肝硬変の食事指導で押さえるべきこと
看護師国家試験 第110回 午前 第42問 / 成人看護学 / 消化器・栄養代謝系
国試問題にチャレンジ
Aさん( 50歳、男性)は肝硬変( cirrhosis )と診断され、腹水貯留と黄疸がみられる。 Aさんに指導する食事内容で適切なのはどれか。
- 1.塩分の少ない食事
- 2.脂肪分の多い食事
- 3.蛋白質の多い食事
- 4.食物繊維の少ない食事
対話形式の解説
博士
50歳男性の肝硬変で、腹水と黄疸があるそうじゃ。食事指導で一番大切なのは何かの。
アユム
腹水があるなら塩分制限でしょうか。
博士
その通りじゃ。ナトリウムが溜まると水も一緒に貯留して腹水が悪化する。1日5〜7g程度に抑えるのが目安じゃな。
アユム
脂肪分の多い食事はどうでしょう。
博士
肝臓は胆汁で脂肪の消化を手助けしておるが、肝硬変では胆汁分泌が落ちる。脂肪過多は負担になるから避けたいの。
アユム
蛋白質はたくさん摂ったほうがよさそうな気もしますが。
博士
そこが落とし穴じゃ。蛋白を摂りすぎるとアンモニアが増えて、処理しきれずに肝性脳症を起こしやすくなる。
アユム
なるほど、量に配慮が必要なんですね。食物繊維は制限するべきでしょうか。
博士
逆じゃ。便秘は腸内でアンモニアが吸収されて脳症を悪化させる。食物繊維はむしろ積極的に摂る方がよい。
アユム
便秘予防にラクツロースを使うこともありますよね。
博士
よく知っておるな。腸内環境を整えてアンモニア吸収を抑える狙いがあるのじゃ。
アユム
黄疸がある場合、特別な食事の注意はありますか。
博士
脂溶性ビタミンの吸収が落ちやすいから、ビタミンA・D・E・Kの欠乏に注意じゃ。
アユム
全体として、塩分・脂肪・蛋白を適切にコントロールし、繊維をしっかり摂るイメージですね。
POINT
肝硬変で腹水と黄疸を呈する患者の食事指導では塩分制限が最優先となります。蛋白過多は肝性脳症の誘因、脂肪過多は肝負担の増加、食物繊維の制限は便秘を助長しいずれも不適切です。適度な蛋白・低塩・便通管理を柱とし、状態に応じ分岐鎖アミノ酸製剤やラクツロースを併用します。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:Aさん( 50歳、男性)は肝硬変( cirrhosis )と診断され、腹水貯留と黄疸がみられる。 Aさんに指導する食事内容で適切なのはどれか。
解説:正解は1です。肝硬変で腹水を伴う患者では、体内へのナトリウムと水分の貯留を抑えるため塩分制限が基本となります。通常は1日5〜7g程度に制限し、腹水や浮腫の悪化を防ぎます。
選択肢考察
-
○ 1. 塩分の少ない食事
肝硬変では門脈圧亢進とアルドステロン活性化によりナトリウム貯留が進み腹水が悪化します。塩分制限は腹水・浮腫のコントロールに直結するため最も適切な指導です。
-
× 2. 脂肪分の多い食事
脂肪の消化吸収には胆汁が必要ですが、肝硬変では胆汁生成や脂質代謝能が低下しています。脂肪過多は肝臓への負担や脂肪肝の悪化を招くため不適切です。
-
× 3. 蛋白質の多い食事
蛋白分解により生じたアンモニアは肝で尿素に変換されますが、肝硬変ではこの処理能力が低下します。過剰な蛋白摂取は高アンモニア血症から肝性脳症を誘発する恐れがあります。
-
× 4. 食物繊維の少ない食事
腹水や活動量低下によって便秘になりやすく、便秘は腸内でのアンモニア産生を増やし肝性脳症を誘発します。食物繊維はむしろ積極的に摂取すべきで制限は不適切です。
非代償期の肝硬変では塩分制限(5〜7g/日)、水分管理、適度な蛋白質(0.8〜1.2g/kg/日、脳症があれば分岐鎖アミノ酸製剤を検討)、便秘予防のラクツロース投与が基本です。腹水増悪時は利尿薬や腹腔穿刺、SBPの予防にも留意します。
肝硬変で腹水と黄疸がある患者の食事指導として最優先される塩分制限を問う問題です。
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