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COPD患者の酸素療法 ―『たくさん吸わせる』が命取りになる理由

看護師国家試験 第115午前51

国試問題にチャレンジ

115午前51

細菌性の肺炎と診断された慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉患者の酸素療法で正しいのはどれか。

  1. 1.酸素中毒を避けるために高流量にする。
  2. 2.鼻カニューレでの最大投与量は8 L/分である。
  3. 3.CO2ナルコーシス予防のために酸素濃度を高くする。
  4. 4.経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉が投与量の指標となる。

対話形式の解説

博士博士
今回はCOPD患者の酸素療法を学ぶぞ。細菌性肺炎を併発した患者というシチュエーションじゃ。
サクラサクラ
肺炎で苦しそうだったら、酸素を多めに投与してあげたくなりますけど…ダメなんですか?
博士博士
それが落とし穴じゃ。COPD患者は慢性的にCO2が体に溜まっておる。すると呼吸中枢はCO2の刺激に鈍くなり、『血中酸素が低い』という信号を頼りに呼吸しておるのじゃ。これを低酸素換気応答というぞ。
サクラサクラ
じゃあ酸素を急にたくさん入れると…呼吸する理由がなくなっちゃう?
博士博士
その通り!呼吸が浅くゆっくりになり、CO2がさらに溜まる。意識がもうろうとして昏睡に至る病態を『CO2ナルコーシス』と呼ぶのじゃ。
サクラサクラ
怖いですね…。じゃあ酸素はどうやって調整するんですか?
博士博士
目安となるのがSpO2じゃ。COPD患者ではSpO2 88〜92%程度を目標にして、それを維持できる最小限の流量で投与するのが基本じゃよ。
サクラサクラ
普通の患者さんよりSpO2の目標が低めなんですね。
博士博士
うむ。健常者なら95%以上を目標にするが、COPDで95%以上にしようとすると酸素を入れすぎてしまい、CO2ナルコーシスを招くのじゃ。
サクラサクラ
じゃあ選択肢を見ていきましょう。1の『酸素中毒を避けるために高流量』は明らかに変ですよね。高流量にしたら中毒になっちゃう。
博士博士
その通り、因果が逆じゃな。2の『鼻カニューレ最大8 L/分』はどうじゃ?
サクラサクラ
えーと、鼻カニューレって何L/分まででしたっけ…?
博士博士
一般に1〜6 L/分が目安じゃ。それ以上は鼻粘膜の乾燥や痛みが出るし、酸素濃度も安定しない。高濃度が必要ならベンチュリーマスクやリザーバーマスクに切り替えるのじゃ。
サクラサクラ
じゃあ3の『CO2ナルコーシス予防のために濃度を高く』は…完全に逆ですね。低めにしないと予防にならない。
博士博士
うむ。そして4の『SpO2が投与量の指標』が正解じゃ。目標SpO2を決めて、そこから外れないように投与量を細かく調整する。これが酸素療法のキホン中のキホンじゃよ。
サクラサクラ
SpO2が良ければ安心、というわけでもないんですよね?
博士博士
鋭い!SpO2は良好でもPaCO2が上昇していることがある。だから定期的に動脈血液ガスでPaCO2やpHもチェックする必要があるぞ。傾眠、頭痛、発汗、羽ばたき振戦などはCO2ナルコーシスの早期サインじゃ。
サクラサクラ
目で見える変化も大事なんですね。看護師としてはSpO2モニタだけに頼らず、患者さんの意識や呼吸パターンも観察しなきゃ。
博士博士
その視点が素晴らしい。酸素は『多ければいい』薬ではなく、必要量を必要なだけ届ける『匙加減の医療』なのじゃ。

POINT

COPD合併肺炎における酸素療法の原則を問う問題。『高濃度を避け、SpO2を指標に必要最小限を投与する』という基本原則を理解しているかが問われている。

解答・解説

正解は4です

問題文:細菌性の肺炎と診断された慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉患者の酸素療法で正しいのはどれか。

解説:正解は 4 です。COPD患者では、慢性的な高二酸化炭素血症(CO2貯留)に体が順応しており、呼吸の駆動が「血中酸素濃度の低下」に依存している(低酸素換気応答)状態にあります。このため不用意に高濃度酸素を投与すると、呼吸中枢の駆動が抑制され、換気量が低下してさらにCO2が貯留し、意識障害や昏睡を呈する『CO2ナルコーシス』を起こす危険があります。一方で、細菌性肺炎を併発している場合は低酸素血症が進行しやすく、酸素投与は不可欠です。そこで重要となるのが『目標SpO2を定めて、そこから外れないよう必要最小限の酸素を投与する』という考え方です。COPDなどII型呼吸不全のリスクがある患者では一般にSpO2 88〜92%程度を目標とし、SpO2や動脈血液ガス(PaO2、PaCO2、pH)の推移をモニタしながら、投与量を細かく調整します。したがって、SpO2は投与量を決める最も基本的かつ重要な指標となります。

選択肢考察

  1. ×1.  酸素中毒を避けるために高流量にする。

    因果関係が逆で誤りです。酸素中毒(高濃度酸素長期投与による肺障害)を避けたいなら、むしろ必要最小限の流量・濃度に抑えるのが原則です。さらにCOPD患者では高流量・高濃度酸素はCO2ナルコーシスのリスクを高めるため、安易に増量してはいけません。

  2. ×2.  鼻カニューレでの最大投与量は8 L/分である。

    誤りです。鼻カニューレは低流量システムで、一般に上限は6 L/分程度とされます。それ以上では鼻粘膜の乾燥・疼痛が強く、吸入酸素濃度(FiO2)も呼吸状態に左右されて安定しません。より高い濃度が必要な場合はベンチュリーマスクやリザーバー付マスクへ変更します。

  3. ×3.  CO2ナルコーシス予防のために酸素濃度を高くする。

    完全に逆の記述で誤りです。COPDではCO2ナルコーシスを予防するために『酸素濃度を低めに保ち、SpO2 88〜92%程度を目標に必要最小限を投与する』のが原則です。高濃度酸素は呼吸抑制を招き、CO2ナルコーシスを誘発します。

  4. 4.  経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉が投与量の指標となる。

    正しい記述です。酸素療法では目標SpO2を設定し、その範囲を維持できる最小限の酸素量を投与します。COPD合併肺炎ではSpO2 88〜92%を目安にし、SpO2の低下・上昇に応じて流量を調整します。必要に応じて動脈血液ガス分析でPaCO2やpHの推移も確認します。

COPDの酸素療法のキーワードは『低濃度・少量から開始』『目標SpO2 88〜92%』『CO2ナルコーシスに注意』の3点です。 酸素投与デバイスの目安は次の通りです。 ・鼻カニューレ:1〜6 L/分(FiO2 24〜44%程度、目安) ・簡易マスク:5〜10 L/分(5 L/分未満ではCO2再呼吸のリスク) ・ベンチュリーマスク:FiO2を24・28・31・35・40・50%などに固定でき、COPDで濃度管理が必要なときに有用 ・リザーバー付マスク:高濃度酸素(おおむね60%以上)が必要な重症低酸素血症で使用 CO2ナルコーシスの早期サインは『傾眠・頭痛・発汗・羽ばたき振戦・血圧上昇』など。SpO2は良好でもCO2貯留が進行している場合があるため、動脈血液ガスの確認が欠かせません。

COPD合併肺炎における酸素療法の原則を問う問題。『高濃度を避け、SpO2を指標に必要最小限を投与する』という基本原則を理解しているかが問われている。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。