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術後6日目の意識レベル低下、何が起きたか

看護師国家試験 第107回 午後 第93問 / 成人看護学 / 脳・神経系

国試問題にチャレンジ

107回 午後 第93問

Aさん( 52歳、女性 )。自宅で突然激しい頭痛と悪心が出現し、自力で救急車を要請し、搬送された。ジャパン・コーマ・スケール< JCS >Ⅰ-2で頭痛を訴えており、発汗著明であった。瞳孔径は両側3.0mm。上下肢の麻痺はない。Aさんは頭部CTでくも膜下出血( subarachnoid hemorrhage )と診断され、ICUに入室した。入室時のバイタルサインは、体温36.8℃、呼吸数24/分、脈拍92/分、血圧156/98mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度< SpO 2 >95%であった。 Aさんは脳血管造影で右中大脳動脈に動脈瘤( aneurysm )が確認され、脳血管内治療( コイル塞栓術 )が実施された。その後、Aさんは意識清明で問題なく経過していたが、手術後6日から刺激に対する反応が鈍くなり、閉眼していることが多くなった。意識レベルはジャパン・コーマ・スケール< JCS >Ⅱ-10。左上肢はBarré< バレー >徴候陽性を示した。 Aさんに生じていることとして最も考えられるのはどれか。

  1. 1.けいれん発作
  2. 2.脳血管攣縮
  3. 3.せん妄
  4. 4.再出血
  5. 5.水頭症( hydrocephalus )

対話形式の解説

博士 博士

Aさんはコイル塞栓術後6日で反応が鈍くなり、左上肢のバレー徴候が陽性になったぞ。

サクラ サクラ

くも膜下出血後4〜14日ということは、脳血管攣縮の時期ですね。

博士 博士

正解じゃ。右中大脳動脈の攣縮なら左片麻痺が出るのも納得じゃろう。

サクラ サクラ

コイル塞栓術を受けているので、再出血は考えにくいですね。

博士 博士

動脈瘤は閉塞しておるから、再出血のリスクは下がっておる。しかも再出血の好発は24時間以内じゃ。

サクラ サクラ

けいれん発作は問題文にけいれんの記載がないので除外できます。

博士 博士

そうじゃ。症状は発作的ではなく徐々に進行しておる。

サクラ サクラ

せん妄は変動しますし、興奮や幻覚が特徴ですよね。

博士 博士

閉眼してじっとしておる像とは合致せんな。バレー徴候陽性もせん妄では出ないぞ。

サクラ サクラ

水頭症はどう違うんでしょうか。

博士 博士

水頭症は緩徐に進行し、歩行障害や尿失禁、認知機能低下が三徴じゃ。片側麻痺は典型的ではないのじゃ。

サクラ サクラ

脳血管攣縮の治療はどうするんですか。

博士 博士

fasudilやニカルジピンの投与、血圧維持、循環血液量維持じゃ。早期発見のため神経所見の観察が鍵じゃぞ。

POINT

くも膜下出血後4〜14日は脳血管攣縮の好発時期であり、遅発性脳虚血として意識レベル低下や片麻痺が出現します。右中大脳動脈の攣縮では対側である左片麻痺を呈するため、バレー徴候陽性は重要な所見です。コイル塞栓術後であり動脈瘤は閉塞しているため再出血は考えにくく、けいれんやせん妄、水頭症とは経過が異なります。薬物療法と循環動態の適正管理を行いつつ、経時的な神経症状観察で早期発見に努めることが看護の要点となります。

解答・解説

正解は 2 です

問題文:Aさん( 52歳、女性 )。自宅で突然激しい頭痛と悪心が出現し、自力で救急車を要請し、搬送された。ジャパン・コーマ・スケール< JCS >Ⅰ-2で頭痛を訴えており、発汗著明であった。瞳孔径は両側3.0mm。上下肢の麻痺はない。Aさんは頭部CTでくも膜下出血( subarachnoid hemorrhage )と診断され、ICUに入室した。入室時のバイタルサインは、体温36.8℃、呼吸数24/分、脈拍92/分、血圧156/98mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度< SpO 2 >95%であった。 Aさんは脳血管造影で右中大脳動脈に動脈瘤( aneurysm )が確認され、脳血管内治療( コイル塞栓術 )が実施された。その後、Aさんは意識清明で問題なく経過していたが、手術後6日から刺激に対する反応が鈍くなり、閉眼していることが多くなった。意識レベルはジャパン・コーマ・スケール< JCS >Ⅱ-10。左上肢はBarré< バレー >徴候陽性を示した。 Aさんに生じていることとして最も考えられるのはどれか。

解説:正解は2です。くも膜下出血後4〜14日目は脳血管攣縮の好発時期であり、術後6日目に意識レベル低下とバレー徴候陽性という局所神経症状が出現したことから、右中大脳動脈領域の遅発性脳虚血が最も強く疑われます。

選択肢考察

  1. × 1.  けいれん発作

    問題文にけいれんを示す記載はなく、症状は徐々に出現した意識レベル低下と左上肢麻痺です。発作的に生じる不随意運動とは経過が異なります。

  2. 2.  脳血管攣縮

    くも膜下出血後4〜14日目に出現する遅発性の血管狭窄で、責任血管領域の脳虚血により意識障害や片麻痺などの局所症状を生じます。右中大脳動脈領域の虚血は左片麻痺として現れ、今回の経過と合致します。

  3. × 3.  せん妄

    注意障害や見当識障害、幻覚、興奮を伴う変動性の意識変容が特徴です。Aさんは反応が鈍く閉眼していることが多い状態でバレー徴候陽性もあり、せん妄像とは合致しません。

  4. × 4.  再出血

    コイル塞栓術によって動脈瘤は閉塞されており、再出血のリスクは大きく低下しています。また再出血の好発時期は発症24時間以内であり、術後6日目の典型的病態としては考えにくいです。

  5. × 5.  水頭症( hydrocephalus )

    くも膜下腔での髄液吸収障害により生じ、頭蓋内圧亢進症状や歩行障害、尿失禁、認知機能低下が典型です。亜急性から慢性期に緩徐に進行することが多く、片側性のバレー徴候陽性は特徴的ではありません。

脳血管攣縮は破裂脳動脈瘤周囲のくも膜下腔に貯留した血液分解産物が血管壁を刺激して生じるとされ、経頭蓋ドップラーや脳血管造影で評価します。予防・治療としてfasudilやニカルジピンの投与、3H療法(hypervolemia, hypertension, hemodilution)が行われてきましたが、近年は正常血液量を維持した血圧維持療法が主流です。早期発見のため、神経症状の微細な変化を見逃さないことが重要です。

術後4〜14日の神経症状悪化は脳血管攣縮による遅発性脳虚血を第一に疑い、責任血管領域に合致する所見がないか観察します。