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マズローの欲求階層

基礎看護学 / 看護過程・看護理論

解説

マズローの欲求階層とは、アメリカの心理学者**アブラハム・マズロー(Abraham Maslow)**が提唱した、人間の欲求を低次から高次へと5段階のピラミッド構造で捉える理論のことです。今回はマズローの欲求階層について解説します。看護では患者さんの基本的ニーズを把握し、援助の優先順位を考えるうえで欠かせない基礎理論となりますので、各階層の内容と具体例をしっかり押さえていきましょう。

マズローの欲求階層説の基本

マズローは、人間の行動を動機づける欲求は単一ではなく階層構造をもつと考え、**欲求階層説(欲求5段階説)**を提唱しました。ピラミッドの底辺には生命維持に直結する本能的な欲求が位置し、上にいくほど精神的・社会的に高次の欲求となります。重要な原則は、下位の欲求がある程度充足されてはじめて、その上位の欲求が前面に現れるという点です。例えば、食事も睡眠も十分にとれていない状態では、自己実現について考える余裕は生まれにくいということになります。

また、下位の4つ(生理的・安全・所属と愛・承認)は不足を満たそうとする欠乏欲求(欠乏動機)、最上位の自己実現の欲求は自らを成長させようとする成長欲求(成長動機)と呼び分けられます。マズロー自身は晩年、自己実現のさらに上に自己超越の欲求を置く6段階モデルも提唱しました。

5段階の欲求の内容

第1階層 生理的欲求

最も基盤にあるのが生理的欲求です。呼吸・食事・排泄・睡眠・体温維持・性など、生命を維持するために必要な最も基本的で本能的な欲求が含まれます。「空腹を満たしたい」「眠りたい」「排泄したい」といった訴えはすべてここに分類されます。看護における日常生活援助は、まさにこの生理的欲求の充足に直接かかわる重要な業務です。

第2階層 安全の欲求

生理的欲求がある程度満たされると、次に現れるのが安全の欲求です。身体的な安全、危険からの保護、健康の維持、経済的安定、秩序ある生活など、安心して暮らせる状態を求める欲求を指します。入院患者さんで言えば、転倒・転落の予防や感染防止、痛みの緩和などがこの段階のニーズと結びつきます。

第3階層 所属と愛の欲求(社会的欲求)

第3階層は所属と愛の欲求であり、社会的欲求とも呼ばれます。家族・友人・職場・地域などの集団の一員として受け入れられたい、愛されたい、愛したいという欲求です。「帰属の欲求」という表現もこの階層に該当します。長期入院や社会的孤立はこの欲求の充足を妨げるため、家族との面会や同病者との交流支援が大切になります。

第4階層 承認の欲求(自尊の欲求)

第4階層は承認の欲求で、自尊の欲求とも言います。他者から認められたい、尊敬されたい、能力を評価されたいという欲求と、自分自身を価値ある存在と感じたいという自尊感情の両側面があります。療養生活で役割を失った患者さんが自信を失う場面では、この欲求への配慮が必要です。

第5階層 自己実現の欲求

ピラミッドの頂点に位置するのが自己実現の欲求で、これがマズロー階層における最高次の欲求です。自分の可能性を最大限に発揮し、自分らしく生きたいという成長動機を指します。前述のとおり下位4つの欠乏欲求とは性質が異なり、満たされるほどさらに高めたいという特徴があります。

看護への応用

マズローの理論は、ヴァージニア・ヘンダーソンの基本的ニードの14項目やオレムのセルフケア理論など、多くの看護理論の思想的背景となっています。看護過程でアセスメントを行う際には、患者さんの抱えるニーズをこの階層に当てはめ、生理的欲求>安全>所属と愛>承認>自己実現の順で優先順位を考えるのが基本です。救急やICUなど急性期では、まず呼吸・循環・栄養・排泄といった生理的欲求と安全の欲求の充足が最優先となり、状態が安定する回復期以降に心理社会的ニーズや自己実現への支援へと比重を移していきます。トリアージの発想もこの優先順位の考え方に通じます。

なお、動機づけに関する関連理論として、人間観を性悪説的Xと性善説的Yに分けたマクレガーのXY理論、職務満足を衛生要因と動機づけ要因に分けたハーズバーグの二要因理論などがあります。これらもあわせて理解しておくと、患者さんやスタッフの行動の動機を多面的に捉える助けになります。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    マズローの欲求階層説を提唱したアメリカの心理学者は、アブラハム・である。

  2. 2.

    マズローの欲求階層で最下層に位置し、食事・排泄・睡眠など生命維持に直結する欲求をという。

  3. 3.

    生理的欲求の次に位置し、身体的安全や経済的安定を求める欲求をという。

  4. 4.

    家族や集団に属したい、愛されたいという社会的欲求は、所属ととも呼ばれる。

  5. 5.

    他者から認められたい、尊敬されたいという第4階層の欲求を(自尊の欲求)という。

  6. 6.

    マズローの欲求階層において最高次に位置する欲求はである。

  7. 7.

    マズロー階層の下位4つは欠乏欲求、最上位の自己実現の欲求は(成長動機)と呼ばれる。

  8. 8.

    マズローが晩年、自己実現のさらに上位に加えたとされる6段階目の欲求はである。

  9. 9.

    マズローの欲求階層と関連が深く、基本的ニードを14項目にまとめた看護理論家はである。

マズローの欲求階層」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。