糖尿病と痛風の検査
疾病の成り立ちと回復の促進 / 検査と症候
解説
今回は糖尿病と痛風の検査について解説します。糖尿病と痛風はいずれも代謝異常を背景とする生活習慣病であり、診断・経過観察に用いられる検査値とその意味を理解することは、国家試験で頻繁に問われる重要事項です。ここでは、糖尿病の血糖関連検査と尿検査、急性・慢性合併症の評価、そして痛風における血液検査の所見を、基礎から順に整理していきます。
糖尿病の病態と検査の基礎
糖尿病とは、膵臓のβ細胞から分泌されるインスリンの作用不足により、慢性的に血糖値が上昇する代謝疾患です。インスリンは血液中のブドウ糖を細胞内に取り込ませる働きを担うホルモンで、これが不足したり効きが悪くなったりすると、血液中にブドウ糖が過剰に残り、高血糖状態が持続します。糖尿病はインスリン分泌が枯渇する1型と、インスリン抵抗性と分泌低下を特徴とする2型に大別されます。
検査では「いま現在の血糖値」と「過去一定期間の平均血糖値」の両方を評価することが重要です。前者は採血時点の状態を、後者は治療効果や生活習慣の長期的な反映をみるために用いられます。
血糖値とブドウ糖負荷試験
血糖値は採血のタイミングにより空腹時血糖、随時血糖、食後血糖に分けられます。空腹時血糖は10時間以上絶食した後に測定する値で、126mg/dL以上が糖尿病型と判定されます。随時血糖は食事時間に関係なく測定する値で、200mg/dL以上が糖尿病型です。
**75gOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)**は、空腹時に75gのブドウ糖水を飲み、2時間後の血糖値を測定する検査です。2時間値が200mg/dL以上で糖尿病型と判定されます。空腹時血糖が境界域にある人や、より精密に耐糖能を評価したい場合に行われます。
HbA1cの意味
糖尿病の血糖コントロール指標として最も標準的に用いられているのがHbA1c(グリコヘモグロビン)です。HbA1cは、赤血球中のヘモグロビンとブドウ糖が非酵素的に結合した糖化ヘモグロビンであり、赤血球の寿命がおよそ120日であることから、過去1〜2か月間の平均血糖値を反映します。
HbA1cは食事の影響を受けないため、食前・食後を問わず採血でき、外来での経過観察に適しています。日本糖尿病学会の診断基準では6.5%以上が糖尿病型とされ、合併症予防のための血糖コントロール目標は7.0%未満(NGSP値)とされています。なお、溶血性貧血や妊娠などで赤血球寿命が短縮している場合はHbA1cが実際の血糖を反映しないため、過去2週間の平均を反映するグリコアルブミンや、数日の高血糖を反映する1,5-AGなどが補助的に用いられます。
尿検査でわかること
糖尿病では血液検査だけでなく尿検査も重要な情報源になります。代表的な所見は尿糖と尿ケトン体です。
尿糖
血糖値がおよそ160〜180mg/dLを超えると、腎臓の尿細管でブドウ糖を再吸収しきれずに尿中へ漏れ出します。この閾値を腎排泄閾値といい、これを超えた場合に尿糖が陽性となります。ただし腎性糖尿のように、血糖値は正常でも尿糖が陽性となる例もあるため、尿糖だけで糖尿病を断定することはできません。
尿ケトン体
ケトン体とは、アセト酢酸・β-ヒドロキシ酪酸・アセトンの総称で、ブドウ糖をエネルギーとして利用できない状況下で、肝臓が脂肪酸をβ酸化して産生する代替エネルギー源です。糖尿病ではインスリン作用が不足しているため、細胞がブドウ糖を取り込めず「糖はあるのに使えない」相対的飢餓状態となり、脂肪分解が亢進してケトン体が過剰に産生されます。血中に増加したケトン体は腎を経て尿中に排泄されるため、尿ケトン体陽性となります。
尿ケトン体は糖尿病以外にも、絶食・飢餓、激しい嘔吐や下痢、過度なダイエット、妊娠悪阻、ケトン食療法、アルコール性ケトアシドーシスなどでも陽性化します。共通しているのは「糖を使えない・糖がない」状態であるという点です。尿検査の代表所見と疾患の対応は、尿糖は糖尿病・腎性糖尿、尿蛋白はネフローゼ症候群や腎炎、尿潜血は尿路結石や糸球体腎炎、白血球・亜硝酸塩は尿路感染症、ウロビリノーゲンは肝障害や溶血、と整理しておくと理解が深まります。
糖尿病の合併症と関連検査
糖尿病の合併症は発症様式により急性合併症と慢性合併症に大別されます。検査値の解釈には、どの合併症をみているかを意識することが大切です。
急性合併症
急性合併症には**糖尿病ケトアシドーシス(DKA)**と高浸透圧高血糖症候群(HHS)があり、いずれも著明な高血糖を背景に意識障害や昏睡を引き起こす緊急病態です。DKAは主に1型糖尿病でインスリン欠乏により脂肪分解が亢進し、ケトン体が蓄積して代謝性アシドーシスをきたします。深く速いクスマウル呼吸、呼気のアセトン臭(フルーツ様の口臭)、著明な脱水、意識障害が特徴です。検査では高血糖、尿ケトン体陽性、代謝性アシドーシスを認めます。
HHSは主に2型糖尿病の高齢者にみられ、感染や脱水を契機に血糖値が600mg/dL以上、血漿浸透圧320mOsm/L以上に達しますが、ケトーシスやアシドーシスは軽度にとどまる点でDKAと異なります。
慢性合併症と神経障害
慢性合併症は細小血管症と大血管症に分けられます。細小血管症は糖尿病三大合併症ともよばれ、神経障害・網膜症・腎症の順に「し・め・じ」と覚えるのが定番です。大血管症は壊疽・脳血管疾患・虚血性心疾患で「え・の・き」と整理されます。
糖尿病神経障害のうち自律神経障害が進行すると、交感神経反応が鈍化し、低血糖時に本来現れるはずの動悸・発汗・振戦などの警告症状が出にくくなる無自覚性低血糖を生じます。前駆症状なくいきなり意識障害が出現する危険な状態で、神経障害の検査・観察ではこの点を見逃さないことが看護の要点となります。
痛風と尿酸
痛風はプリン体の代謝異常によって尿酸が血中に過飽和となり、関節腔内に尿酸ナトリウム結晶として析出することで激しい炎症を起こす疾患です。第1中足趾節関節(足の親指の付け根)に発作的に生じる急性関節炎が典型像です。
血清尿酸値
痛風の患者の血液検査で高値を示すのは尿酸です。血清尿酸値が7.0mg/dLを超えた状態を高尿酸血症と定義し、この値を超えると尿酸塩結晶の析出リスクが高まります。男性に圧倒的に多く、肥満、過食、アルコール(特にビール)、激しい運動、脱水などが発症の誘因となります。
尿酸はプリン体の最終代謝産物であり、プリン体を多く含むビール、レバー、白子、魚卵などの摂取は血清尿酸値を上昇させます。生活指導としてはプリン体の摂取制限と、尿中尿酸結晶の析出を防ぐための十分な水分摂取(1日2L以上)が重要です。
治療薬と検査値の動き
痛風発作の急性期にはNSAIDs、コルヒチン、ステロイドで関節炎を鎮静化し、間欠期にはアロプリノールやフェブキソスタットといった尿酸産生抑制薬で血清尿酸値を低下させていきます。治療効果は血清尿酸値の推移で評価し、おおむね6.0mg/dL以下を目標にコントロールします。
まとめ
糖尿病の検査では、空腹時血糖126mg/dL以上、随時血糖または75gOGTT2時間値200mg/dL以上、HbA1c 6.5%以上が診断基準となります。HbA1cは過去1〜2か月の平均血糖を反映し、長期的なコントロール指標として最も標準的です。尿検査ではインスリン作用不足によって脂肪分解が亢進した結果、尿ケトン体が陽性となり、進行すれば糖尿病ケトアシドーシスを呈します。合併症は急性(DKA・HHS)と慢性(し・め・じ/え・の・き)に整理して理解しましょう。一方、痛風はプリン体代謝異常により血清尿酸値が7.0mg/dLを超えて上昇し、関節に尿酸結晶が析出することで激痛発作を起こします。糖尿病はHbA1c、痛風は尿酸という主要検査値を中心に、関連する尿所見や合併症の検査像をセットで覚えることが国試対策の要となります。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
糖尿病の血糖コントロール指標として用いられ、過去1〜2か月間の平均血糖値を反映する糖化ヘモグロビンをという。
- 2.
日本糖尿病学会の診断基準において、HbA1cが%以上は糖尿病型と判定される。
- 3.
糖尿病の診断において、空腹時血糖値がmg/dL以上、または75gOGTT2時間値が200mg/dL以上で糖尿病型と判定される。
- 4.
糖尿病ではインスリン作用不足によりブドウ糖が利用できず脂肪分解が亢進するため、尿中のが陽性となる。
- 5.
1型糖尿病の急性合併症で、インスリン欠乏により脂肪分解が亢進してケトン体が蓄積し、代謝性アシドーシスと意識障害をきたす病態を糖尿病という。
- 6.
糖尿病ケトアシドーシスでみられる、アシドーシスを代償するための深く速い呼吸を呼吸という。
- 7.
糖尿病の自律神経障害により交感神経反応が鈍り、動悸や発汗などの警告症状を伴わずに意識障害をきたす低血糖をという。
- 8.
痛風の患者の血液検査で高値を示し、関節腔に結晶として析出して急性関節炎を引き起こすのはである。
- 9.
血清尿酸値がmg/dLを超えた状態を高尿酸血症といい、痛風発作の素地となる。
- 10.
痛風の原因となる尿酸は、食事中のの最終代謝産物であり、ビール・レバー・魚卵などの摂取制限が生活指導の要点となる。
