症状(便秘・つわり・頻尿など)と、子宮増大に起因する中期以降の症状を区別できるかがポイント。

解答・解説

正解は1です

問題文:Aさんは「妊娠することは考えていなかったので、自分の体にどんなことが起こるのか想像もつきません」と話した。看護師は、次の妊婦健康診査までに生じやすい変化について説明することにした。 Aさんに説明する内容で適切なのはどれか。

解説:正解は 1 です。Aさんは妊娠8週であり、次回の妊婦健康診査(通常は妊娠12週前後)までは妊娠初期にあたります。妊娠初期にはプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌増加に伴い、消化管平滑筋の蠕動運動が抑制されるため腸管の動きが鈍り、便秘が起こりやすくなります。さらにつわりによる食事・水分摂取量の減少、活動量の低下、子宮による直腸圧迫の始まりも便秘を助長する要因となります。よって妊娠初期の女性に説明する身体変化として、便秘が最も適切です。

選択肢考察

  1. 1.  便秘

    妊娠初期から黄体ホルモン(プロゲステロン)の作用で腸蠕動が低下し便秘が生じやすい。加えてつわりによる食事・水分摂取量の低下や活動量減少も誘因となるため、妊娠初期に説明すべき身体変化として最適。

  2. ×2.  尿漏れ

    尿漏れ(腹圧性尿失禁)は増大した子宮による膀胱圧迫や骨盤底筋の弛緩が主な原因で、妊娠中期以降から後期にかけて生じやすい。妊娠8週の段階ではまだ子宮はそれほど大きくなく、典型的な変化ではない。

  3. ×3.  腰背部痛

    腰背部痛は子宮増大に伴う重心の前方移動や脊柱前彎の増強、リラキシンによる骨盤関節の弛緩によって生じる。妊娠中期以降に出現することが多く、妊娠初期の主たる変化とはいえない。

  4. ×4.  下肢のけいれん

    いわゆる「こむら返り」は、循環血液量増加に伴う電解質バランスの変動や子宮による下肢血管・神経の圧迫、カルシウム・マグネシウム不足などが関与し、妊娠中期から後期にかけて多く見られる。妊娠初期に説明する内容としては不適切。

妊娠初期(〜13週)に多い身体変化としては、つわり(悪心・嘔吐)、眠気、頻尿、便秘、乳房の張りや痛み、基礎体温の高温相持続、情緒不安定などが挙げられる。これらは主にhCG・エストロゲン・プロゲステロンといった妊娠維持に関わるホルモンの急激な上昇により生じる。一方、子宮増大に由来する症状(腰背部痛・尿漏れ・下肢けいれん・静脈瘤・浮腫・仰臥位低血圧症候群など)は妊娠中期以降に顕在化することを整理しておくと、時期別の指導内容を選びやすい。便秘への対応としては、十分な水分摂取、食物繊維(野菜・果物・海藻)の摂取、適度な運動、規則的な排便習慣の確立を指導する。緩下薬を使う場合は妊娠中でも比較的安全な酸化マグネシウムなどが選択されることが多い。

妊娠8週の初妊婦に対し、次回健診(おおむね妊娠12週前後)までに生じやすい妊娠初期の身体変化を選ぶ問題。ホルモン変化に起因する症状(便秘・つわり・頻尿など)と、子宮増大に起因する中期以降の症状を区別できるかがポイント。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。