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痛みはどう脳まで届く?脊髄視床路を一本道で理解する

看護師国家試験 第115午前27

国試問題にチャレンジ

115午前27

痛みの伝導で正しいのはどれか。

  1. 1.一次ニューロンは運動ニューロンよりも伝導速度が速い。
  2. 2.刺激を受けた側と同側の脊髄を上行する。
  3. 3.延髄で次の神経細胞とシナプスを作る。
  4. 4.視床で次の神経細胞とシナプスを作る。

対話形式の解説

博士博士
今日のテーマは「痛みの伝導路」じゃ。指を切ったときに『痛い!』と感じるまでに、神経の中で何が起きているか説明できるかの?
サクラサクラ
えーと…神経を通って脳に伝わる、というのはわかるんですが、具体的にどこを通るのかは曖昧です。
博士博士
では順を追って整理しよう。痛覚を担当する神経線維は2種類あって、Aδ線維とC線維と呼ばれる。Aδは細い有髄、Cは無髄じゃ。
サクラサクラ
Aδ線維は『チクッ』とした鋭い痛みで、C線維は『ジワジワ』した鈍い痛みでしたよね?
博士博士
その通り!Aδは速い痛み(first pain)、Cは遅い痛み(second pain)と呼ばれる。これらの一次ニューロンが運ぶ情報は、脊髄のどこに入ると思う?
サクラサクラ
たしか…脊髄の後ろ側、後角だったような…?
博士博士
正解じゃ。後角で二次ニューロンにバトンタッチする。そしてここが大事なのじゃが、二次ニューロンはすぐに反対側へ交叉するのじゃ。
サクラサクラ
え、同じ側を上っていくんじゃないんですか?
博士博士
違うんじゃ。痛覚と温度覚は脊髄レベルで対側に渡って、対側の側索を「外側脊髄視床路」として上っていく。だから右手が痛いという情報は、脊髄では左側を上るのじゃよ。
サクラサクラ
それで脳のどこに到着するんですか?
博士博士
まず視床という場所に着く。視床は感覚情報の中継センターで、ここで三本目のニューロンに乗り換える。そして大脳皮質の体性感覚野へ投射されて初めて「痛い」と意識されるのじゃ。
サクラサクラ
なるほど!つまり、後角→交叉→視床→大脳皮質、という3つのニューロンのリレーなんですね。
博士博士
その通り。だから今回の問題で「視床で次の神経細胞とシナプスを作る」が正解になる。延髄で乗り換えるのは深部感覚(後索-内側毛帯路)の話で、痛覚とは別ルートじゃ。
サクラサクラ
深部感覚と痛覚で、交叉する場所が違うんですね。混同しないように注意しなきゃ。
博士博士
うむ。ちなみに痛覚情報は視床から大脳皮質だけでなく、辺縁系の帯状回や島皮質にも送られる。だから痛みは『不快』『怖い』といった情動とセットになるのじゃ。
サクラサクラ
なるほど…だから同じ刺激でも、不安が強いと痛みが強く感じられるんですね。
博士博士
その通り!さらに脳幹から下行する内因性鎮痛系が、脊髄後角で痛覚のゲートを閉じる仕組みもある。これがオピオイドや認知行動療法が効く理論的根拠になっておる。
サクラサクラ
看護で『痛みは主観的なもの』と教わるのは、こうした神経科学的な裏付けがあるからなんですね。勉強になりました!

POINT

痛覚(脊髄視床路)の伝導経路を問う基本問題。「脊髄後角でシナプス→対側に交叉→上行→視床で中継→大脳皮質」という流れを正確に把握しているかがカギ。後索-内側毛帯路(深部感覚)との違いを区別できるかが得点ポイントになる。

解答・解説

正解は4です

問題文:痛みの伝導で正しいのはどれか。

解説:正解は 4 です。痛覚は、皮膚や内臓にある自由神経終末で受容され、一次求心性ニューロン(Aδ線維・C線維)によって脊髄後角に伝えられます。脊髄後角で二次ニューロンに乗り換えた後、線維はすぐに反対側へ交叉し、外側脊髄視床路として対側の脊髄を上行します。そして間脳の視床(特に後外側腹側核:VPL核など)で三次ニューロンとシナプスを形成し、そこから大脳皮質の体性感覚野へ投射されて初めて「痛い」という感覚として意識される、という3ニューロン構成が痛覚伝導の基本経路です。したがって視床で次の神経細胞とシナプスを作るとした選択肢4が正答となります。

選択肢考察

  1. ×1.  一次ニューロンは運動ニューロンよりも伝導速度が速い。

    痛覚を伝える一次求心性ニューロンは、有髄で細いAδ線維(約5〜30 m/秒)と無髄のC線維(約0.5〜2 m/秒)の2種類が中心である。一方、骨格筋を支配するα運動ニューロン(Aα線維)は太い有髄線維で約70〜120 m/秒と非常に速く伝導する。したがって痛覚の一次ニューロンは運動ニューロンより伝導速度が遅く、本選択肢は誤り。

  2. ×2.  刺激を受けた側と同側の脊髄を上行する。

    痛覚・温度覚を伝える外側脊髄視床路は、脊髄後角で二次ニューロンに乗り換えた直後(同じ髄節〜1〜2髄節以内)に前白交連で正中を交叉し、反対側(対側)の側索を上行する。よって痛覚は刺激された側と同側ではなく対側を上行するため誤り。なお、深部感覚や識別性触覚を伝える後索路は同側を上行し、延髄で交叉するという違いがある。

  3. ×3.  延髄で次の神経細胞とシナプスを作る。

    痛覚の一次ニューロンは脊髄後角(主にRexed層のⅠ層、Ⅱ層、Ⅴ層)で二次ニューロンとシナプスを形成する。延髄で二次ニューロンに乗り換えるのは深部感覚や識別性触覚を伝える後索-内側毛帯路であり、痛覚経路とは異なる。したがって本選択肢は誤り。

  4. 4.  視床で次の神経細胞とシナプスを作る。

    脊髄後角から上行してきた二次ニューロンは、間脳の視床(後外側腹側核VPLや髄板内核など)で三次ニューロンに中継される。視床は感覚情報の中継地点であり、ここから大脳皮質一次体性感覚野へ投射されることで痛みの部位や強度が意識される。よって本選択肢が正解。

痛覚伝導路は「3つのニューロンで構成される」ことを軸に覚えると整理しやすい。一次ニューロン(受容器→脊髄後角、Aδ・C線維)、二次ニューロン(脊髄後角→交叉→対側を上行→視床)、三次ニューロン(視床→大脳皮質体性感覚野)の流れである。Aδ線維は局在のはっきりした鋭い「速い痛み(first pain)」を、C線維は局在が曖昧で持続する鈍い「遅い痛み(second pain)」を伝える。また痛覚情報は視床から大脳皮質へ向かう経路のほかに、辺縁系(帯状回・島皮質)にも投射されるため、痛みは単なる感覚ではなく不快感や恐怖といった情動を伴う体験になる。看護の場面で「痛みは主観的なもの」と強調されるのはこの神経機構に裏付けられている。さらに脳幹(中脳水道周囲灰白質:PAGなど)から下行する内因性鎮痛系(セロトニン・ノルアドレナリン・内因性オピオイド)が脊髄後角でゲートを閉じる働きを持ち、ペインコントロールや認知行動療法が効果を発揮する理論的根拠ともなっている。

痛覚(脊髄視床路)の伝導経路を問う基本問題。「脊髄後角でシナプス→対側に交叉→上行→視床で中継→大脳皮質」という流れを正確に把握しているかがカギ。後索-内側毛帯路(深部感覚)との違いを区別できるかが得点ポイントになる。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。