COPD急性増悪の看護
成人看護学 / 呼吸器系
解説
今回はCOPD急性増悪の看護について解説します。
COPDとは
COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは、タバコ煙などの有害物質を長期間吸入することによって生じる、進行性で不可逆的な気流閉塞を特徴とする肺疾患です。病態の中心は、末梢気道に慢性炎症が起きる慢性気管支炎と、肺胞壁が破壊されて拡張する肺気腫で、両者が組み合わさって息を吐き出しにくくする閉塞性換気障害を呈します。最大の危険因子は喫煙です。 気流閉塞により呼気時に気道がつぶれやすくなり、肺の中に空気が残るエアトラッピングが生じ、胸郭は前後径が増加した樽状胸郭となります。主症状は労作時呼吸困難、慢性の咳嗽、喀痰で、進行例では呼気延長や口すぼめ呼吸、低酸素血症、高炭酸ガス血症がみられます。
急性増悪の病態
急性増悪とは、安定していたCOPDが短期間に急激に悪化し、呼吸困難の増強・喀痰の増加・痰の膿性化が出現して治療強化を要する状態をいいます。最大の誘因は呼吸器感染(ウイルス・細菌、特に肺炎の合併)であり、大気汚染や心不全合併も誘因となります。気流閉塞のさらなる悪化により肺胞でのガス交換が破綻し、PaO2低下とPaCO2上昇を同時にきたすⅡ型呼吸不全に陥ります。動脈血液ガス分析ではpHが低下し呼吸性アシドーシスが確認されます。
CO2ナルコーシス
COPD急性増悪の看護で最も警戒すべき合併症がCO2ナルコーシスです。健常人ではPaCO2の上昇が延髄の中枢化学受容器を刺激して換気を促しますが、慢性的に高CO2状態にあるCOPD患者では中枢がCO2に鈍感となり、末梢化学受容器が感じる低酸素刺激(hypoxic drive)が呼吸の主なドライブとなります。この状態で高濃度酸素を漫然と投与すると、低酸素刺激が解除されて換気量が低下し、PaCO2がさらに上昇して意識障害や呼吸抑制を招きます。
3徴と初期症状
CO2ナルコーシスの3徴は意識障害、自発呼吸の減弱、高度の呼吸性アシドーシスです。初期症状には早朝の頭痛、傾眠、発汗、血圧上昇、羽ばたき振戦などがありますが、いずれも非特異的で見逃されやすいため、酸素流量を上げた直後は意識レベル・呼吸数・SpO2・PaCO2を頻回に観察することが必須です。
酸素療法の原則
COPD患者への酸素投与は**SpO2 88〜92%を目標とし、低流量から開始します。一般的な95%以上を目指して高濃度酸素を投与してはいけません。酸素を完全に中止すると低酸素血症を招くため原則行わず、流量を細かく調整します。換気補助とCO2排出促進が必要な場合はNPPV(非侵襲的陽圧換気)**を導入し、それでも改善しない場合や意識障害が強い場合は気管挿管に移行します。
排痰援助と体位ドレナージ
急性増悪では膿性痰の貯留が換気をさらに悪化させるため、排痰援助が重要です。体位ドレナージは重力を利用して末梢気管支の分泌物を中枢気管支へ移動させる方法で、原則は「病変部を高い位置にし、その区域の気管支が下向きになる体位をとる」ことです。1体位10〜20分保持し、咳嗽・吸引・スクイージングを併用します。食後2時間以内、頭蓋内圧亢進、循環動態不安定時は禁忌または慎重に行います。
気管挿管後の観察
急性呼吸不全で気管内挿管が行われた直後は、片肺挿管・チューブ閉塞・気胸など致命的な合併症が起こりやすく、呼吸音の左右差の確認が最優先です。5点聴診(両肺尖・両肺底・心窩部)でチューブ位置を確認し、SpO2・EtCO2・胸郭の挙上を併せて観察します。
退院指導と急性増悪予防
急性増悪を繰り返すと予後が悪化するため、退院指導では感染予防が中心です。具体的にはインフルエンザ・肺炎球菌ワクチン接種、手洗い、含嗽、口腔ケアの励行を指導します。また呼吸仕事量の増加でエネルギー消費が亢進するため低栄養になりやすく、高エネルギー・高蛋白食を少量頻回に摂取するよう支援します。口すぼめ呼吸や腹式呼吸を含む呼吸リハビリ、禁煙継続、増悪兆候(呼吸困難増強・痰の膿性化・発熱)出現時の早期受診も指導します。独居高齢者には配食サービスや訪問看護、地域包括支援センターなど社会資源を活用し、栄養と生活を支えることが在宅療養継続の鍵となります。
まとめ
COPD急性増悪は感染を契機にⅡ型呼吸不全と呼吸性アシドーシスをきたす病態であり、看護では酸素療法によるCO2ナルコーシスの予防(SpO2 88〜92%目標・低流量開始)、体位ドレナージによる排痰援助、挿管後の呼吸音左右差の観察、退院後の感染予防と栄養支援が要点となります。
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- 1.
COPDの最大の危険因子はであり、長期の有害物質吸入により末梢気道の慢性炎症と肺胞破壊(肺気腫)が生じて不可逆的な気流閉塞をきたす。
- 2.
COPD急性増悪では低酸素血症と高炭酸ガス血症を同時にきたし、pHが低下してがみられる。
- 3.
慢性的にPaCO2が高いCOPD患者に高濃度酸素を投与すると低酸素刺激が解除されて換気が抑制され、意識障害・自発呼吸減弱・高度呼吸性アシドーシスを3徴とするを生じる危険がある。
- 4.
CO2ナルコーシスを予防するため、COPD患者への酸素投与はSpO2の目標をに設定し、低流量から開始する。
- 5.
COPD急性増悪で換気補助とCO2排出促進が必要な場合に、気管挿管を回避して第一に選択されるマスク型人工呼吸療法をという。
- 6.
体位ドレナージでは重力を利用して分泌物を移動させるため、原則としてを高い位置にし、その区域の気管支が下向きになる体位をとる。
- 7.
気管内挿管直後に片肺挿管やチューブ位置異常を発見するため、最優先で観察すべき所見はである。
- 8.
COPDの急性増悪の主要な誘因はであり、退院指導ではインフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種が推奨される。
「COPD急性増悪の看護」の過去問演習
COPD患者の酸素療法 ―『たくさん吸わせる』が命取りになる理由
第115回 午前 第51問
COPD患者になぜ高濃度酸素は危険なのか―CO2ナルコーシスの正体
第114回 午前 第38問
COPDの呼気延長、病態から読み解く特徴的な呼吸パターン
第112回 午後 第97問
CO2ナルコーシス、COPDに高濃度酸素が危険な理由
第112回 午後 第98問
独居COPD高齢者の退院指導、感染予防と栄養支援が2本柱
第112回 午後 第99問
COPD急性増悪患者のアセスメント
第105回 午前 第90問
COPD急性増悪と挿管後の観察ポイント
第105回 午前 第91問
体位ドレナージの基本と右中下肺野への対応
第105回 午前 第92問
CO2ナルコーシスを見逃すな
第103回 午後 第49問
