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命が助かった!心リハを安全に進めるコツ

看護師国家試験 第106回 午後 第116問 / 成人看護学 / 循環器系

国試問題にチャレンジ

106回 午後 第116問

Aさん(60歳、男性)は、自宅近くを散歩中に突然の胸痛が出現し、救急車を要請した。救急隊到着時のバイタルサインは、呼吸数28/分、脈拍100/分、血圧80/40mmHgであった。冷汗が著明で、前胸部から左肩にかけての激痛を訴えていた。問診で狭心症( angina pectoris )の既往歴があることが分かった。入院時の検査で急性心筋梗塞( acute myocardial infarction )と診断された。 緊急心臓カテーテル検査で左冠動脈起始部に90%の閉塞を認め、緊急冠動脈バイパス術が行われた。術後5日、集中治療室から一般病棟に転棟した。Aさんは「手術も無事終わって命が助かった。リハビリテーションが大切と聞いたので、頑張って廊下を歩きますよ」と看護師に話した。術後のADL拡大は順調に進み、Aさんは病棟内での200mの歩行が許可されている。胸部症状の出現や心電図の変化は認めない。 Aさんへの心臓リハビリテーションについて適切なのはどれか。

  1. 1.息苦しさが出現したら中止する。
  2. 2.気分の良いときに階段昇降を勧める。
  3. 3.衣服の着脱は家族に介助してもらう。
  4. 4.レジスタンストレーニングを中心に行う。

対話形式の解説

博士 博士

Aさんは左冠動脈起始部90%狭窄に対して緊急冠動脈バイパス術を受け、術後5日で一般病棟に転棟。『頑張って廊下を歩きますよ』と意欲的じゃな。

アユム アユム

気持ちはわかりますが、心配な面もありますね。心臓リハビリテーションってどう進めるんですか?

博士 博士

心リハは心疾患患者の運動耐容能・QOL向上と二次予防を目的とする包括的プログラムじゃ。第Ⅰ相(急性期・入院中)、第Ⅱ相(回復期・外来)、第Ⅲ相(維持期)の3段階がある。

アユム アユム

Aさんは今どの段階ですか?

博士 博士

第Ⅰ相から第Ⅱ相への移行期じゃな。段階的に運動量を増やす時期で、医師・看護師・理学療法士がチームで関わる。

アユム アユム

選択肢1の『息苦しさが出現したら中止する』が正解ですか?

博士 博士

その通り。心リハの中止基準は『胸痛・息切れ・めまい・動悸・極度の疲労・血圧の異常上昇や低下・不整脈の出現』などじゃ。息苦しさは心不全増悪や虚血再発を示唆する重要サインじゃよ。

アユム アユム

運動強度はどう決めるんですか?

博士 博士

理想的には心肺運動負荷試験(CPX)で嫌気性代謝閾値(AT)を測定し、AT相当の運動量を処方する。簡易的にはBorgスケール11〜13『楽である〜ややきつい』を目安にする。

アユム アユム

自分で『ちょっときついな』と感じる程度ですね。選択肢2の階段昇降は?

博士 博士

階段昇降は200m歩行より明らかに負荷が大きい運動じゃ。主治医の許可と段階的な負荷試験を経てから導入する。『気分が良いから』で自己判断するのは不適切。

アユム アユム

選択肢3の衣服着脱介助は?

博士 博士

200m歩行できる段階で衣服着脱は自分で十分可能。過剰介助はかえってADL低下や自立性喪失を招くから好ましくない。

アユム アユム

選択肢4のレジスタンストレーニングは?筋力も大事そうですが…

博士 博士

筋力トレーニングは確かに重要じゃが、術後早期は有酸素運動(歩行)が中心。レジスタンス訓練は病状安定後、回復期以降に低負荷から段階的に導入するものじゃ。

アユム アユム

術直後にいきなり筋トレはダメなんですね。

博士 博士

いきなり重い負荷をかけると血圧上昇や心負荷増加で虚血再発のリスクがある。軽めのゴムチューブやダンベルから段階的に、じゃな。

アユム アユム

心リハってただの運動じゃなくて、包括的プログラムなんですね。

博士 博士

その通り。運動療法だけでなく、食事指導、禁煙、服薬指導、心理的サポート、社会復帰支援なども含む。心リハ参加者は死亡率・再入院率が減ることがエビデンスで示されとる。

アユム アユム

患者さんのセルフモニタリング指導も大事そうですね。

博士 博士

うむ。脈拍の測り方、Borgスケールの使い方、症状出現時の対応を指導し、自分で運動強度を管理できるようにする。退院後も外来心リハや自宅プログラムで継続することが予後改善につながる。

アユム アユム

『頑張る』気持ちを活かしつつ、安全に進めることが看護師の役目ですね。

POINT

心臓リハビリテーションは運動耐容能・QOL向上と二次予防を目的とした包括的プログラムで、運動療法・食事指導・禁煙・服薬・心理支援・社会復帰支援を含みます。術後早期は有酸素運動を中心に段階的に負荷を増やし、胸痛・息切れ・めまい・動悸などの症状出現時は直ちに中止します。運動強度はBorgスケール11〜13、CPXによるAT相当が目安で、患者自身のセルフモニタリングも重要です。心リハ参加は死亡率・再入院率を減らすエビデンスがあり、看護師は多職種チームの要として安全管理と患者教育を担います。

解答・解説

正解は 1 です

問題文:Aさん(60歳、男性)は、自宅近くを散歩中に突然の胸痛が出現し、救急車を要請した。救急隊到着時のバイタルサインは、呼吸数28/分、脈拍100/分、血圧80/40mmHgであった。冷汗が著明で、前胸部から左肩にかけての激痛を訴えていた。問診で狭心症( angina pectoris )の既往歴があることが分かった。入院時の検査で急性心筋梗塞( acute myocardial infarction )と診断された。 緊急心臓カテーテル検査で左冠動脈起始部に90%の閉塞を認め、緊急冠動脈バイパス術が行われた。術後5日、集中治療室から一般病棟に転棟した。Aさんは「手術も無事終わって命が助かった。リハビリテーションが大切と聞いたので、頑張って廊下を歩きますよ」と看護師に話した。術後のADL拡大は順調に進み、Aさんは病棟内での200mの歩行が許可されている。胸部症状の出現や心電図の変化は認めない。 Aさんへの心臓リハビリテーションについて適切なのはどれか。

解説:正解は1です。心臓リハビリテーションは心疾患患者の運動耐容能・QOL向上と二次予防を目的とし、段階的な負荷増加が原則です。運動中に胸部症状(息苦しさ、胸痛)、動悸、めまい、強い疲労感などが出現した場合は直ちに中止し、バイタルサインを確認、医師に報告します。自覚症状は心筋虚血や心機能低下の重要なサインであり、無理をしないことが安全の基本です。

選択肢考察

  1. 1.  息苦しさが出現したら中止する。

    息苦しさは心不全増悪や虚血再発を示唆する重要な症状。心リハの原則として『症状出現時は中止・評価』が基本。自覚症状を指標とする患者自身のセルフモニタリングも指導する。

  2. × 2.  気分の良いときに階段昇降を勧める。

    階段昇降は200m歩行より負荷が大きい運動。主治医の許可と段階的な負荷試験を経て導入すべきで、気分で自己判断するのは不適切。

  3. × 3.  衣服の着脱は家族に介助してもらう。

    200m歩行が可能な段階では衣服着脱は十分自己で可能。過剰介助はADL低下と自立性喪失を招くため不適切。

  4. × 4.  レジスタンストレーニングを中心に行う。

    バイパス術後早期にレジスタンス(筋力)トレーニング中心は負荷が大きすぎる。術後早期は有酸素運動(歩行)を中心に、低負荷から徐々に増やす。レジスタンス訓練は病状安定後に段階的に導入。

心臓リハビリテーションは第Ⅰ相(急性期・入院中)、第Ⅱ相(回復期・外来通院)、第Ⅲ相(維持期・社会復帰後)の3段階に分けられる。運動処方の目安は心肺運動負荷試験(CPX)に基づく嫌気性代謝閾値(AT)レベルで、Borgスケール11〜13『楽である〜ややきつい』が目安。中止基準は『胸痛・息切れ・めまい・動悸・極度の疲労・心拍数の目標超過・血圧上昇/低下・不整脈出現』など。心リハは死亡率・再入院率を減少させ、QOLと予後を改善するエビデンスがある。

冠動脈バイパス術後の心リハにおける運動療法の原則と安全管理を問う問題。段階的負荷増加と症状モニタリングが基本。