退院前の不安への声かけを学ぼう
看護師国家試験 第103回 午前 第99問 / 老年看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(72歳、女性)は、1人で暮らしている。Aさんは1年前に夫を亡くした後、近所付き合いが少なくなっていた。遠方に住むAさんの息子が時々電話で様子を確認していた。最近は元気がなく、Aさんの息子が心配して様子を見に来たところ、食事を食べた様子がなく、ごみは捨てられていなかった。Aさんは発熱してぐったりしており、息子に連れられて病院を受診した。Aさんは脱水状態の治療と抑うつ状態の疑いのため検査が必要であると判断されて入院した。Aさんの既往歴に特記すべきことはない。 入院後1か月、Aさんは内服治療により病棟内での活動範囲が拡大し、自立してできることが増えた。自宅へ退院することが方針として決まったが、Aさんは「家に帰っても1人だし、大丈夫かしら」と看護師に話す。 このときのAさんへの声かけで適切なのはどれか。
- 1.「薬の量を増やしてもらえるように主治医に相談してみましょう」
- 2.「1人でできることが多くなったからもう大丈夫ですね」
- 3.「心配なことについてゆっくりお聞きしますよ」
- 4.「お疲れのようなのでベッドで休みましょう」
対話形式の解説
博士
Aさんは退院方針が決まったが、家に帰っても1人だし大丈夫かしら、と不安を訴えておるぞ。最初の声かけはどれが適切かな?
サクラ
博士、Aさんはどんな気持ちなんでしょうか?
博士
独居生活への漠然とした不安じゃ。何が不安なのか本人もはっきり整理できておらん可能性が高い。まずは話してもらうことが大切じゃ。
サクラ
正解は何番ですか?
博士
正解は3番、心配なことについてゆっくりお聞きしますよ、じゃ。傾聴の姿勢を示すことで患者が不安を表出しやすくなり、具体的内容が明らかになるんじゃ。
サクラ
1の薬を増やすはダメですか?
博士
活動範囲が拡大し自立も増えており治療効果が出ておる。増量の根拠はなく、不安を薬で解決しようとするのは感情表出の機会を奪う対応じゃ。
サクラ
2の大丈夫ですねは励ましでよさそうですが?
博士
一見良さそうだが、患者の不安を否定して励ますと感情表出を阻害する。表面的な安心づけは不安解決にならず、信頼関係も築けないんじゃ。
サクラ
4のベッドで休みましょうは?
博士
話題を変え感情表出を遮断する対応じゃ。退院後の重要な問題が見過ごされる危険もあるんじゃよ。
サクラ
看護面接の基本技法は?
博士
開かれた質問、傾聴、共感、沈黙の許容じゃ。患者のペースに合わせ、答えを急がせず気持ちが整理されるのを待つことが大切じゃ。
サクラ
Aさんの背景でリスクは?
博士
配偶者喪失後の独居、近所付き合いの希薄化、抑うつ既往と複数のハイリスク要因を抱えておる。退院後の再発予防が重要じゃ。
サクラ
どんな社会資源が使えますか?
博士
地域包括支援センター、訪問看護、配食サービス、デイケアなどじゃ。家族との連携も含め、本人の希望と生活実態に合った支援を組み立てるんじゃ。
サクラ
退院支援は身体面だけじゃないんですね。
博士
その通り。心理社会的側面の評価が不可欠じゃ。Aさんの不安を出発点に、具体的な生活設計と社会資源活用へつなげるのが退院支援の本質じゃよ。
サクラ
傾聴の力を改めて感じました。
博士
よく学んだぞ。看護師が「聴く」ことで、患者は自分の気持ちと向き合い、解決の糸口を見つけられる。これが看護コミュニケーションの基盤じゃ。
POINT
退院前の不安に対する看護師の最初の声かけは、傾聴と感情表出を促すかかわりが基本です。安易な励ましや問題解決の提案は感情表出を阻害し、信頼関係を損ないます。配偶者喪失後の独居高齢者は退院後再発リスクが高く、傾聴を出発点に地域包括支援センターや訪問看護など社会資源の活用を検討する包括的退院支援が必要です。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(72歳、女性)は、1人で暮らしている。Aさんは1年前に夫を亡くした後、近所付き合いが少なくなっていた。遠方に住むAさんの息子が時々電話で様子を確認していた。最近は元気がなく、Aさんの息子が心配して様子を見に来たところ、食事を食べた様子がなく、ごみは捨てられていなかった。Aさんは発熱してぐったりしており、息子に連れられて病院を受診した。Aさんは脱水状態の治療と抑うつ状態の疑いのため検査が必要であると判断されて入院した。Aさんの既往歴に特記すべきことはない。 入院後1か月、Aさんは内服治療により病棟内での活動範囲が拡大し、自立してできることが増えた。自宅へ退院することが方針として決まったが、Aさんは「家に帰っても1人だし、大丈夫かしら」と看護師に話す。 このときのAさんへの声かけで適切なのはどれか。
解説:正解は 3 です。Aさんは自宅退院を前に独居生活への漠然とした不安を表出しています。看護師はまず傾聴と共感により患者の気持ちを十分に受け止め、不安の具体的内容を引き出すことが必要です。これにより患者は自身の不安を整理でき、退院後の具体的な支援(社会資源、家族支援、訪問看護など)の検討にもつながります。安易な励ましや問題解決を急がず、患者の感情表出を促すかかわりが最も適切です。
選択肢考察
-
× 1. 「薬の量を増やしてもらえるように主治医に相談してみましょう」
活動範囲拡大と自立向上が見られ治療効果が出ているため、増量の根拠はありません。患者の不安を薬で解決しようとする対応は、感情表出の機会を奪います。
-
× 2. 「1人でできることが多くなったからもう大丈夫ですね」
患者の不安を否定し励ますことで、感情表出を阻害してしまいます。表面的な安心づけは患者の不安解決にならず信頼関係も築けません。
-
○ 3. 「心配なことについてゆっくりお聞きしますよ」
傾聴の姿勢を示すことで患者は不安を表出しやすくなり、具体的内容が明らかになることで適切な退院支援につなげられます。看護面接の基本姿勢です。
-
× 4. 「お疲れのようなのでベッドで休みましょう」
話題を変え患者の感情表出を遮断する対応で、不安は解消されず信頼関係も損なわれます。退院後の問題が見過ごされる危険があります。
退院支援では患者の身体的回復だけでなく、心理社会的側面(独居・孤立・経済・地域資源など)の評価が不可欠です。Aさんの場合、配偶者喪失後の独居、近所付き合いの希薄化、抑うつ既往というハイリスク要因を有しており、退院後の再発予防のため地域包括支援センターや訪問看護の導入、配食サービス、デイケア、家族との連携を検討します。看護面接では「開かれた質問」「傾聴」「共感」「沈黙の許容」が基本技法です。
抑うつ状態の高齢患者の退院前不安に対する看護師の最初の声かけとして、傾聴と感情表出を促すコミュニケーションの重要性を理解しているかが問われています。
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