頭部外傷と異常肢位(除皮質硬直)
看護師国家試験 第105回 午後 第93問 / 成人看護学 / 脳・神経系
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(48歳、男性)は、横断歩道を歩行中に乗用車に衝突され、救命救急センターに搬送された。搬送時、呼びかけに開眼せず、四肢の筋緊張が亢進していた。呼吸数30/分、脈拍60/分、血圧142/98mmHgであった。右側頭部と右肩甲骨部の擦過傷以外に目立った外傷はなかった。 搬送時のAさんの様子を図に示す。Aさんの状態はどれか。
- 1.項部硬直
- 2.除脳硬直
- 3.除皮質硬直
- 4.間代性けいれん
- 5.強直性けいれん
対話形式の解説
博士
今回は交通外傷で搬送されたAさんの意識障害と異常肢位について考えよう。搬送時に開眼せず四肢の筋緊張が亢進、呼吸30/分、脈拍60/分、血圧142/98mmHgじゃった。
サクラ
脈拍が遅くて血圧が高いのは、何かの兆候ですか?
博士
鋭いのう。これはCushing現象といい、頭蓋内圧亢進で生じる『血圧上昇+徐脈+呼吸異常』の三徴じゃ。脳ヘルニアの切迫を示唆する危険なサインじゃ。
サクラ
図では上肢が胸の上で曲がっていて、下肢は伸びていますね。
博士
そこが鍵じゃ。選択肢を一つずつ見ていこう。1の項部硬直はどんな状態か覚えておるか?
サクラ
髄膜炎やくも膜下出血で首を前屈すると抵抗がある症状ですよね。
博士
正解。髄膜刺激症状じゃから外傷による肢位異常とは別物じゃ。2の除脳硬直はどうじゃ?
サクラ
中脳や橋の障害で、上下肢ともにピンと伸びると習いました。
博士
その通り。両上肢が伸展・内転・回内し、下肢も伸展する。本症例は上肢が曲がっているので違う。3の除皮質硬直が正解じゃ。
サクラ
大脳皮質の広範な障害で、上肢が屈曲して下肢が伸展するんですね。
博士
うむ。覚え方は『皮質がやられたら上が曲がる、脳幹までいくと全部伸びる』じゃ。GCSのM3に相当し、除脳硬直M2より軽度じゃが重篤な障害を示す。4の間代性けいれんは?
サクラ
筋の収縮と弛緩が周期的に反復して、ガクガク震えるけいれんです。
博士
その通り。持続的な硬直姿勢ではない。5の強直性けいれんは?
サクラ
筋が持続的に収縮して全身が突っ張る発作で、てんかん大発作の初期にみられますよね。
博士
正解じゃ。いずれもけいれんであって外傷後の異常肢位とは機序が異なる。本症例は硬膜下血腫や脳挫傷が強く疑われ、緊急画像検査と減圧処置が必要じゃ。
サクラ
異常肢位を見たら、障害部位の深さを推測できるんですね。
博士
その通り。除皮質硬直が除脳硬直に進行したら、より深部の脳幹障害が進んだ警告サインじゃ。迅速に医師に報告しよう。
POINT
除皮質硬直は大脳皮質から内包にかけての広範な障害で上肢屈曲・下肢伸展を呈する異常肢位で、GCSのM3に相当します。除脳硬直は中脳〜橋上部障害で上下肢とも伸展しより重度です。本症例はCushing現象も伴い頭蓋内圧亢進が疑われます。項部硬直は髄膜刺激症状、間代性・強直性けいれんは発作性の筋活動で、いずれも機序が異なります。異常肢位の変化は脳障害の進行を示す重要な観察点です。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(48歳、男性)は、横断歩道を歩行中に乗用車に衝突され、救命救急センターに搬送された。搬送時、呼びかけに開眼せず、四肢の筋緊張が亢進していた。呼吸数30/分、脈拍60/分、血圧142/98mmHgであった。右側頭部と右肩甲骨部の擦過傷以外に目立った外傷はなかった。 搬送時のAさんの様子を図に示す。Aさんの状態はどれか。
解説:正解は 3 です。除皮質硬直は、大脳皮質から内包にかけての広範な障害により、上肢が屈曲・内転し、下肢が伸展する異常肢位で、上肢を胸の上で折り曲げ下肢を突っ張る姿勢が典型です。一方、除脳硬直は中脳から橋上部の障害で上下肢ともに伸展します。本問では頭部外傷後に意識障害と四肢筋緊張亢進を呈し、図で上肢屈曲・下肢伸展の姿勢が示されており除皮質硬直と判断します。Cushing現象(徐脈・高血圧)も合併しており頭蓋内圧亢進を示唆します。
選択肢考察
-
× 1. 項部硬直
項部硬直は仰臥位で頭部を前屈させると抵抗や疼痛が生じる髄膜刺激症状で、くも膜下出血や髄膜炎で認められます。頭部外傷による異常肢位ではないため誤りです。
-
× 2. 除脳硬直
除脳硬直は中脳から橋上部の両側性障害で生じ、上肢・下肢とも伸展・内転・回内する姿勢です。上肢が屈曲している本症例とは異なります。
-
○ 3. 除皮質硬直
大脳皮質から皮質下白質・内包に及ぶ広範な障害で生じ、上肢屈曲・内転・手関節屈曲、下肢伸展・内旋という姿勢をとります。図の肢位と一致し正解です。
-
× 4. 間代性けいれん
間代性けいれんは筋の収縮と弛緩が周期的に反復し、四肢がガクガク動く発作です。持続的な硬直姿勢である本症例とは病態が異なります。
-
× 5. 強直性けいれん
強直性けいれんは筋が持続的に収縮し全身が突っ張る発作で、眼球上転・呼吸停止・チアノーゼを伴うことがあります。けいれん発作と外傷後の異常肢位は機序が異なります。
除皮質硬直と除脳硬直はGCSのM(最良運動反応)でそれぞれM3、M2に相当し、脳幹機能の障害が深いほど除脳硬直に移行します。頭部外傷後にCushing現象(血圧上昇+徐脈+呼吸異常)を呈している場合、頭蓋内圧亢進や脳ヘルニアの兆候として緊急対応が必要です。本症例は呼吸30/分、脈拍60/分、血圧142/98mmHgでCushing現象を示唆し、硬膜下血腫など頭蓋内出血を疑います。覚え方は『皮質(上)がやられたら上(上肢)が曲がる、脳幹までいくと全部伸びる』。
頭部外傷後の異常肢位のうち、上肢屈曲・下肢伸展が特徴の除皮質硬直と、上下肢伸展の除脳硬直を鑑別できるかを問うている。
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