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避難所5日目、怒鳴り声と立ちくらみ——興奮した避難者にどう関わる?

看護師国家試験 第115午後120(状況設定問題)

国試問題にチャレンジ

115午後120

状況設定

大型の台風が直撃するという予報を受けて、午前9時、病院では災害対策本部が立ち上がった。また、病院の所在する市から避難所への看護師派遣の要請を受け、対応することになった。

土砂災害の発生によって家屋の役目が壊れており、今後さらに避難生活が必要になることが避難者に説明された。避難所を開設してから5日が経過しており、避難者の間で、家に戻れない不安と慣れない避難生活のストレスから、配食や洗濯場の順番を理由に口論が起こっていた。その日の午後、Dさん(72歳、男性)が「何度言っても分からんのか」と大声を出した。避難所の看護師が近づくと、Dさんの表情がこわばっており、ふらついているのが分かった。 このときの看護師のDさんへの対応で適切なのはどれか。

  1. 1.複数人で静かな環境に案内する。
  2. 2.大きな声で落ち着くように注意する。
  3. 3.背後からゆっくりとタッチングを行う。
  4. 4.他の人も我慢しているのでDさんも我慢するよう説明する。

対話形式の解説

博士博士
今回は災害看護の問題じゃ。台風による土砂災害で避難所が開設されて5日目、避難者同士のトラブルが起きておる場面じゃな。
サクラサクラ
Dさん72歳の男性が「何度言っても分からんのか」と大声を出したんですよね。看護師が近づくと、表情がこわばってふらついていた…と。
博士博士
うむ。ここで大事なのは、避難所開設から5日という時間軸じゃ。災害後の心理過程には段階があってな、最初の数日は「茫然自失期」、次が皆で助け合う「ハネムーン期」、そして1週間前後から「幻滅期」に入ると言われておる。
サクラサクラ
ちょうど不安や疲労が爆発しやすい時期に入りつつあるんですね。配食や洗濯場の順番で口論というのも、いかにも幻滅期らしい。
博士博士
その通り。さらにDさんは72歳の高齢者。慣れない環境、プライバシーのなさ、睡眠不足、脱水、服薬の中断…どれか一つでも体調を崩す要因になる。ふらつきがあるというのは見逃せんサインじゃ。
サクラサクラ
精神的な興奮だけじゃなくて、低血糖や血圧変動、脱水、せん妄なんかも考えないといけないってことですか?
博士博士
そうじゃ。高齢者の「怒りっぽさ」の背後には身体疾患が隠れていることがよくある。とはいえ、興奮しているその瞬間にあれこれ検査はできん。まずは何をすべきか、選択肢を見てみよう。
サクラサクラ
選択肢1は「複数人で静かな環境に案内する」。2は「大きな声で落ち着くように注意する」。3が「背後からゆっくりとタッチング」。4は「他の人も我慢しているのでDさんも我慢するよう説明する」。…直感的には1ですよね。
博士博士
正解じゃ。興奮対応の基本は「刺激を減らす・距離をとる・落ち着いた声で短く話す・複数人で対応する・退路を確保する」の5点。Dさんを口論の場から離して静かな場所に移せば、外的刺激が減って落ち着きやすくなる。
サクラサクラ
複数人なのは安全のため?
博士博士
看護師自身の安全と、ふらつきによる転倒への備え、両方じゃ。1人で対応すると、万が一暴力が出たときも逃げ場がなくなる。
サクラサクラ
2の「大声で注意」は、火に油を注ぐようなものですね。
博士博士
その通り。興奮時には、看護師はあえて声のトーンを下げ、短くゆっくり話す。「Dさん、こちらへどうぞ」くらいでよい。長い説明は耳に入らんからな。
サクラサクラ
3の背後からのタッチングは、ちょっと怖いです…。
博士博士
興奮している人に背後から触れるのは厳禁じゃ。驚愕反射で殴られることもある。タッチングを行うなら、必ず正面から視線を合わせ、声をかけ、相手の同意を得てから。
サクラサクラ
4の「他の人も我慢している」は、共感の真逆ですね。
博士博士
うむ。我慢の強要や比較は、感情を否定するメッセージになる。避難所での不調のサインを「わがまま」として処理してしまうと、本人は孤立し、支援の機会を逃すことになる。
サクラサクラ
災害時の心のケアって、何か基本の枠組みはありますか?
博士博士
サイコロジカル・ファーストエイド、略してPFAじゃ。「Look(安全・ニーズを観察)・Listen(穏やかに聴く)・Link(必要な支援につなぐ)」の3つが柱。心のケア=傾聴だけではなく、まず安全確保と生活ニーズの充足が前提というのがポイントじゃ。
サクラサクラ
Dさんの場合も、静かな場所に案内した後はバイタル測ったり、水分・食事・睡眠の状況を聞いたりが必要そうですね。
博士博士
その通りじゃ。落ち着いてから、血圧・脈・体温・血糖、内服状況、夜間の睡眠を確認する。必要なら医師や保健師につなぐ。これが「Link」じゃな。

POINT

避難生活のストレスで興奮状態となり、ふらつきも伴う高齢避難者への初期対応を問う問題。刺激を減らす・安全を確保する・落ち着いた態度で関わるという、興奮対応とPFAの基本を組み合わせて判断する。

解答・解説

正解は1です

問題文:土砂災害の発生によって家屋の役目が壊れており、今後さらに避難生活が必要になることが避難者に説明された。避難所を開設してから5日が経過しており、避難者の間で、家に戻れない不安と慣れない避難生活のストレスから、配食や洗濯場の順番を理由に口論が起こっていた。その日の午後、Dさん(72歳、男性)が「何度言っても分からんのか」と大声を出した。避難所の看護師が近づくと、Dさんの表情がこわばっており、ふらついているのが分かった。 このときの看護師のDさんへの対応で適切なのはどれか。

解説:正解は 1 です。発災から5日が経過した避難所では、プライバシーのなさ、生活リズムの乱れ、将来への不安が重なり、避難者の心身に強いストレスが蓄積する時期です。Dさんは大声で怒鳴り、表情のこわばりとふらつきを呈しており、強い情動的興奮に加え、脱水・低栄養・血圧変動・睡眠不足などの身体的不調も疑われます。このような場面では、興奮を増悪させる要因となる周囲の視線や音などの刺激から離し、安全に話を聴ける静かな環境へ誘導することが第一選択となります。複数人で対応するのは、看護師自身と周囲の避難者双方の安全を確保し、Dさんがふらついて転倒した場合にも備えるためです。

選択肢考察

  1. 1.  複数人で静かな環境に案内する。

    興奮状態にある人には、まず刺激の少ない環境に移すことが鉄則。周囲の口論や視線から離すことで興奮が落ち着きやすくなり、Dさんの心身の状態をゆっくり評価できる。ふらつきもあるため転倒リスクへの備えとして複数人での対応が望ましく、看護師の安全確保にもつながる。

  2. ×2.  大きな声で落ち着くように注意する。

    興奮している人に大きな声で対応すると、相手はさらに刺激され、攻撃性や混乱が増す。看護師は意識して低く落ち着いたトーンで、短くゆっくりとした言葉で関わる必要がある。

  3. ×3.  背後からゆっくりとタッチングを行う。

    視界に入らない位置からの身体接触は、不意打ちと受け取られて驚愕反応や攻撃行動を誘発しかねない。興奮時のタッチングは原則避け、行う場合でも必ず正面から声をかけ、本人の同意を得たうえで安全な距離から行う。

  4. ×4.  他の人も我慢しているのでDさんも我慢するよう説明する。

    我慢の強要や他者との比較は、Dさんの感情を否定し孤立感を強める。避難所での精神的不調のサインを「わがまま」として処理することは支援の機会を奪い、状況をさらに悪化させる。

災害避難所では、発災後3〜7日頃から急性ストレス反応や生活ストレスによる対人トラブルが顕在化しやすく、この時期を「ハネムーン期」から「幻滅期」への移行期と捉える。高齢者では、環境変化・服薬中断・脱水・睡眠不足から、せん妄や血圧変動、低血糖、脳血管障害が興奮や易怒性として現れることもある。サイコロジカル・ファーストエイド(PFA)の三原則は「Look(観察)・Listen(傾聴)・Link(つなぐ)」で、まずは安全を確保し、本人の話に耳を傾け、必要な支援につなぐ流れを意識する。興奮対応の基本は「刺激を減らす・距離をとる・落ち着いた声で短く話す・複数人で対応する・退路を確保する」の5点で押さえておきたい。

避難生活のストレスで興奮状態となり、ふらつきも伴う高齢避難者への初期対応を問う問題。刺激を減らす・安全を確保する・落ち着いた態度で関わるという、興奮対応とPFAの基本を組み合わせて判断する。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。