子どもの権利と虐待対応
小児看護学 / 小児の心理発達・権利・社会
解説
今回は子どもの権利と虐待対応について解説します。子どもは未熟で保護を必要とする存在ですが、同時に独立した人格をもつ権利の主体です。国試では権利関連の宣言・条約・国内法の年表、児童虐待防止法の規定、虐待を疑った際の看護師の対応が頻出です。歴史的背景と法的枠組みを整理して押さえましょう。
子どもの権利に関する宣言・条約・国内法
国際的な動きとしては、1924年に国際連盟がジュネーブ宣言を採択し、これが世界で初めて子どもの権利を明文化した宣言となりました。1948年の世界人権宣言を経て、1959年には国連で児童権利宣言が採択されました。そして1989年に国連総会で採択されたのが**児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)**であり、日本は1994年に批准しています。この条約は子どもの権利を「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」の4つの柱で示し、子どもを保護の対象としてだけでなく権利行使の主体としてとらえている点が重要です。
国内に目を向けると、戦後最も早く成立した子ども関連法は1947年公布の児童福祉法です。続いて1951年5月5日に児童憲章が制定されました。児童憲章は日本国憲法の精神に基づき、児童の権利と幸福を社会全体で守ることを宣言した日本独自の文書で、「児童は、人として尊ばれる」「児童は、社会の一員として重んぜられる」「児童は、よい環境の中で育てられる」の三原則を掲げています。ただし宣言であって法律ではないため、罰則規定はありません。5月5日はこどもの日でもあります。その後、1965年に母子保健法、2000年に児童虐待防止法、2022年にこども基本法が制定されました。
児童虐待の定義と発生状況
児童虐待防止法では虐待を身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、ネグレクト(保護の怠慢・拒否)の4類型に分類しています。2004年の法改正により、配偶者間暴力を子どもの面前で行ういわゆる面前DVは心理的虐待に含まれることが明確化されました。これにより警察から児童相談所への通告が急増し、近年は心理的虐待が全体の約半数を占めて最多となっています。主な虐待者は実母が最も多く、次いで実父の順となっており、相談対応件数は年々増加しています。通告経路では警察等が最多を占めます。
通告義務と一時保護の仕組み
児童虐待防止法第6条は、虐待を受けたと思われる児童を発見した者すべてに対し、市町村・児童相談所・福祉事務所への通告義務を課しています。確証は不要で「疑い」の段階で通告する義務があり、匿名でも可能で通告者の情報は守秘されます。医療従事者の場合、通告義務は守秘義務に優先するため、通告したことが守秘義務違反に問われることはありません。
一時保護を決定する権限をもつのは児童相談所長であり、児童福祉法第33条に基づいて親権者の同意がなくても独自判断で保護することができます。原則として2か月以内ですが、2か月を超える場合や親権者の意に反する場合は家庭裁判所の承認が必要です。保護先は児童相談所のほか、警察・医療機関・里親などへの委託も可能です。
虐待を疑った際の看護師の対応
外来や病棟で虐待が疑われる場合、まずプライバシーの保たれる個室で対応し、必要に応じて保護者と児を分けて話を聞きます。看護師の最大の役割は客観的記録を残すことです。損傷の部位・形状・新旧、保護者の説明と身体所見の整合性、子ども本人の発言は語ったままの表現で記録し、可能であれば写真も残します。受傷機転と所見が一致しない、説明が変遷する、受診が遅れている、説明できない多発外傷や発育不良があるなどはレッドフラッグです。これらの記録は医学的判断や児童相談所・警察での法的手続きの根拠となります。
乳児に強い揺さぶりが加わると、脳と頭蓋骨をつなぐ架橋静脈が破綻して硬膜下血腫を生じます。これに眼底出血と肋骨骨折を加えた三徴が乳幼児揺さぶられ症候群の特徴であり、虐待を強く疑う所見です。大泉門膨隆は頭蓋内圧亢進のサインとして見落とせません。硬膜下血腫はCTで三日月形を呈し縫合線を越えるのに対し、硬膜外血腫は凸レンズ形で縫合線を越えない点で鑑別されます。
まとめ
子どもの権利は、ジュネーブ宣言から子どもの権利条約に至る国際的な歩みと、児童福祉法・児童憲章・児童虐待防止法といった国内の枠組みによって支えられています。看護師には、虐待を疑った段階で通告する義務と、客観的事実を正確に記録する責務があり、一時保護の権限は児童相談所長にあることを覚えておきましょう。揺さぶられ症候群では硬膜下血腫・眼底出血・肋骨骨折の三徴に注目することが大切です。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
1951年5月5日に制定された、児童の権利と幸福を守ることを宣言した日本独自の文書をという。
- 2.
1989年に国連で採択され、日本が1994年に批准した子どもの権利に関する国際条約を(子どもの権利条約)という。
- 3.
戦後の子ども関連法のうち最も早く1947年に公布された法律はである。
- 4.
配偶者間の暴力を子どもの面前で行う面前DVは、児童虐待のうちに分類される。
- 5.
近年の児童相談所における虐待相談対応件数で最も多い虐待類型はである。
- 6.
児童福祉法第33条に基づき、一時保護を決定する権限をもつのはである。
- 7.
虐待を受けたと思われる児童を発見した者に課せられる、市町村や児童相談所への義務をという。
- 8.
乳児を強く揺さぶることで架橋静脈が破綻して生じる、CTで三日月形を呈する頭蓋内出血をという。
- 9.
頭蓋内出血・眼底出血・肋骨骨折の三徴を特徴とする虐待による頭部外傷をという。
