認知症高齢者の急性期情報収集 発熱経過の把握
看護師国家試験 第108回 午後 第97問 / 老年看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み問いに答えよ。 Aさん(82歳、女性)は、Alzheimer<アルツハイマー>型認知症(dementia of Alzheimer type)で、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準IIb、要介護で1ある。息子と2人暮らしであったが、1年前から認知症対応型共同生活介護<認知症高齢者グループホーム>に入所している。息子は仕事が忙しいため、2か月に1回面会に来所する。Aさんは2日前から活気がなくなり、食事量も減少した。本日、発熱や下痢を主訴に介護職員に付き添われて外来を受診した。外来の看護師が介護職員に普段の健康状態の把握の方法を尋ねると、1日1回の体温と血圧の測定、月1回の体重測定、レクリエーションへの参加の様子を確認しているという回答を得た。Aさんは、看護師の簡単な質問に答えることができる。 身体所見:体温37.0°C、呼吸数24/分、脈拍72/分、血圧132/82mmHg、呼吸音は異常なし。水様便が3回/日、濃縮尿、手指の冷感あり、顔色は不良。皮膚の乾燥あり。体重45.8kg。 検査所見:Ht40%、白血球9,800/μL、尿素窒素25mg/dL。Na150mEq/L、尿比重1.030。 外来の看護師が介護職員から追加で収集するAさんの情報で、最も優先するのはどれか。
- 1.過去1週間の体温の変動
- 2.昨日の睡眠状態
- 3.全身の皮膚状態
- 4.入所時の体重
対話形式の解説
博士
今日はAさん、82歳のアルツハイマー型認知症の方が発熱と下痢で外来受診した場面じゃ。介護職員から追加で収集する最優先情報を考えよう。
サクラ
選択肢は過去1週間の体温変動、昨日の睡眠状態、全身の皮膚状態、入所時の体重の4つですね。
博士
正解は1番の「過去1週間の体温の変動」じゃ。この情報が病態評価と治療方針決定に直結するんじゃ。
サクラ
なぜ普段の体温との比較が重要なのですか。
博士
高齢者は体温調節機能が低下しておるため、感染症にかかっても発熱反応が鈍くなるんじゃ。平熱が35°C台の人が37°Cなら立派な発熱じゃが、数字だけ見れば見逃される可能性がある。
サクラ
なるほど、基礎体温との比較が大切なんですね。
博士
グループホームでは1日1回体温測定しておる記録があるから、過去1週間の熱型が把握できれば、いつから発症したか、解熱傾向か、高熱が持続しているかなど多くの情報が得られる。
サクラ
Aさんは2日前から活気がなくなり食事量も減っていますね。発熱もそのあたりから始まったのでしょうか。
博士
その推定が可能になる。発症時期と経過の把握は診断の基本じゃ。感染源や感染症の種類、重症度の評価に直結する。
サクラ
検査データを見ると、Na150mEq/L、尿素窒素25mg/dL、尿比重1.030と脱水の所見がありますね。
博士
よく気づいた。特にNa150は高ナトリウム血症じゃ。これは水分喪失優位の高張性脱水を示唆しておる。下痢と経口摂取低下、そして発熱による不感蒸泄増加が原因じゃろう。
サクラ
認知症の方は口渇感の自覚も乏しいですよね。
博士
その通りじゃ。認知症患者は脱水ハイリスク群じゃ。自分で水分摂取する行動がとれず、体調不良を言語化できないため発見が遅れる。
サクラ
2番の昨日の睡眠状態はなぜ優先度が低いのですか。
博士
睡眠は体調変化のサインではあるが、急性期の発熱・下痢・脱水の評価より優先度は低い。後から聴取してよい情報じゃ。
サクラ
3番の全身の皮膚状態は自分で観察できますもんね。
博士
その通り。看護師自身が診察で確認できることを介護職員に聞く必要はない。褥瘡チェックなどは当然行うが、この場面の追加情報としての優先度は低い。
サクラ
4番の入所時の体重は1年前のことですね。
博士
1年前の体重より、直近1ヶ月の体重変化の方が脱水や栄養状態の評価には有用じゃ。入所時体重そのものは優先度が低い。
サクラ
介護施設との連携で押さえるべき情報は何ですか。
博士
普段の状態と現在の変化、発症時期と経過、内服薬、既往歴、ADL水準じゃな。これらを体系的に収集することで、施設と医療機関の情報ギャップを埋めることができる。
サクラ
認知症患者の急性期評価では本人から情報を取りにくいため、施設職員からの情報がとても重要ですね。
博士
その通りじゃ。認知症があっても本人から聞ける情報はあるが、経過や普段の状態は周囲の支援者から得ることが鍵となる。
サクラ
高齢者の発熱評価では平熱との比較を忘れないようにします。
博士
個別性を大切にした情報収集こそが良い看護の基本じゃ。
POINT
高齢認知症患者の急性期評価では、普段の状態との比較が病態把握の鍵となる。特に高齢者は体温調節機能が低下しているため、平熱との比較で発熱を評価することが重要で、施設での体温測定記録は貴重な情報源となる。本症例のNa150mEq/Lは高張性脱水を示唆しており、下痢・発熱・経口摂取低下による水分喪失が背景にある。認知症患者は口渇感の自覚が乏しく脱水ハイリスク群であり、施設職員からの経過情報収集は診断と治療方針決定に直結する。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:次の文を読み問いに答えよ。 Aさん(82歳、女性)は、Alzheimer<アルツハイマー>型認知症(dementia of Alzheimer type)で、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準IIb、要介護で1ある。息子と2人暮らしであったが、1年前から認知症対応型共同生活介護<認知症高齢者グループホーム>に入所している。息子は仕事が忙しいため、2か月に1回面会に来所する。Aさんは2日前から活気がなくなり、食事量も減少した。本日、発熱や下痢を主訴に介護職員に付き添われて外来を受診した。外来の看護師が介護職員に普段の健康状態の把握の方法を尋ねると、1日1回の体温と血圧の測定、月1回の体重測定、レクリエーションへの参加の様子を確認しているという回答を得た。Aさんは、看護師の簡単な質問に答えることができる。 身体所見:体温37.0°C、呼吸数24/分、脈拍72/分、血圧132/82mmHg、呼吸音は異常なし。水様便が3回/日、濃縮尿、手指の冷感あり、顔色は不良。皮膚の乾燥あり。体重45.8kg。 検査所見:Ht40%、白血球9,800/μL、尿素窒素25mg/dL。Na150mEq/L、尿比重1.030。 外来の看護師が介護職員から追加で収集するAさんの情報で、最も優先するのはどれか。
解説:正解は 1 です。Aさんは発熱と下痢を主訴に受診しており、現在の体温37.0°Cが普段と比較してどの程度の上昇なのか、またいつから発熱が始まり経過したのかを把握することが、脱水や感染症の病態評価と治療方針決定に直結します。グループホームでは1日1回の体温測定記録があるため、過去1週間の変動を確認することで熱型や発症時期の推定、解熱の有無など重要な臨床情報が得られます。
選択肢考察
-
○ 1. 過去1週間の体温の変動
発熱を主訴に受診しており、普段の体温と比較した発熱の経過把握は病態評価・鑑別診断・治療方針決定に直結する最優先情報です。熱型の変動から感染症の経過や解熱薬の効果も推定できます。
-
× 2. 昨日の睡眠状態
高齢者の体調変化を示す情報ではありますが、現在の発熱・下痢・脱水といった急性期の病態評価に比べて優先度は低く、後から確認すれば済む情報です。
-
× 3. 全身の皮膚状態
皮膚状態は看護師自身が診察で直接観察できる情報で、介護職員から聞き取る必要性は低いです。褥瘡や皮膚トラブルの把握は重要ですが、この場面で最優先ではありません。
-
× 4. 入所時の体重
入所時の体重は栄養状態の長期評価には有用ですが、急性期の発熱・下痢・脱水の評価には直近の体重変化が重要で、1年前の入所時体重は優先度が低いです。
高齢者は体温調節機能が低下しているため、感染症でも発熱が軽度にとどまることが多く、普段の体温(基礎体温)との比較が極めて重要です。一般的に高齢者では平熱+1°C以上の上昇を発熱と捉えるべきとされます。Aさんの検査所見ではNa150mEq/L(高値)、尿素窒素25mg/dL(軽度高値)、尿比重1.030(高値)、Ht40%(上限近く)と高張性脱水の所見が揃っており、下痢と経口摂取低下による水分喪失が示唆されます。認知症患者では口渇感の自覚が乏しく自ら水分摂取しない傾向があり、脱水を起こしやすいハイリスク群です。介護施設との連携では(1)普段の状態と現在の変化、(2)発症時期と経過、(3)内服薬や併用薬、(4)既往歴とADL水準が重要な収集情報となります。
発熱・下痢で受診した高齢認知症患者の情報収集における優先順位、特に普段との比較で異常を評価する重要性を問う問題です。
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