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「家に帰ります」への最も適切な関わり

看護師国家試験 第107回 午後 第96問 / 老年看護学 / 状況設定問題

国試問題にチャレンジ

107回 午後 第96問

Aさん( 87歳、男性 )。3年前にAlzheimer< アルツハイマー >型認知症( dementia of Alzheimer type )と診断された。1年前に妻が亡くなってから1人で暮らしている。日常生活は問題なく送れていたが、最近Aさんは薬を飲み忘れることが増えてきたり、電話の応対ができなかったりすることがあり、日常生活に支障が出るようになった。 その後、Aさんは、コンロの火を消し忘れることや、買い物に行って自宅に戻れないことが何度もあり、在宅での生活が困難になったため、介護老人福祉施設に入所した。Aさんは自分の思い通りにならないときに、大声を出して暴れることがあった。時折落ち着かない様子で施設内を徘徊することがあったが、看護師が話しかけると、立ち止まり「散歩しています」と笑顔で話していた。ある日、Aさんがエレベーター前に1人で立っていたため、看護師がどこへ行くのか尋ねると、Aさんは「家に帰ります」と言った。 このときの看護師の対応として最も適切なのはどれか。

  1. 1.「一緒に出かけましょう」としばらく周囲を歩く。
  2. 2.「トイレに行きましょう」とトイレに誘導する。
  3. 3.「転んだら危ないですよ」と車椅子に誘導する。
  4. 4.「入所中なので家には帰れません」と説明する。

対話形式の解説

博士 博士

Aさんがエレベーター前で「家に帰ります」と言うておる。どう対応するのがよいかな?

アユム アユム

一緒に出かけましょうと声をかけて周囲を歩くのが適切です。

博士 博士

正解じゃ。気持ちを否定せず行動に寄り添うのが認知症看護の基本じゃ。

アユム アユム

入所中だから帰れないと説明するのは、かえって興奮を招きますよね。

博士 博士

現実を突きつけると混乱や暴言につながる。説得より納得、否定より共感じゃ。

アユム アユム

トイレに誘導するのも、本人の訴えを無視する形になってしまいます。

博士 博士

尿意がないのに連れていけば不信感を募らせるぞ。

アユム アユム

車椅子に座らせるのは歩く力を奪ってしまいますね。

博士 博士

活動性を奪う対応はBPSDを悪化させやすい。自尊心も傷つけてしまうのじゃ。

アユム アユム

帰宅願望の背景には不安や寂しさがあるんですよね。

博士 博士

そうじゃ。環境変化や身体的な不快感も要因になるから、まず気持ちを受け止めることが大切じゃ。

アユム アユム

バリデーション療法の考え方にも通じますね。

博士 博士

感情に寄り添い安心感を与えることで症状は軽減する。散歩やお茶を一緒に、といった気分転換も有効じゃぞ。

POINT

認知症の方の帰宅願望や徘徊は行動・心理症状の一つで、不安や寂しさ、環境への不適応が背景にあります。看護師は本人の訴えを否定したり説得で封じたりせず、気持ちを受け止め安全を確保しながら気分転換を図る関わりが求められます。一緒に歩く、話題を変える、お茶を提供するといった介入で本人の不安が和らげば帰宅願望は自然に薄れていきます。否定的な説明や安易な車椅子誘導、尿意のないトイレ誘導は症状の悪化や信頼関係の破綻を招くため避けましょう。

解答・解説

正解は 1 です

問題文:Aさん( 87歳、男性 )。3年前にAlzheimer< アルツハイマー >型認知症( dementia of Alzheimer type )と診断された。1年前に妻が亡くなってから1人で暮らしている。日常生活は問題なく送れていたが、最近Aさんは薬を飲み忘れることが増えてきたり、電話の応対ができなかったりすることがあり、日常生活に支障が出るようになった。 その後、Aさんは、コンロの火を消し忘れることや、買い物に行って自宅に戻れないことが何度もあり、在宅での生活が困難になったため、介護老人福祉施設に入所した。Aさんは自分の思い通りにならないときに、大声を出して暴れることがあった。時折落ち着かない様子で施設内を徘徊することがあったが、看護師が話しかけると、立ち止まり「散歩しています」と笑顔で話していた。ある日、Aさんがエレベーター前に1人で立っていたため、看護師がどこへ行くのか尋ねると、Aさんは「家に帰ります」と言った。 このときの看護師の対応として最も適切なのはどれか。

解説:正解は1です。帰宅願望には本人の不安や落ち着かなさが隠れており、気持ちを否定せず受け止めながら別の行動に自然につなげる関わりが適切です。一緒に歩くことで気分転換を図り、時間経過とともに気持ちが切り替わる効果も期待できます。

選択肢考察

  1. 1.  「一緒に出かけましょう」としばらく周囲を歩く。

    本人の意思を尊重しつつ寄り添い、安全を確保しながら気分を変える対応です。散歩という行動に同伴することで帰宅願望が徐々に薄れていきやすく、認知症看護における基本的な受容的関わりに合致します。

  2. × 2.  「トイレに行きましょう」とトイレに誘導する。

    本人の訴えを無視して別の行動に誘導するのは、不安や混乱を増幅させる可能性があります。尿意がない状況での誘導は意思を軽視した対応となり、信頼関係を損ないます。

  3. × 3.  「転んだら危ないですよ」と車椅子に誘導する。

    歩ける方を安易に車椅子に座らせることは活動性を奪い、身体機能の低下や転倒恐怖の強化につながります。Aさんの自尊心を傷つけ行動・心理症状を悪化させる恐れもあります。

  4. × 4.  「入所中なので家には帰れません」と説明する。

    現実を直接突きつける対応は本人の不安を高め、興奮や暴言、暴力を誘発しやすくなります。認知症の方には説得より納得、否定より共感の関わりが原則です。

認知症の方の帰宅願望や徘徊といった行動・心理症状(BPSD)の背景には、不安、寂しさ、環境への不適応、身体的不快感などがあります。バリデーション療法の考え方に基づき、本人の感情を受け止め安心感を与えることで症状は軽減します。安全確保の上で散歩やお茶の提供、関心のある話題に誘うといった気分転換が有効で、否定や説得、身体拘束は避けるべき対応です。

認知症の方の訴えは否定せず共感的に受け止め、安全を確保しながら気分転換を図る関わりが基本です。