大動脈解離の意思決定支援と患者対応
看護師国家試験 第108回 午後 第41問 / 成人看護学 / 循環器系
国試問題にチャレンジ
Aさん(48歳、男性)は、仕事中に生じた胸部と右肩の違和感を主訴に来院した。バイタルサインは安定しているが、スタンフォード分類B型の急性大動脈解離(acute aortic dissection)と診断され、医師から手術を勧められた。 治療の選択で迷っている様子のAさんへの対応で適切なのはどれか。
- 1.「医師からの治療のリスクや合併症の説明で、不明な点はありますか」
- 2.「手術を受けるか受けないか、すぐに決めたほうがよいです」
- 3.「医師の判断に任せるのが一番よいと思います」
- 4.「緊急度が高いので、話はあとにしましょう」
対話形式の解説
博士
今日はAさん48歳男性、スタンフォードB型急性大動脈解離の事例じゃ。バイタル安定で医師から手術を勧められたが治療選択で迷っておる。
サクラ
正解は1の『医師からの治療のリスクや合併症の説明で、不明な点はありますか』ですね。
博士
そのとおり。これはインフォームド・コンセントの原則に沿った対応じゃ。患者が自己決定するには病状・治療・リスクを十分理解することが前提となる。
サクラ
まず疾患から整理したいです。スタンフォード分類とは何ですか。
博士
急性大動脈解離の部位による分類じゃ。A型は上行大動脈に解離があるもので心タンポナーデや大動脈弁逆流を起こしやすく、原則緊急手術。B型は上行大動脈に解離がなく下行大動脈以降に限局するタイプじゃ。
サクラ
B型の治療方針は。
博士
合併症のないB型では血圧コントロールを中心とした保存的治療が第一選択じゃ。収縮期血圧100〜120mmHg目標に降圧し、安静を保つ。破裂や臓器虚血があれば手術やステントグラフト内挿術TEVARを検討する。
サクラ
Aさんはバイタル安定なので即決を迫る状況ではないんですね。
博士
そうじゃ。だから2の『すぐに決めたほうがよいです』は不適切。患者に焦りと不安を与えるだけじゃ。
サクラ
3の『医師の判断に任せるのが一番』はなぜ誤りですか。
博士
治療を決定するのは患者本人、これは自己決定権じゃ。看護師が医師任せを促すのは患者の権利を損なうし、看護師の意見を一方的に押し付けることにもなる。
サクラ
4の『緊急度が高いので話はあとに』は。
博士
バイタルが安定しており対話可能なのに説明を回避するのは、患者の不安を増大させる不適切な対応じゃ。
サクラ
インフォームド・コンセントにおける看護師の役割を詳しく教えてください。
博士
医師の説明を補足する、患者の理解度を確認する、疑問点を整理して医師に橋渡しする、意思決定のプロセスに寄り添う、の4点が中心じゃ。
サクラ
意思決定支援ではどんなアプローチが有効ですか。
博士
患者が何に迷っておるかを傾聴する、情報を整理して提示する、選択肢ごとの利益とリスクを一緒に考える、家族の意向も確認する、十分な時間を確保する、などじゃ。
サクラ
Aさんの場合、仕事や家族との関係も意思決定に影響しそうですね。
博士
そのとおり。48歳男性で現役世代じゃから、仕事復帰の見込みや家族の生活も気になるじゃろう。そうした背景を踏まえて話を聴くのが看護じゃ。
サクラ
急性大動脈解離の看護で他に注意することはありますか。
博士
血圧管理が最重要じゃ。急激な血圧上昇は解離の進展や破裂を招くから、排便時の怒責や精神的興奮を避ける。病状説明も穏やかな環境で行うようにするのじゃ。
サクラ
インフォームド・コンセントと疾患理解をセットで学びました。
POINT
スタンフォードB型急性大動脈解離でバイタル安定のAさんには、保存的治療も選択肢となるため、まず患者の理解度を確認し自己決定を支援することが重要です。正解1はインフォームド・コンセントの原則に沿った対応で、看護師は患者の疑問を整理し医師との橋渡し役を担います。即決強要・医師任せ・対話回避は患者の自己決定権を損なう不適切な対応です。B型解離では血圧管理を中心とした看護と、患者の生活背景を踏まえた意思決定支援が鍵となります。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:Aさん(48歳、男性)は、仕事中に生じた胸部と右肩の違和感を主訴に来院した。バイタルサインは安定しているが、スタンフォード分類B型の急性大動脈解離(acute aortic dissection)と診断され、医師から手術を勧められた。 治療の選択で迷っている様子のAさんへの対応で適切なのはどれか。
解説:正解は 1 です。Aさんはバイタルサインが安定したスタンフォードB型の急性大動脈解離で、治療選択に迷っています。インフォームド・コンセントの観点から、患者が自己決定するためには病状・治療内容・リスクを十分に理解することが前提となります。看護師はまず患者の理解度を確認し、不明点があれば医師と橋渡しする役割を担います。選択肢1はAさんの意思決定を支援する最も適切な対応です。
選択肢考察
-
○ 1. 「医師からの治療のリスクや合併症の説明で、不明な点はありますか」
患者の理解度を確認し、疑問を解消することで自己決定を支援する対応でインフォームド・コンセントの原則に沿います。
-
× 2. 「手術を受けるか受けないか、すぐに決めたほうがよいです」
バイタル安定のB型解離では即決を強要する状況ではなく、患者に焦りや不安を与える不適切な対応です。
-
× 3. 「医師の判断に任せるのが一番よいと思います」
治療を決定するのは患者本人です。自己決定権を尊重せず医師任せを促すのは患者の権利を損ないます。
-
× 4. 「緊急度が高いので、話はあとにしましょう」
バイタルが安定しており対話可能な状況での説明回避は、患者の不安を増大させる不適切な対応です。
急性大動脈解離のスタンフォード分類:A型は上行大動脈に解離があるもので心タンポナーデ・大動脈弁逆流・冠動脈閉塞を起こしやすく、原則として緊急手術(人工血管置換術)の適応。B型は上行大動脈に解離がなく下行大動脈以降に限局するもので、合併症のない症例では血圧コントロールを中心とした保存的治療(降圧安静療法、収縮期血圧100〜120mmHg目標)が第一選択。破裂・臓器虚血・進行性拡大などの合併症があれば手術やステントグラフト内挿術(TEVAR)の適応となる。インフォームド・コンセントは医師の説明義務と患者の自己決定権に基づく手続きで、看護師は理解の確認・補足説明・意思決定支援を担います。
インフォームド・コンセントと意思決定支援、スタンフォードB型急性大動脈解離の治療方針の理解を問う問題です。
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