お腹をふくらませて手術する?腹腔鏡下左半結腸切除術と気腹法のキホン
看護師国家試験 第115回 午後 第95問(状況設定問題)
国試問題にチャレンジ
状況設定
Aさん(55歳、男性)は会社の健康診断で便潜血が陽性となった。他の検査項目に異常がなかったため、精密検査を受けなかった。6か月後、妻の強い勧めで病院を受診し「体調に変化がなかったので、仕事を優先していました。ただ、くわしく検査を受けないといけないのですね」と話した。Aさんに脊髄まで及ぶ悪性腫瘍はない。
Aさんは腹腔鏡を用いた気腹法による左半結腸切除術を受けることになった。入院に付き添ってきた妻は「腸を半分も切ると言われて驚いてしまいました。ずいぶん切るそうですが、どんな手術になるのかしら」と話した。 Aさんの手術について正しいのはどれか。
- 1.局所麻酔で行う。
- 2.上行結腸側を切除する。
- 3.20cm程の切開創ができる。
- 4.二酸化炭素を腹腔内に入れる。
対話形式の解説
博士
サクラ
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博士
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サクラPOINT
腹腔鏡下手術の基本である気腹法の手技と、左半結腸切除術の解剖学的範囲を正しく理解しているかを問う問題。麻酔法・創の大きさ・切除部位・気腹ガスという4つの観点を整理して選択肢を吟味する。
解答・解説
正解は4です
問題文:Aさんは腹腔鏡を用いた気腹法による左半結腸切除術を受けることになった。入院に付き添ってきた妻は「腸を半分も切ると言われて驚いてしまいました。ずいぶん切るそうですが、どんな手術になるのかしら」と話した。 Aさんの手術について正しいのはどれか。
解説:正解は 4 です。腹腔鏡下手術における気腹法とは、腹腔内に二酸化炭素(CO2)を注入して腹壁を持ち上げ、術野となる空間を確保する手技を指します。一般的には腹腔内圧を10〜15mmHg程度に保ち、複数の小さなトロッカー(ポート)から腹腔鏡カメラと鉗子類を挿入して操作します。CO2が選ばれる理由は、血液への溶解性が高く誤って血管内に入っても代謝・排出されやすいこと、非引火性で電気メスを安全に使用できること、入手が容易で安価であることなどが挙げられます。Aさんの左半結腸切除術もこの気腹法を用いた腹腔鏡下手術として行われます。
選択肢考察
- ×1. 局所麻酔で行う。
腹腔鏡下左半結腸切除術は気腹による横隔膜挙上と長時間の腹腔内操作を伴うため、気道確保と循環管理が必須となり、原則として気管挿管下の全身麻酔で行われます。局所麻酔では呼吸抑制への対応や疼痛コントロールが不十分で、適応外です。
- ×2. 上行結腸側を切除する。
「左半結腸」とは横行結腸の左側1/3から下行結腸、S状結腸近傍までを指し、血流支配は中結腸動脈左枝・左結腸動脈領域です。上行結腸は右側結腸であり、右半結腸切除術の対象となるため、左半結腸切除術では切除されません。
- ×3. 20cm程の切開創ができる。
腹腔鏡手術では直径5〜12mm程度のポートを数か所作成して操作するのが基本で、切除腸管の摘出時に3〜5cm程度の小切開を加える場合があります。20cmにおよぶ大きな切開は開腹術の創であり、低侵襲を目的とする腹腔鏡手術の前提とは異なります。
- ○4. 二酸化炭素を腹腔内に入れる。
気腹法では二酸化炭素を腹腔内に送り込み、腹壁を膨らませて視野と作業スペースを確保します。CO2は体内吸収後も呼気から排出されやすく、非引火性で電気メスとも併用しやすいため腹腔鏡手術の標準的な気腹ガスとして用いられています。
腹腔鏡手術のメリットは、開腹手術に比べて創が小さく術後疼痛が少ない、腸管運動の回復が早い、入院期間が短縮される、整容性が高いといった点にあります。一方、気腹に伴う合併症として、皮下気腫、高炭酸ガス血症、CO2ガス塞栓、横隔膜挙上による換気障害、長時間の頭低位による顔面浮腫や眼圧上昇などがあり、術中はEtCO2や気道内圧、循環動態を細やかにモニタリングします。看護師は術前に手術の概要をわかりやすく説明し、術後は創痛コントロール、早期離床、肺合併症予防、排便状況の観察を中心に支援します。Aさんの妻のように「半分も切る」と誤解しているケースでは、開腹術ではなく腹腔鏡下に行うこと、小さなポート創が中心であることを丁寧に伝え、不安の軽減を図ることが大切です。
腹腔鏡下手術の基本である気腹法の手技と、左半結腸切除術の解剖学的範囲を正しく理解しているかを問う問題。麻酔法・創の大きさ・切除部位・気腹ガスという4つの観点を整理して選択肢を吟味する。
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