災害後3日目の涙とサバイバーズ・ギルト 看護師がまず聞くべきこと
看護師国家試験 第115回 午後 第119問(状況設定問題)
国試問題にチャレンジ
状況設定
大型の台風が直撃するという予報を受けて、午前9時、病院では災害対策本部が立ち上がった。また、病院の所在する市から避難所への看護師派遣の要請を受け、対応することになった。
この台風による大雨の影響で、大規模な土砂災害が発生した。病院から派遣されて避難所内を巡回していた看護師は、元気がないCさん(66歳、女性)のことが気になり、毎日声をかけていた。発災3日目、Cさんは避難所内を巡回していた看護師を呼び止めて話をした。Cさんは、土砂災害があったときに娘と自宅にいたが、Cさんが先に屋外に避難したことを悔やんでいた。「娘の行方がまだ分からない。静かになると、あのときのことを思い出して涙が止まらなくなる」と悲しんでいる。 このときの看護師のC さんへの対応で適切なのはどれか。
- 1.睡眠と食事の状況を聞く。
- 2.娘のことを早く忘れるように促す。
- 3.待っていれば娘は見つかると励ます。
- 4.気分転換をするために近所の友人と新しいことを始めるよう提案する。
対話形式の解説
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラPOINT
災害後の急性期にある被災者のこころのケアにおける初期対応を問う問題。罪責感や悲嘆を表出している人に対しては、安易な励ましや感情の抑え込みではなく、感情を受け止めつつ生活基盤(睡眠・食事)を把握することが基本である。
解答・解説
正解は1です
問題文:この台風による大雨の影響で、大規模な土砂災害が発生した。病院から派遣されて避難所内を巡回していた看護師は、元気がないCさん(66歳、女性)のことが気になり、毎日声をかけていた。発災3日目、Cさんは避難所内を巡回していた看護師を呼び止めて話をした。Cさんは、土砂災害があったときに娘と自宅にいたが、Cさんが先に屋外に避難したことを悔やんでいた。「娘の行方がまだ分からない。静かになると、あのときのことを思い出して涙が止まらなくなる」と悲しんでいる。 このときの看護師のC さんへの対応で適切なのはどれか。
解説:正解は 1 です。Cさんは、自分が先に逃げたために娘を家に残してしまったという強い罪責感(サバイバーズ・ギルト)と、災害体験を繰り返し想起することによる悲嘆反応を訴えています。発災3日目という急性期では、まず生存と心身の安定を支えるアプローチが基本であり、サイコロジカル・ファーストエイド(PFA)の原則に沿って、安心・安全の確保、当事者の語りの受容、生活基盤(睡眠・食事・身体症状)の把握を行います。睡眠と食事は、急性ストレス反応・うつ症状・身体疾患悪化の重要な観察指標であり、継続支援の必要性を判断するうえでも欠かせません。Cさんの感情を受け止めながら生活状況を確認することが、最も適切な初期対応です。
選択肢考察
- ○1. 睡眠と食事の状況を聞く。
災害後の急性期では、強い悲嘆や罪責感を抱える人ほど不眠・食欲低下・身体症状を呈しやすい。睡眠と食事は心身の安定度を測るバロメーターであり、PFAでも基本ニーズの確認は中心的な要素である。Cさんの訴えを受け止めながら生活状況を把握することで、急性ストレス反応の評価と継続支援への橋渡しができる。
- ×2. 娘のことを早く忘れるように促す。
悲嘆やトラウマ反応に対し、感情を抑え込ませる関わりは禁忌である。「忘れなさい」という言葉は、本人の苦痛そのものを否定するメッセージとなり、孤立感や罪責感を深め、その後のPTSDや遷延性悲嘆障害のリスクを高めかねない。
- ×3. 待っていれば娘は見つかると励ます。
安否や生存に関して根拠のない保証を与えることは不適切である。事実が確認できない段階での楽観的励ましは、後に現実と異なった場合に信頼関係を損ね、ショックを強める可能性がある。災害時の心理支援では、誠実で正確な情報伝達が原則となる。
- ×4. 気分転換をするために近所の友人と新しいことを始めるよう提案する。
新たな活動や社会参加を促す介入は、感情がある程度整理され回復期に入ってから検討する内容である。発災3日目の急性期で苦痛を表出している段階で前向きな行動を促すのは、本人の感情体験を軽視することにつながり、時期尚早である。
災害後のこころのケアでは、世界保健機関(WHO)が示すサイコロジカル・ファーストエイド(PFA)が国際的な標準となっており、(1)Look(観察)、(2)Listen(傾聴)、(3)Link(つなぐ)の3要素で構成される。看護師には、無理に体験を語らせるディブリーフィング的介入を避け、安全と尊厳を守りつつ基本ニーズ(睡眠・食事・水分・トイレ・服薬・温度環境)を整える役割が求められる。また、Cさんのように自分が助かったことに罪悪感を抱く反応はサバイバーズ・ギルトと呼ばれ、急性ストレス反応の一つとして理解しておく必要がある。発災後1か月以上症状が続けばPTSDが、6か月以上に及ぶ強い悲嘆は遷延性悲嘆障害が疑われ、専門医療への紹介を検討する。
災害後の急性期にある被災者のこころのケアにおける初期対応を問う問題。罪責感や悲嘆を表出している人に対しては、安易な励ましや感情の抑え込みではなく、感情を受け止めつつ生活基盤(睡眠・食事)を把握することが基本である。
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