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筆談ができるのは誰?失語症と構音障害の決定的な違い

看護師国家試験 第115午後35

国試問題にチャレンジ

115午後35

コミュニケーションの方法として筆談が適しているのはどれか。

  1. 1.全失語
  2. 2.構音障害
  3. 3.運動性失語
  4. 4.感覚性失語

対話形式の解説

博士博士
今日は脳に障害のある患者さんとのコミュニケーションについて考えるぞ。話すことが難しい患者さんに筆談が使えるかどうか、これは選ぶ手段次第で意思疎通の質がガラリと変わる大事なテーマじゃ。
サクラサクラ
博士、選択肢に全失語、構音障害、運動性失語、感覚性失語と並んでいますが、どれも「話せない」イメージで混乱します…。
博士博士
よし、では大きな枠組みから整理しよう。「話せない」原因は2種類に分けられるのじゃ。一つは「ことばを処理する脳」の障害、つまり失語症。もう一つは「ことばを音にする口や喉の運動」の障害、つまり構音障害じゃ。
サクラサクラ
なるほど、ソフトウェアの問題か、ハードウェアの問題かみたいなことですね。
博士博士
まさにその通り!構音障害は、舌・口唇・声帯・呼吸筋といった発声に関わる筋肉や神経の動きが障害されて、音がうまく作れない状態じゃ。脳卒中の延髄付近の障害、パーキンソン病、ALS、小脳失調などで起こる。
サクラサクラ
じゃあ構音障害の人は、ことばを考える力や書く力は残っているということですか?
博士博士
その通り。言語野は無事だから、書いて伝えること、つまり筆談がとても有効なのじゃ。だから正解は2の構音障害ということになる。
サクラサクラ
では失語症の3タイプは、なぜ筆談が向かないのでしょう?
博士博士
順番に見ていこう。まず運動性失語、ブローカ失語とも呼ばれる。前頭葉のブローカ野が損傷されて、ことばを「出力」する経路が壊れる。話すのも書くのも同じように障害されるから、書こうとしても文字が出てこないのじゃ。
サクラサクラ
書くのも「出力」だから一緒にやられちゃうんですね。理解は残っているんですか?
博士博士
比較的保たれておる。だから「はい・いいえ」で答えられる質問や、絵を見せて選んでもらう方法が有効じゃ。
サクラサクラ
次に感覚性失語、ウェルニッケ失語ですね。
博士博士
側頭葉のウェルニッケ野の障害で、ことばを「理解する」機能が壊れる。話すこと自体は流暢でペラペラ話せるが、内容に意味不明な言葉が混ざる錯語が出るのじゃ。
サクラサクラ
理解が障害されているということは、書いた文字を見せても…?
博士博士
そう、読んで理解することも難しいから筆談は伝わりにくい。実物を見せたり、身振り手振りや表情といった非言語的な手段の方が有効じゃ。
サクラサクラ
最後の全失語は、表出も理解も両方ダメということですよね?
博士博士
その通り。広範な言語野の損傷で、聞く・話す・読む・書くのすべてが重度に障害される。筆談は成立しないから、絵カード、写真、視線、タッチなど残された感覚や運動を使って関わるのじゃ。
サクラサクラ
整理すると、構音障害だけが「頭は元気だけど口がうまく動かない」状態だから筆談が成立するんですね。
博士博士
見事な整理じゃ!臨床では五十音表、文字盤、コミュニケーションボード、最近ではタブレット型のVOCAなどのICT機器も使われる。患者さんに残っている機能を見極めて、最も使いやすい方法を一緒に選ぶことが看護師の腕の見せどころじゃよ。
サクラサクラ
同じ「話せない」でも、原因と残された機能を見極めて手段を選ぶことが大切なんですね。とても腑に落ちました。

POINT

言語機能(理解・表出・読み書き)が保たれているか否かで筆談の適否が決まる。構音障害は「話せないが書ける」状態の代表であり、筆談が最も適する。

解答・解説

正解は2です

問題文:コミュニケーションの方法として筆談が適しているのはどれか。

解説:正解は 2 です。構音障害は、発声・発語に関わる口唇・舌・声帯・呼吸筋などの運動機能の障害により、話す動作(構音)がうまく行えない状態である。脳神経や小脳・錐体路の障害、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉などで生じる。重要なのは、言語そのものを司る大脳の言語野(ブローカ野・ウェルニッケ野)は障害されていないため、言葉の理解、語の選択、文字を読む・書くといった言語処理能力は保たれている点である。したがって、口で話すことは不明瞭でも、文字を書いて意思を伝える筆談は十分に成立する。一方、失語症は大脳の言語野そのものの障害であり、聞く・話す・読む・書くという言語機能全般が侵されるため、筆談は適応となりにくい。

選択肢考察

  1. ×1.  全失語

    全失語は、ブローカ野・ウェルニッケ野を含む広範な言語野の損傷で生じ、言語の表出(話す・書く)も理解(聞く・読む)もほぼ全面的に障害される。文字を読むことも書くこともできないため筆談は成立しにくく、絵カード、ジェスチャー、表情、視線などの非言語的コミュニケーションが中心となる。

  2. 2.  構音障害

    構音障害は発音に関わる運動機能の障害であり、言語理解や読み書きの能力は保たれている。発話が不明瞭で聞き取れない場合でも、文字を書くことで意思を伝えられるため、筆談が最も有効に機能する対象である。あわせて五十音表の指差しやコミュニケーションボードも活用しやすい。

  3. ×3.  運動性失語

    運動性失語(ブローカ失語)は、左前頭葉のブローカ野損傷により言葉の表出が障害される。理解は比較的保たれるものの、書字も同様に障害されやすく、思った言葉を文字にすることが難しい。したがって筆談だけでは意思疎通が十分に成立しにくく、はい/いいえで答えられる閉じた質問、絵やイラストなどの併用が必要となる。

  4. ×4.  感覚性失語

    感覚性失語(ウェルニッケ失語)は、左側頭葉のウェルニッケ野損傷により言語の理解が障害される。話すことは流暢でも内容に錯語が多く、また読んで意味を捉えること自体が難しいため、書いて見せても理解されにくく、筆談は適さない。視覚的な実物提示や身振りなど、状況依存的な手がかりを用いる方が伝わりやすい。

失語症と構音障害の鑑別は国試頻出。失語症は「ことばを処理する大脳のソフトウェアの障害」、構音障害は「ことばを音にするハードウェア(口・舌・喉)の障害」とイメージすると整理しやすい。失語症はさらに、表出が苦手な運動性(非流暢)、理解が苦手な感覚性(流暢だが意味不明)、両方重度の全失語、復唱が苦手な伝導失語などに分類される。コミュニケーション手段の選択は、①障害の種類と程度、②保たれている機能(視覚・聴覚・運動機能)、③本人の慣れ親しんだ手段を踏まえて決定し、五十音表、コミュニケーションボード、文字盤、絵カード、ICT機器(VOCA・タブレット)など多様な選択肢を組み合わせることが望ましい。

言語機能(理解・表出・読み書き)が保たれているか否かで筆談の適否が決まる。構音障害は「話せないが書ける」状態の代表であり、筆談が最も適する。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。