ウイルス性疾患の原因
疾病の成り立ちと回復の促進 / 病因・病態
解説
ウイルスとは、細菌よりもはるかに小さく、自分自身では増殖できない病原体であり、ヒトの細胞に侵入して増殖する微生物のことをいいます。今回は、看護師国家試験で頻出となるウイルス性疾患について、原因ウイルスごとに整理して解説します。
アデノウイルスによる眼疾患
アデノウイルスは、結膜炎や咽頭炎を起こす代表的なウイルスで、複数の型に分かれています。型ごとに引き起こす疾患が異なる点が国試で問われやすいポイントです。
流行性角結膜炎(EKC)
流行性角結膜炎は、アデノウイルス8型・19型・37型などが原因となる結膜炎で、接触感染で広がります。両眼性の強い結膜充血、眼脂、流涙に加え、耳前リンパ節の腫脹を認めることが特徴です。発症から数日経つと角膜に多発性の上皮下混濁を生じ、まぶしさや視力低下の原因となります。学校保健安全法では第三種感染症に分類され、医師が感染のおそれがないと認めるまで出席停止となります。
咽頭結膜熱(PCF・プール熱)
咽頭結膜熱は、アデノウイルス3型・4型・7型が主な原因で、夏季にプールを介して流行しやすいことから「プール熱」とも呼ばれます。発熱・咽頭炎・結膜炎の三徴をきたします。
急性出血性結膜炎
急性出血性結膜炎は、主にエンテロウイルス70型が原因で、結膜下出血を伴うのが特徴です。アデノウイルスではない点に注意が必要です。
水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)による疾患
水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)は、初感染で水痘を、再活性化で帯状疱疹を引き起こす一つのウイルスです。
水痘
水痘はVZVの初感染で発症し、空気感染・飛沫感染・接触感染のすべての経路で広がるため感染力が非常に強い疾患です。紅斑から始まり、水疱、膿疱、痂皮へと変化しますが、新旧の発疹が同一部位に混在することが診断の手がかりになります。すべての発疹が痂皮化するまで隔離が必要です。水痘ワクチンは定期接種となっており、1〜3歳の間に2回接種します。
帯状疱疹
帯状疱疹は、神経節に潜伏していたVZVが再活性化することで発症します。神経の走行に沿った片側性の水疱と強い神経痛が特徴です。
ラムゼイ・ハント症候群
ラムゼイ・ハント症候群は、顔面神経節でVZVが再活性化して起こる末梢性の顔面神経麻痺で、耳介の水疱、耳痛、難聴、めまい、舌前2/3の味覚障害を伴います。発症72時間以内にアシクロビルとステロイドの併用治療を開始することが、後遺症を残さないために重要です。
ウイルスが関与する悪性腫瘍
一部のウイルスは、感染した細胞をがん化させることが知られています。原因ウイルスと悪性腫瘍の対応は国試で頻出です。
成人T細胞白血病(ATL)
成人T細胞白血病は、HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)を原因とするリンパ球系の白血病です。感染経路は母乳を介した母子感染が主であり、九州・沖縄地方に多くみられます。
その他のウイルス関連腫瘍
子宮頸癌はヒトパピローマウイルス(HPV)、肝細胞癌はB型肝炎ウイルス(HBV)とC型肝炎ウイルス(HCV)、上咽頭癌およびバーキットリンパ腫はEBウイルス(EBV)、カポジ肉腫はヒトヘルペスウイルス8型(HHV-8)が関与します。
伝染性単核球症
伝染性単核球症は、**Epstein-Barrウイルス(EBV)**による感染症で、唾液を介して感染するため「キス病」とも呼ばれます。発熱・咽頭痛・頸部リンパ節腫脹の三徴が典型的で、肝脾腫を伴うこともあります。誤ってアモキシシリンを投与すると薬疹様の皮疹を生じやすく、また脾破裂を予防するため激しい運動は控える必要があります。
その他の小児ウイルス感染症
小児期にみられるウイルス感染症は数多くあり、原因ウイルスと特徴的所見の組み合わせを覚えておく必要があります。麻疹は麻疹ウイルスによる感染症で、頬粘膜のコプリック斑が特徴的です。風疹は風疹ウイルスによる感染症で、妊婦感染による先天性風疹症候群が問題となります。突発性発疹はヒトヘルペスウイルス6型・7型(HHV-6/7)が原因で、解熱後に発疹が出現します。伝染性紅斑(リンゴ病)はパルボウイルスB19、手足口病はコクサッキーウイルスやエンテロウイルスが原因で、ヘルパンギーナも同じくコクサッキーウイルスが原因となります。
まとめ
ウイルス性疾患は、原因ウイルスと感染経路、特徴的な臨床所見をセットで覚えることが国試攻略の鍵となります。アデノウイルスでは型による疾患の違い、VZVでは初感染と再活性化による疾患の違い、HTLV-1やEBV、HPVなどの腫瘍関連ウイルスについては原因ウイルスと悪性腫瘍の対応を確実に押さえておきましょう。また、水痘の隔離期間や学校保健安全法上の分類など、感染管理に関わる知識も看護師として重要な学習ポイントです。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
流行性角結膜炎の原因ウイルスはであり、学校保健安全法では第種感染症に分類される。
- 2.
水痘の原因ウイルスは(VZV)であり、すべての発疹がするまで隔離が必要である。
- 3.
VZVの再活性化により末梢性顔面神経麻痺、耳介水疱、難聴、めまいをきたす疾患をといい、発症72時間以内にとステロイドの併用治療を開始する。
- 4.
成人T細胞白血病の原因ウイルスはであり、主な感染経路はを介した母子感染である。
- 5.
伝染性単核球症の原因ウイルスは(Epstein-Barrウイルス)であり、発熱・咽頭痛・頸部の三徴をきたす。
- 6.
子宮頸癌の発症に関与するウイルスは(ヒトパピローマウイルス)である。
- 7.
咽頭結膜熱はアデノウイルス3・4・7型が原因で、別名とも呼ばれる。
- 8.
突発性発疹の原因ウイルスは/7(ヒトヘルペスウイルス6型・7型)であり、伝染性紅斑の原因ウイルスはである。
