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喀血・吐血・下血

成人看護学 / 成人看護総論・その他

解説

今回は喀血・吐血・下血について解説します。これらはいずれも体外に血液が排出される症候ですが、出血している部位が異なるため、性状や対応も大きく変わります。看護師は患者から「血を吐いた」「便に血が混じった」と訴えられた際に、どの部位からの出血かを瞬時に推定し、適切な体位や緊急性の判断に結びつけなければなりません。国家試験でも頻出のテーマであり、それぞれの定義と鑑別ポイントを正確に押さえておきましょう。

喀血とは

喀血とは、気管・気管支・肺などの下気道(呼吸器系)から出血した血液が、咳嗽とともに口から喀出される現象をいいます。出血した血液は肺の中で空気と混ざるため、鮮紅色で泡沫状(泡まじり)となり、肺胞や気道はアルカリ性の環境であるため、喀出された血液もアルカリ性を示します。咳とともに出てくる点も大きな特徴で、患者は「咳をしたら血が出た」と訴えることが多くなります。

喀血の原因疾患

喀血の原因となる代表的な疾患には、肺結核、気管支拡張症、肺癌、肺アスペルギルス症、肺膿瘍、肺塞栓症などがあります。中でも肺結核は喀血を呈する代表的な疾患として国試で頻出です。結核は結核菌による慢性の肉芽腫性炎症で、肺に空洞を形成し、その壁を走行する血管が侵食されると喀血が起こります。2週間以上続く咳嗽・喀痰・微熱・盗汗・体重減少などの症状に血痰や喀血が加わる場合は結核を強く疑う必要があります。

喀血時の看護

大量喀血では血液が気道を閉塞し窒息を起こす危険性があります。1回の出血が200mL以上、または24時間で600mL以上を大量喀血と呼び、生命に関わる緊急事態とされます。看護のポイントは、まず気道確保を最優先とし、出血している側の肺を下にする患側臥位(側臥位)をとることです。これは健側の肺に血液が流れ込んで健側まで換気できなくなるのを防ぐためで、上にした健側肺で呼吸を維持する目的があります。あわせてバイタルサインや経皮的動脈血酸素飽和度の継続的な観察、酸素投与の準備、吸引の準備、緊急時の輸液・輸血ルートの確保が必要となります。結核が疑われる場合には、N95マスクの装着や陰圧個室の使用など空気感染対策も徹底します。

吐血とは

吐血とは、食道・胃・十二指腸など上部消化管(トライツ靱帯より口側)からの出血が、嘔吐とともに口から排出される現象をいいます。血液は胃酸の影響を受けて変性するため、コーヒー残渣様または暗赤色を呈し、性状は酸性となります。食物残渣を含むことが多く、嘔気・嘔吐を伴って排出される点が喀血との大きな違いです。原因疾患としては胃・十二指腸潰瘍、食道静脈瘤破裂、急性胃粘膜病変、マロリー・ワイス症候群、胃癌などが代表的です。出血量が多い場合は循環血液量減少性ショックに陥るため、緊急の対応が求められます。

喀血と吐血の鑑別

両者は口から血液が出る点で混同されやすく、鑑別が重要です。色調では喀血が鮮紅色、吐血が暗赤色〜コーヒー残渣様、性状では喀血が泡沫状、吐血が食物残渣の混在、pHでは喀血がアルカリ性、吐血が酸性、排出様式では喀血が咳嗽、吐血が嘔吐に伴うという4つのポイントで整理して覚えておくと混乱しません。

下血とは

下血とは、消化管からの出血が肛門から排出される現象の総称です。消化管は口から肛門までつながる一本の管であるため、上部・下部を問わず消化管由来の血液が肛門から排出されれば下血と呼びます。下血は色調によって出血部位を推定でき、看護師は便の性状観察から出血源をある程度予測することが求められます。

下血の色調と出血部位

下血の色は、出血部位から肛門までに要する時間と消化液に曝される程度によって決まります。上部消化管(食道・胃・十二指腸)からの出血は、胃酸や腸内細菌の作用によってヘモグロビンが変性し、便が黒色のタール状となります。これをタール便(メレナ)と呼びます。回腸から右側結腸付近の出血では暗赤色便となり、左側結腸から直腸・肛門に近い部位の出血では、酸化や変性を受ける時間が短いため鮮紅色のまま排出されます。ただし上部消化管からの大量出血では腸管通過時間が短くなり鮮紅色便となる例外もあるため、ショック症状やバイタルサインの変化を伴う場合は上部消化管出血も必ず除外する必要があります。

下血を呈する疾患

下血を呈する代表的な疾患には、大腸癌、潰瘍性大腸炎、クローン病、虚血性大腸炎、大腸憩室出血、痔核、直腸癌などがあります。大腸癌は日本人の癌死因で上位を占め、S状結腸・直腸が好発部位です。腫瘍表面の脆弱な血管からの持続的な出血により血便・下血をきたし、進行すると便通異常(便秘と下痢の交代)、便の狭小化、腹痛、体重減少、貧血を伴います。50歳以上で便潜血検査が陽性となった場合には全大腸内視鏡検査による精査が標準的に行われます。一方、上部消化管出血では吐血と黒色タール便の両方が起こり得ますが、下部消化管出血では原則として吐血は生じません。

まとめ

喀血は気管・気管支・肺など下気道からの出血で、鮮紅色・泡沫状・アルカリ性で咳とともに排出され、肺結核や気管支拡張症、肺癌などが原因となります。吐血は上部消化管からの出血で、暗赤色〜コーヒー残渣様・酸性で嘔吐とともに排出され、胃・十二指腸潰瘍や食道静脈瘤破裂などが原因となります。下血は消化管由来の血液が肛門から排出される現象で、鮮紅色なら直腸・肛門付近、暗赤色なら右側結腸付近、黒色タール便なら上部消化管出血を示します。看護では出血部位の推定、患側臥位による窒息予防、バイタルサインの厳重な観察、ショックへの備えが共通の重要ポイントとなります。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    気管・気管支・肺などの下気道から出血した血液が咳嗽とともに口から喀出される現象をという。

  2. 2.

    喀血の血液は空気と混ざるため鮮紅色でを呈し、pHはアルカリ性である。

  3. 3.

    喀血を起こす代表的な呼吸器疾患で、肺の空洞形成と血管侵食を特徴とする慢性肉芽腫性疾患はである。

  4. 4.

    大量喀血時には窒息予防のため、出血している側を下にしたをとり、健側肺への血液流入を防ぐ。

  5. 5.

    食道・胃・十二指腸など上部消化管からの出血が嘔吐とともに口から排出される現象をといい、胃酸の影響でコーヒー残渣様または暗赤色を呈する。

  6. 6.

    消化管からの出血が肛門から排出される現象の総称をという。

  7. 7.

    上部消化管からの出血により、ヘモグロビンが変性して便が黒色を呈する状態をという。

  8. 8.

    鮮紅色の下血がみられた場合、出血部位は左側結腸〜付近など肛門に近い下部消化管である可能性が高い。

  9. 9.

    下血を呈する代表的な悪性腫瘍で、S状結腸・直腸に好発し、便潜血検査陽性を契機に発見されることが多い疾患はである。

喀血・吐血・下血」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。