STEMIの決定打!ST上昇をどう読む?
看護師国家試験 第106回 午後 第115問 / 成人看護学 / 循環器系
国試問題にチャレンジ
Aさん(60歳、男性)は、自宅近くを散歩中に突然の胸痛が出現し、救急車を要請した。救急隊到着時のバイタルサインは、呼吸数28/分、脈拍100/分、血圧80/40mmHgであった。冷汗が著明で、前胸部から左肩にかけての激痛を訴えていた。問診で狭心症( angina pectoris )の既往歴があることが分かった。入院時の検査で急性心筋梗塞( acute myocardial infarction )と診断された。 このときの検査所見として適切なのはどれか。
- 1.心電図のST上昇
- 2.左肺呼吸音の減弱
- 3.クレアチンキナーゼ〈CK〉の下降
- 4.胸部エックス線写真での心陰影の縮小
対話形式の解説
博士
60歳男性のAさんが散歩中に突然の胸痛で救急搬送。血圧80/40、冷汗、前胸部から左肩への放散痛…典型的な症状じゃな。
サクラ
前胸部から左肩への放散痛って、教科書でよく見る心筋梗塞の症状ですね!
博士
その通り。しかも血圧80/40は心原性ショックを疑う数値じゃ。狭心症の既往もあって、急性心筋梗塞と診断された。
サクラ
このときの検査所見で何が特徴的ですか?
博士
まず選択肢1のST上昇を見ていこう。心電図でST上昇は貫壁性心筋虚血の証じゃ。
サクラ
貫壁性って…心筋の厚み全体が虚血になるってことですか?
博士
その通り。冠動脈が完全閉塞して、その支配領域の心筋全層が虚血になるとST上昇が出る。これがSTEMI(ST上昇型心筋梗塞)じゃ。
サクラ
じゃあ閉塞が不完全だとどうなるんですか?
博士
心内膜側だけの虚血となり、ST低下や陰性T波が主で、ST上昇は出ない。これがNSTE-ACS(非ST上昇型急性冠症候群)じゃ。治療方針も違ってくる。
サクラ
STEMIだとどうするんですか?
博士
STEMIは発症12時間以内ならprimary PCI(経皮的冠動脈インターベンション)が第一選択。目標はdoor-to-balloon time 90分以内じゃ。
サクラ
なるべく早く血流を回復させるんですね。選択肢2の左肺呼吸音減弱は?
博士
これは気胸や無気肺の所見じゃな。心筋梗塞で肺うっ血があると両肺で湿性ラ音を聴取することはあるが、左だけ減弱するのは別疾患を疑う。
サクラ
選択肢3のCK下降は?
博士
逆じゃ。心筋壊死でCKは血中に流出して『上昇』する。発症4〜8時間で上がり始め、24時間でピーク、3〜4日で正常化する。
サクラ
他の心筋バイオマーカーは何がありますか?
博士
トロポニンI・T、CK-MB、H-FABP、ミオグロビン、AST、LDHなどじゃ。特にトロポニンが最も感度・特異度が高く、3〜4時間で上昇、1〜2週間持続する。
サクラ
じゃあ早期診断にはトロポニン、再梗塞判定にはCK-MBを見るんですね。
博士
うむ、よく整理できとる。選択肢4の心陰影縮小はどうじゃ?
サクラ
心筋梗塞で心臓が小さくなる…は変ですね。むしろ心機能低下で拡大しそう。
博士
その通り。心拡大、肺うっ血、胸水などが見られることがある。
サクラ
ST上昇がSTEMIの診断の鍵で、即PCIに持ち込む…というのが一連の流れですね。
博士
うむ。それとAさんの血圧80/40は心原性ショックを示唆する。致死率の高い状態で、カテコラミンや機械的循環補助(IABP、ECMO、Impellaなど)も選択肢になる。
サクラ
緊急性の塊ですね…看護師としても迅速な初期対応が求められそう。
POINT
急性心筋梗塞の典型的検査所見は心電図のST上昇(STEMI)、心筋バイオマーカー(トロポニン、CK、CK-MB、H-FABP)の上昇です。STEMIでは発症12時間以内の緊急PCIが第一選択で、door-to-balloon time 90分が目標です。血圧低下や冷汗、ショックを伴う症例では心原性ショックを考え、機械的循環補助も視野に入ります。看護師は迅速なバイタル把握、モニタリング、除細動準備、静脈ライン確保、疼痛管理を同時並行で進める役割を担います。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:Aさん(60歳、男性)は、自宅近くを散歩中に突然の胸痛が出現し、救急車を要請した。救急隊到着時のバイタルサインは、呼吸数28/分、脈拍100/分、血圧80/40mmHgであった。冷汗が著明で、前胸部から左肩にかけての激痛を訴えていた。問診で狭心症( angina pectoris )の既往歴があることが分かった。入院時の検査で急性心筋梗塞( acute myocardial infarction )と診断された。 このときの検査所見として適切なのはどれか。
解説:正解は1です。急性心筋梗塞は冠動脈の急性閉塞により心筋が虚血・壊死する病態で、典型的には貫壁性の心筋虚血を反映してST上昇型心筋梗塞(STEMI)では責任冠動脈領域の誘導でST上昇が出現します。血液検査ではCK・CK-MB・心筋トロポニン(T、I)・H-FABP・AST・LDHが上昇し、特に心筋トロポニンが最も特異的。胸部X線では心陰影拡大や肺うっ血・胸水が出現し得ます。左肺呼吸音の減弱は心筋梗塞に特徴的ではありません。
選択肢考察
-
○ 1. 心電図のST上昇
STEMIでは責任冠動脈領域の誘導でST上昇を認める。急性期診断の中核所見で、冠動脈再灌流療法(PCI)の適応判断に不可欠。
-
× 2. 左肺呼吸音の減弱
心筋梗塞で左肺だけの呼吸音減弱は典型的所見ではない。気胸や無気肺を示唆する所見で、左側の胸痛として鑑別に挙がるが心筋梗塞の特徴ではない。
-
× 3. クレアチンキナーゼ〈CK〉の下降
心筋壊死によりCKは血中に流出し『上昇』する。発症4〜8時間で上昇し始め、24時間前後でピーク、3〜4日で正常化する。
-
× 4. 胸部エックス線写真での心陰影の縮小
心筋梗塞では心機能低下による心拡大、肺うっ血、胸水が出現しうる。心陰影の縮小は起こらない。
ST上昇型心筋梗塞(STEMI)とST非上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)は治療方針が異なる。STEMIは発症12時間以内ならば緊急PCI(primary PCI)が第一選択で、door-to-balloon time 90分以内が目標。心筋バイオマーカーはトロポニンI/Tが最も感度・特異度が高く、発症3〜4時間で上昇し始め24時間でピーク、1〜2週間持続する。CK-MBは再梗塞の判定に有用。血圧80/40mmHgは心原性ショックを疑う数値で、致死率が高く迅速な対応が必要。
急性心筋梗塞の病態と検査所見の基本理解を問う問題。心電図ST上昇は診断・治療選択の鍵。
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