便色で読む消化管の状態 タール便は上部消化管出血のサイン
看護師国家試験 第112回 午後 第38問 / 成人看護学 / 消化器・栄養代謝系
国試問題にチャレンジ
便の性状と原因の組合せで正しいのはどれか。
- 1.灰白色便 ―――――― Crohn<クローン>病(Crohn disease)
- 2.鮮紅色便 ―――――― 鉄剤の内服
- 3.タール便 ―――――― 上部消化管出血
- 4.米のとぎ汁様便 ――― 急性膵炎(acute pancreatitis)
対話形式の解説
博士
今日は便の性状と原因疾患じゃ。便は体内の情報の宝庫で、色・形・においから多くのことがわかるぞ。
アユム
タール便って、アスファルトみたいに真っ黒で粘っこい便ですよね?
博士
その通り。血液中のヘモグロビンが胃酸で変性しヘマチンという黒い物質になるから、あのタール状の黒色便になるのじゃ。
アユム
どれくらいの出血量でタール便になるんですか?
博士
およそ50〜100mL以上の上部消化管出血で目視できるようになる。それ以下でも便潜血検査で陽性になることはある。
アユム
原因となる疾患には何がありますか?
博士
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、食道静脈瘤破裂、胃がん、マロリーワイス症候群などじゃ。緊急内視鏡の適応になることも多い。
アユム
鮮紅色便と黒色便の違いは、出血部位の違いなんですね。
博士
そうじゃ。下部消化管(S状結腸より肛門側)からの出血は変性しないので鮮やかな赤色になる。痔核、大腸がん、虚血性大腸炎、憩室出血などが原因。
アユム
鉄剤を飲むと便が黒くなると聞きましたが、出血と区別できるんですか?
博士
鉄剤による黒色便は硫化鉄によるもので、タール便のような粘稠感や悪臭は少ない。病歴と身体所見、便潜血で鑑別する。ビスマス製剤でも黒色便になる。
アユム
灰白色便はどんな病気で出ますか?
博士
胆汁の流れが悪くなる病態じゃ。閉塞性黄疸、胆道閉鎖症、膵頭部がんによる総胆管の圧迫など。新生児の灰白色便は胆道閉鎖症を疑う重要サインじゃ。
アユム
母子手帳にも便色カードが載っていますよね。
博士
その通り。早期発見が予後を大きく左右するからじゃ。米のとぎ汁様便についても触れておこう。
アユム
コレラとかロタウイルスの便ですよね。
博士
そうじゃ。腸上皮が大量の水分と電解質を漏出し、白濁した米のとぎ汁のような便になる。急性膵炎では典型的にはみられん。ただし慢性膵炎では脂肪便が特徴じゃ。
アユム
便の色から多くの情報が得られるんですね。ブリストルスケールも臨床で使いますよね。
博士
そう、便性状を7段階(カチカチのコロコロ便〜水様便)で客観的に表現するツールじゃ。排便ケアのアセスメントに役立つ。便は患者の腸内環境、栄養、消化管疾患の鏡。観察眼を磨くのじゃ。
POINT
便の色調と性状は消化管の状態を知る重要な指標で、タール便(黒色便)は上部消化管出血、鮮紅色便は下部消化管出血、灰白色便は胆汁排泄障害、米のとぎ汁様便はコレラやロタウイルス感染、脂肪便は膵外分泌不全や脂肪吸収障害を示唆します。上部消化管出血ではヘモグロビンが胃酸でヘマチンに変性して黒色となり、粘稠で悪臭を伴うのが特徴です。鉄剤やビスマス製剤でも黒色便が出現しますが、タール便様の粘稠感は少なく、病歴と便潜血で鑑別します。看護師は観察者として便性状の変化を見逃さず、医師への報告やブリストル便性状スケールを用いた記録により、患者の全身状態把握に貢献できます。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:便の性状と原因の組合せで正しいのはどれか。
解説:正解は 3 です。タール便(黒色便)は上部消化管(食道・胃・十二指腸)から出血した血液が、胃酸や腸内細菌により酸化・分解されてヘマチンに変化することで生じる、粘稠で悪臭のある黒色便である。胃潰瘍、十二指腸潰瘍、食道静脈瘤破裂、胃がんなどが主な原因となる。
選択肢考察
-
× 1. 灰白色便 ―――――― Crohn<クローン>病(Crohn disease)
灰白色便は胆汁(ビリルビン)の分泌・排泄障害で生じ、閉塞性黄疸・胆道閉鎖症・膵頭部がん・総胆管結石などが原因。クローン病では血便や粘液便、水様下痢が特徴で、灰白色便は典型所見ではない。
-
× 2. 鮮紅色便 ―――――― 鉄剤の内服
鉄剤内服では吸収されない鉄が硫化鉄となり黒色便を呈する。鮮紅色便は下部消化管(直腸・肛門)からの出血(痔核、直腸がんなど)でみられる。
-
○ 3. タール便 ―――――― 上部消化管出血
上部消化管出血では血液が胃酸で変性し黒色のタール便となる。およそ50〜100mL以上の出血で視認でき、吐下血・貧血・循環動態不安定に注意が必要。
-
× 4. 米のとぎ汁様便 ――― 急性膵炎(acute pancreatitis)
米のとぎ汁様便はコレラ(Vibrio cholerae)やロタウイルス感染症でみられる白濁水様便。急性膵炎では激しい腹痛・悪心嘔吐が主症状で、便性状の特徴的変化は乏しい(慢性膵炎では脂肪便)。
便色は病態把握の重要な手がかりである。主な異常便:黒色タール便(上部消化管出血・鉄剤・ビスマス)、鮮紅色便(下部消化管出血・痔)、灰白色便(胆汁排泄障害)、脂肪便(膵外分泌不全・脂肪吸収障害)、粘血便(赤痢・潰瘍性大腸炎・大腸がん)、米のとぎ汁様便(コレラ・ロタ)。ブリストル便性状スケールでは形状を7段階で分類し、排便アセスメントに用いる。
便の色調・性状から原因疾患を推定する能力を問う問題。上部消化管出血はタール便、下部消化管出血は鮮紅色便、胆道系疾患は灰白色便、という基本パターンを整理しておく。
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