開頭術後のベッドアップ、30度が黄金角度である理由
看護師国家試験 第112回 午後 第96問 / 成人看護学 / 脳・神経系
国試問題にチャレンジ
次の文を読み問いに答えよ。 Aさん(53歳、女性)は休日に公園を散歩中、階段から落ちて頭部を強打し、意識を消失した状態で病院に救急搬送された。病院到着時のAさんは開眼せず、声は発しているが理解不能である。痛み刺激には逃れようとする動作がみられる。 この設問は、<前問>の続きの設問となります。 開頭手術後2日、Aさんの全身状態は良好で、硬膜外ドレーンの排液も異常所見はなく経過している。看護師が訪室するとAさんは仰臥位で開眼し、「目が覚めたら病院にいて手術も終えていたので驚きました。今は気分もよいが、寝てばかりで背中が痛くなってきたので体勢を変えたい」と話す。 看護師の対応で適切なのはどれか。
- 1.仰臥位を保持する。
- 2.頭側を30度挙上する。
- 3.頭側を60度挙上する。
- 4.頭側を90度挙上する。
対話形式の解説
博士
今回は開頭術後2日目のAさんじゃ。硬膜外ドレーン留置中で、背中が痛いから体位を変えたいと訴えておる。どの角度まで挙上するかの問題じゃよ。
アユム
ドレーンがあるから動かしていいのか迷います。
博士
まず前提じゃ。開頭術後は頭蓋内圧管理のため頭部30度挙上が標準的体位とされる。これ以上でも以下でもない理由があるのじゃ。
アユム
どうして30度なんですか?
博士
30度で脳静脈還流が最大化し頭蓋内圧が下がる一方、脳灌流圧も保てる。平坦すぎると静脈還流が悪く、高すぎると脳灌流が低下するのじゃ。
アユム
バランスを取った角度なんですね。
博士
その通り。さらに硬膜外ドレーンの観点では、挙上が強すぎるとチューブが屈曲したり、刺入部への牽引や排液量の変動、抜去事故の危険が増すのじゃ。
アユム
だから60度や90度は不適切なんですね。
博士
その通り。60度はすでに半座位に近く、90度は端座位相当でドレーン管理上リスクが高い。
アユム
選択肢1の仰臥位保持はどうですか?
博士
Aさんが明確に背部痛を訴えて体位変換を希望しておる。患者の訴えを無視して仰臥位を続けるのは安楽の原則に反するし、同一体位による褥瘡リスクも高まるのじゃ。
アユム
術後の硬膜外ドレーンってどんな目的で留置するんですか?
博士
術野に溜まる血液や滲出液を排出し、再出血や感染を早期発見するためじゃ。排液は術後1〜2日は血性で、徐々に淡血性・漿液性へと変化する。急に鮮血が増えたら再出血を疑う。
アユム
排液の高さも重要ですよね。
博士
うむ、設定高さを守り、挙上時はチューブの屈曲・閉塞・引っ張りに注意する。体位変換時は看護師が2人以上で行うこともあるのじゃ。
アユム
頭蓋内圧亢進を防ぐほかのケアは?
博士
頸部の過屈曲・過伸展を避けて静脈還流を妨げない、努責や咳嗽を減らす、発熱管理、適切な鎮痛・鎮静、便秘予防などじゃ。
アユム
Aさんは意識レベルも戻って会話もできているので、安楽への配慮が一段と大事ですね。
博士
その通り。術後回復期は安全だけでなくQOLの視点が必要じゃ。30度挙上に加えて、体圧分散マットや下肢の位置調整など小さな工夫が患者の安楽につながる。
POINT
開頭術後の硬膜外ドレーン留置中は、頭蓋内圧亢進予防と安楽確保の両立が求められます。頭部30度挙上は脳静脈還流を促して頭蓋内圧を下げつつ脳灌流圧を維持する標準体位であり、ドレーンの屈曲・抜去リスクも最小限に抑えられるため最適です。仰臥位保持は背部痛を放置することになり、60度・90度はドレーン管理上のリスクが高まります。看護師は排液の色調・量の観察、チューブ管理、頸部の位置、発熱や努責の管理などを総合的に行い、患者の訴える安楽と安全を同時に実現する視点が重要です。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:次の文を読み問いに答えよ。 Aさん(53歳、女性)は休日に公園を散歩中、階段から落ちて頭部を強打し、意識を消失した状態で病院に救急搬送された。病院到着時のAさんは開眼せず、声は発しているが理解不能である。痛み刺激には逃れようとする動作がみられる。 この設問は、<前問>の続きの設問となります。 開頭手術後2日、Aさんの全身状態は良好で、硬膜外ドレーンの排液も異常所見はなく経過している。看護師が訪室するとAさんは仰臥位で開眼し、「目が覚めたら病院にいて手術も終えていたので驚きました。今は気分もよいが、寝てばかりで背中が痛くなってきたので体勢を変えたい」と話す。 看護師の対応で適切なのはどれか。
解説:正解は 2 です。術後2日目のAさんは硬膜外ドレーン留置中で、ドレーンの屈曲・抜去予防と適切な排液のためにはベッドアップを最小限に留める必要があります。一方で背部痛を訴え体位変換を希望しているため、安楽への配慮も不可欠です。頭側30度挙上は、頭蓋内圧亢進予防の目的で推奨される角度であり、ドレーンの排液を妨げず背部の除圧にも有効で、最も適切な対応です。
選択肢考察
-
× 1. 仰臥位を保持する。
安楽を訴える患者に対し仰臥位を継続すれば背部痛の持続・褥瘡リスク増加を招く。ドレーン管理と安楽の両立を図るべきで不適切。
-
○ 2. 頭側を30度挙上する。
頭部30度挙上は脳静脈還流を促し頭蓋内圧を下げる体位で、硬膜外ドレーンの排液も妨げず背部の除圧にも有効。安楽と安全の両立に最も適切。
-
× 3. 頭側を60度挙上する。
挙上角度が大きすぎるとドレーンチューブが屈曲しやすく、刺入部への牽引や意図しない排液量変化を招くため不適切。
-
× 4. 頭側を90度挙上する。
端座位に近い90度挙上はドレーン抜去リスクや循環動態の変化、術後の起立性低血圧のリスクが高く、術後2日目としては過剰な体位変更である。
開頭術後に留置される硬膜外ドレーンは、硬膜外腔に貯留する血液や滲出液を排出し、再出血や感染を監視する目的で使用される。管理のポイントは、排液の色調・量・性状の観察(術後1〜2日は血性で徐々に淡血性・漿液性へ)、閉鎖式で逆流防止、設定高さの維持、挙上時のチューブ屈曲防止、抜去事故の予防である。頭部30度挙上は頭蓋内圧管理の標準的体位で、術後全般に応用される。
開頭術後・硬膜外ドレーン留置中の安楽な体位変換について、ドレーン管理と頭蓋内圧管理の両視点から最適な角度を選べるかを問う問題。
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