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職業性疾病と労働衛生

健康支援と社会保障制度 / 労働法規と職業衛生

解説

今回は職業性疾病と労働衛生について解説します。職場には粉じん・有害化学物質・振動・騒音・電離放射線・長時間のVDT作業など、さまざまな健康障害の原因が存在します。これらに起因して発生する病気を職業性疾病と呼び、その予防のために整えられた法制度や管理活動の総体を労働衛生といいます。看護師国試では「原因と疾患の組合せ」「労働衛生3管理」「業務上疾病の統計」「ワーク・ライフ・バランス」が繰り返し問われています。

労働衛生の基本となる法律と組織

職場の健康を守るための基本法が労働安全衛生法です。労働基準法から独立する形で1972年(昭和47年)に制定され、事業者に対して労働者の安全と健康を確保する義務を課しています。 常時50人以上の労働者を使用する事業場では、産業医と衛生管理者の選任、そして衛生委員会の設置が義務づけられています。産業医は労働者の健康管理について専門的立場から助言・指導を行う医師であり、毎月1回以上の職場巡視と健康診断結果に基づく事後措置を担います。衛生委員会は労使が対等な立場で職場の衛生について協議する場で、毎月1回以上の開催が義務です。

労働衛生の3管理

労働衛生対策の中心的な考え方が労働衛生の3管理です。3管理とは、作業環境管理・作業管理・健康管理の3つを指します。 作業環境管理は、有害物質の発生源や職場の空気環境そのものを管理する活動で、局所排気装置の設置や作業環境測定が代表例です。作業管理は、作業方法・作業時間・保護具の使用などを通じて労働者が有害因子に曝露される量を減らす管理で、防じんマスクや防振手袋の着用、連続作業時間の制限などが含まれます。健康管理は、健康診断とその事後措置によって労働者個人の健康状態を把握し、健康障害を未然に防ぐ活動です。これら3管理に総括管理と労働衛生教育を加えて5管理と呼ぶこともあります。

健康診断と特殊健康診断

事業者には、一般健康診断(定期健康診断など)の実施が義務づけられています。さらに、有害業務に従事する労働者には特殊健康診断が課されます。粉じん作業者へのじん肺健診、有機溶剤業務者への有機溶剤健診、電離放射線業務者への電離放射線健診、振動工具使用者への振動健診などが代表的で、通常6か月以内ごとに行われます。

代表的な職業性疾病

職業性疾病は「原因→標的臓器」の対応で覚えると整理しやすくなります。

粉じん・石綿・化学物質による疾患

長期間にわたって粉じんを吸入することで肺に線維化が起こる病気をじん肺といいます。石綿(アスベスト)の吸入では中皮腫や肺癌のリスクが高まり、潜伏期が数十年に及ぶ点が特徴です。ベンゼンは骨髄を障害して白血病の原因となり、有機溶剤は中枢神経障害や皮膚障害を引き起こします。

物理的因子による疾患

チェーンソー・削岩機・グラインダーなど振動工具の長期使用で生じるのが振動障害で、別名を白ろう病といいます。寒冷刺激などをきっかけに手指の末梢動脈が攣縮し、蒼白・チアノーゼ・紅潮の三相性の色調変化を示すレイノー現象が中核症状です。 強い騒音への長期曝露では騒音性難聴が、高温環境では熱中症が生じます。潜水作業や潜函作業のように高圧環境から急速に常圧へ戻ると、血液中に溶けていた窒素が気泡化して減圧症(潜函病)を起こします。逆に低圧環境では高山病が発生します。紫外線曝露では電気性眼炎、電離放射線曝露では分裂の盛んな造血器が障害され、白血球減少などの造血機能障害や白内障・生殖腺障害をきたします。

VDT作業による健康障害

パソコンなど表示機器を用いた業務をVDT作業(情報機器作業)と呼びます。長時間継続すると、眼精疲労・視力低下などの眼症状、首・肩・腕の筋骨格症状、抑うつなどの精神症状が現れ、これらを総称してVDT症候群といいます。厚生労働省のガイドラインでは、一連続作業時間は1時間を超えないこと、作業の合間に10〜15分の休止を取ること、画面との距離は40cm以上を確保することなどが示されています。

業務上疾病の発生状況

業務上疾病の統計では、負傷に起因する疾病が最も多く、毎年全体の7〜8割を占めます。その大半が患者の移乗動作や重量物の取扱いで発症する災害性腰痛であり、看護職にとっても重大な職業病です。腰痛予防にはボディメカニクスの活用、リフトやスライディングシートの利用、複数人での介助などが推奨されます。

ワーク・ライフ・バランス憲章

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章は、長時間労働の是正や多様な働き方の実現を目的に**2007年(平成19年)**に策定されました。「就労による経済的自立が可能な社会」「健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会」「多様な働き方・生き方が選択できる社会」の3つを目指す姿として掲げています。

まとめ

労働安全衛生法に基づき、産業医・衛生管理者・衛生委員会が職場の健康を支え、作業環境管理・作業管理・健康管理の3管理が労働衛生対策の柱となります。職業性疾病は原因と標的臓器の対応で覚え、振動工具は白ろう病とレイノー現象、粉じんはじん肺、石綿は中皮腫、電離放射線は造血器障害、VDT作業はVDT症候群を結び付けてください。業務上疾病で最多なのは災害性腰痛を中心とした負傷に起因する疾病であり、ワーク・ライフ・バランス憲章は2007年策定という年号もあわせて押さえることが国試対策の要となります。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    職場の安全と健康を確保するための基本となる法律はである。

  2. 2.

    労働衛生の3管理とは、作業環境管理・作業管理・の3つを指す。

  3. 3.

    常時50人以上の労働者を使用する事業場で、月1回以上開催が義務づけられている労使協議の場をという。

  4. 4.

    チェーンソーや削岩機など振動工具の長期使用により生じる職業性疾病を振動障害()といい、寒冷刺激で手指が蒼白になるレイノー現象を呈する。

  5. 5.

    粉じんを長期間吸入することで肺の線維化を生じる職業性疾病をという。

  6. 6.

    情報機器作業を長時間継続することで生じる眼症状・筋骨格症状・精神症状の総称をという。

  7. 7.

    電離放射線業務では細胞分裂の盛んなが障害されやすく、白血球減少などの造血機能障害が生じる。

  8. 8.

    業務上疾病で最も発生件数が多いのは負傷に起因する疾病であり、その大半を占めるのがである。

  9. 9.

    仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章が策定されたのはである。

職業性疾病と労働衛生」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。