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心不全の病態と看護

成人看護学 / 循環器系

解説

心不全とは、心臓のポンプ機能が低下し、全身が必要とする血液量を十分に送り出せなくなった状態を指します。今回は国家試験で頻出の「心不全の病態と看護」について、左右の心不全症状の違いから生活指導まで、看護学生がゼロから理解できるよう解説します。

心不全の基本病態

心臓は右心系と左心系に分かれ、右心系は全身から戻ってきた血液を肺へ送り、左心系は肺で酸素化された血液を全身へ送ります。このどちらか、あるいは両方のポンプ機能が低下した状態が心不全です。心筋梗塞、高血圧、心筋症、弁膜症などが基礎疾患となり、発症経過によって急性心不全と慢性心不全に分類されます。慢性経過の患者が感染や塩分過多、服薬中断などをきっかけに急激に悪化したものを「慢性心不全の急性増悪」と呼びます。

心エコー検査で評価される**左室駆出率(LVEF)**は、拡張末期に左室内にあった血液のうち収縮で送り出された割合を示し、正常値は55%以上です。40%未満に低下した心不全をHFrEF(収縮機能低下型)、保たれているものをHFpEFと呼び、治療方針が異なります。

左心不全と右心不全の症状の違い

心不全の症状を整理するうえで最も重要なのは、左心不全か右心不全かでうっ血する場所が異なるという点です。

左心不全=肺うっ血症状

左心室のポンプ機能が低下すると、肺から左心へ戻ってくる血液が左房・肺静脈にうっ滞し、肺うっ血・肺水腫を起こします。代表症状は呼吸困難、起座呼吸、夜間発作性呼吸困難、湿性ラ音、ピンク色泡沫状痰、咳嗽、SpO2低下です。臥位になると下肢からの静脈還流が増えて肺うっ血が悪化するため、座って前傾姿勢をとると楽になる起座呼吸(オルソプネア)が特徴的です。

右心不全=体循環うっ血症状

右心室から肺動脈への駆出が障害されると、全身静脈系の圧が上昇し体循環がうっ滞します。代表症状は頸静脈怒張、下肢浮腫、肝腫大、腹水、体重増加、食欲不振です。半座位(45度ファーラー位)で内頸静脈の怒張が胸骨角から4cm以上認められれば中心静脈圧の上昇を意味し、右心不全を強く疑います。

慢性化すると両者が併存する両心不全となることが多く、肺うっ血症状と体循環うっ血症状が同時に出現します。

急性増悪の早期発見と検査

体重は最も鋭敏なうっ血指標であり、3日で2kg以上、あるいは1週間で2kg以上の体重増加は体液貯留のサインです。労作時息切れの増強、夜間の咳・痰、下肢浮腫、夜間呼吸困難なども急性増悪を示す重要な所見です。

救急外来では、12誘導心電図、胸部エックス線検査、血液検査(BNP、トロポニン、腎機能、電解質)に加えて、**心臓超音波検査(心エコー)**が優先的に行われます。心エコーは非侵襲的でベッドサイドで実施でき、駆出率や弁膜症、心嚢液貯留の有無など病態把握に直結する情報が即座に得られるためです。

看護のポイント

急性期の呼吸困難に対しては、起座位またはファーラー位で静脈還流を減らし肺うっ血を軽減します。オーバーテーブルにもたれかかる前傾姿勢は呼吸筋の補助動員にも役立ち、咳嗽の軽減にも効果的です。酸素療法、利尿薬や血管拡張薬の投与、必要に応じてNPPVを導入し、SpO2、呼吸数、尿量、血圧、体重を継続的にモニタリングします。

高齢患者の入院では、環境変化や低酸素、薬剤、不眠などを誘因にせん妄を発症しやすく、夜間不眠や見当識障害がみられた場合は非薬物的介入を優先します。日中は離床を促して覚醒を維持し昼夜のリズムを整える、オリエンテーションを繰り返す、眼鏡や補聴器を活用する、ベンゾジアゼピン系薬剤を避けるなどが基本です。

退院後の生活指導とセルフケア

慢性心不全の再入院予防にはセルフケアが鍵となります。塩分は6g/日未満、水分は指示量を遵守し、毎朝排尿後に同じ服装・同じ体重計で体重を測定して心不全手帳に記録します。3日で2kgの増加、夜間呼吸困難、安静時動悸、浮腫の増強などは医療機関へ連絡すべきアラートサインです。

排泄時の努責は胸腔内圧と腹腔内圧を急上昇させ心負荷を増やすため、便秘予防と排便後の休息が重要です。インフルエンザ・肺炎球菌ワクチンによる感染予防、禁煙・節酒、NYHA分類に応じた適度な有酸素運動も推奨されます。

服薬忘れは増悪の主因となるため、独居高齢者にはお薬カレンダーや一包化、服薬アプリ、家族や訪問看護の関与など、個別の工夫で内服アドヒアランスを高めます。

まとめ

心不全は左心不全か右心不全かで症状の出方が異なり、左心不全は肺うっ血症状、右心不全は体循環うっ血症状を呈します。最も鋭敏な指標は体重変化であり、3日で2kg増加が増悪のアラートサインです。急性期は起座位による肺うっ血軽減と酸素・利尿薬・モニタリングが中心となり、退院後は塩分制限、毎日の体重測定、服薬遵守、感染予防、便秘対策などのセルフケア教育で再入院を防ぐことが目標になります。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    心不全のうち、左心不全では肺から左心へ戻る血液がうっ滞してを生じ、呼吸困難や起座呼吸が出現する。

  2. 2.

    右心不全では全身静脈系のうっ滞により頸静脈怒張、下肢浮腫、、腹水、体重増加などの体循環うっ血症状が現れる。

  3. 3.

    左心室の収縮機能を示す指標であり、心エコーで評価される(LVEF)は正常で55%以上である。

  4. 4.

    心不全患者の体液貯留を最も鋭敏に反映する指標はであり、3日で2kg以上の増加は急性増悪のアラートサインとされる。

  5. 5.

    左心不全による咳嗽や呼吸困難に対しては、静脈還流を減らし肺うっ血を軽減するために(またはファーラー位)をとることが有効である。

  6. 6.

    うっ血性心不全が疑われる患者に対し、救急外来で12誘導心電図・胸部X線に加えて優先度が高い検査は(心エコー)である。

  7. 7.

    慢性心不全の生活指導では塩分摂取量を1日g未満に制限し、毎日同じ条件で体重測定を行うよう指導する。

  8. 8.

    排便時の努責は胸腔内圧を上昇させ心負荷を増やすため、慢性心不全患者には予防と排便後の休息を指導する。

  9. 9.

    入院後の高齢患者に夜間不眠や見当識障害が出現した場合はを疑い、日中の覚醒維持など非薬物的介入を優先する。

  10. 10.

    独居高齢者の心不全患者で服薬忘れがみられる場合、1週間分の服薬を可視化できるの活用がアドヒアランス向上に有効である。

心不全の病態と看護」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。