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入院高齢者のせん妄対応 見当識支援と自己抜去予防

看護師国家試験 第108回 午後 第98問 / 老年看護学 / 状況設定問題

国試問題にチャレンジ

108回 午後 第98問

次の文を読み問いに答えよ。 Aさん(82歳、女性)は、Alzheimer<アルツハイマー>型認知症(dementia of Alzheimer type)で、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準IIb、要介護で1ある。息子と2人暮らしであったが、1年前から認知症対応型共同生活介護<認知症高齢者グループホーム>に入所している。息子は仕事が忙しいため、2か月に1回面会に来所する。Aさんは2日前から活気がなくなり、食事量も減少した。本日、発熱や下痢を主訴に介護職員に付き添われて外来を受診した。外来の看護師が介護職員に普段の健康状態の把握の方法を尋ねると、1日1回の体温と血圧の測定、月1回の体重測定、レクリエーションへの参加の様子を確認しているという回答を得た。Aさんは、看護師の簡単な質問に答えることができる。 身体所見:体温37.0°C、呼吸数24/分、脈拍72/分、血圧132/82mmHg、呼吸音は異常なし。水様便が3回/日、濃縮尿、手指の冷感あり、顔色は不良。皮膚の乾燥あり。体重45.8kg。 検査所見:Ht40%、白血球9,800/μL、尿素窒素25mg/dL。Na150mEq/L、尿比重1.030。 Aさんは入院し、点滴静脈内注射が開始された。Aさんの顔色は良くなり眠っているため、介護職員は施設に戻った。看護師がAさんの様子を確認するため病室へ行くと、目が覚めたAさんは「誰かいないの」と大声を出し、興奮した様子で点滴静脈内注射のラインを外そうとしていた。 看護師の対応で適切なのはどれか。2つ選べ。

  1. 1.睡眠薬を与薬する。
  2. 2.入院中であることを伝える。
  3. 3.興奮が落ち着くまで身体拘束を行う。
  4. 4.息子に退院まで付き添うよう連絡する。
  5. 5.点滴静脈内注射のラインを見えないようにする。

対話形式の解説

博士 博士

今日は入院中のAさんが目覚めて興奮し、点滴ラインを外そうとしている場面じゃ。2つ選ぶ問題じゃよ。

アユム アユム

選択肢は睡眠薬、入院中であることを伝える、身体拘束、息子に付き添い依頼、ラインを見えないようにする、の5つですね。

博士 博士

正解は2と5じゃ。入院中であることを伝えて見当識を支援することと、ラインを隠して自己抜去を予防することが適切な対応じゃ。

アユム アユム

Aさんの状態はせん妄ですか。

博士 博士

その可能性が高い。せん妄は意識の変容、注意障害、見当識障害、興奮などを特徴とする急性の精神症状じゃ。認知症患者は特に起こしやすい。

アユム アユム

せん妄の誘発因子を教えてください。

博士 博士

3大誘発因子があるぞ。身体因子(感染、脱水、低酸素、疼痛、薬剤)、環境因子(入院、暗い病室、拘束、騒音)、精神的因子(不安、孤独)じゃ。Aさんは発熱・脱水と見知らぬ病室という複数の因子が揃っておる高リスク状態じゃ。

アユム アユム

1番の睡眠薬投与はなぜ誤りですか。

博士 博士

特にベンゾジアゼピン系睡眠薬は高齢者で転倒、呼吸抑制、さらにせん妄悪化を招くことが知られておる。薬物介入は非薬物的対応を十分行った後の最終手段じゃ。

アユム アユム

2番の「入院中であることを伝える」が最初の対応なのですね。

博士 博士

その通り。認知症+せん妄では見当識が大きく損なわれる。「ここは病院ですよ、お熱があって治療中です、私は看護師の〇〇です」と繰り返し優しく伝える。これをリアリティ・オリエンテーションと呼ぶんじゃ。

アユム アユム

3番の身体拘束は最終手段ですよね。

博士 博士

厚生労働省の「身体拘束ゼロへの手引き」では、切迫性・非代替性・一時性の3要件を満たす場合のみ許容されるとされておる。現段階ではまず非侵襲的対応を試みるべきじゃ。

アユム アユム

身体拘束は本人の尊厳を傷つけますし、興奮をかえって悪化させますよね。

博士 博士

その通り。拘束によって恐怖・怒りが増し、廃用症候群も進む。三重苦になる。

アユム アユム

4番の息子に付き添い依頼はなぜ不適切ですか。

博士 博士

家族の付き添いは安心感提供に有効じゃが、仕事が忙しい息子に退院まで付き添わせるのは過度な負担じゃ。短時間の面会や電話での声かけなど柔軟な調整を優先する。

アユム アユム

5番のラインを見えないようにするのは、具体的にはどうするのですか。

博士 博士

衣服の袖の下に通したり、包帯やストッキネットで覆ったり、枕元から見えない位置に点滴台を置く工夫じゃ。視界から外すだけで気になる行動が減ることが多い。

アユム アユム

これは身体拘束に該当しないんですね。

博士 博士

ラインを隠すだけなら身体の自由は制限されん。安全策の一つとして推奨される。

アユム アユム

せん妄予防の原則も整理したいです。

博士 博士

誘発因子の是正、見当識支援(時計・カレンダー・家族写真)、早期離床、睡眠覚醒リズム維持、家族面会促進じゃ。特に時計とカレンダーは手軽で効果的じゃ。

アユム アユム

Aさんには何か具体的にできることはありますか。

博士 博士

病室に時計とカレンダーを置く、穏やかな声で繰り返し説明する、家族の写真を置く、夜間も薄明かりを残すなどじゃ。脱水補正も大切じゃよ。

アユム アユム

認知症の方への対応は根気と工夫が必要ですね。

博士 博士

個別性のある非薬物的ケアこそが看護の専門性じゃ。

POINT

入院による環境変化は高齢認知症患者のせん妄の主要誘発因子であり、発熱・脱水などの身体因子と相まって急性混乱を引き起こす。対応の基本は非薬物的アプローチで、繰り返しの見当識支援、ラインや医療機器の視界からの隔離、家族写真や時計・カレンダーの配置などが有効である。身体拘束は切迫性・非代替性・一時性の3要件を満たす最終手段であり、睡眠薬の安易な使用は転倒やせん妄悪化を招くため避ける。看護師は個別性のある非薬物的ケアで患者の尊厳を守りつつ治療継続を支援する。

解答・解説

正解は 2 5 です

問題文:次の文を読み問いに答えよ。 Aさん(82歳、女性)は、Alzheimer<アルツハイマー>型認知症(dementia of Alzheimer type)で、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準IIb、要介護で1ある。息子と2人暮らしであったが、1年前から認知症対応型共同生活介護<認知症高齢者グループホーム>に入所している。息子は仕事が忙しいため、2か月に1回面会に来所する。Aさんは2日前から活気がなくなり、食事量も減少した。本日、発熱や下痢を主訴に介護職員に付き添われて外来を受診した。外来の看護師が介護職員に普段の健康状態の把握の方法を尋ねると、1日1回の体温と血圧の測定、月1回の体重測定、レクリエーションへの参加の様子を確認しているという回答を得た。Aさんは、看護師の簡単な質問に答えることができる。 身体所見:体温37.0°C、呼吸数24/分、脈拍72/分、血圧132/82mmHg、呼吸音は異常なし。水様便が3回/日、濃縮尿、手指の冷感あり、顔色は不良。皮膚の乾燥あり。体重45.8kg。 検査所見:Ht40%、白血球9,800/μL、尿素窒素25mg/dL。Na150mEq/L、尿比重1.030。 Aさんは入院し、点滴静脈内注射が開始された。Aさんの顔色は良くなり眠っているため、介護職員は施設に戻った。看護師がAさんの様子を確認するため病室へ行くと、目が覚めたAさんは「誰かいないの」と大声を出し、興奮した様子で点滴静脈内注射のラインを外そうとしていた。 看護師の対応で適切なのはどれか。2つ選べ。

解説:正解は 2 と 5 です。認知症のあるAさんは見知らぬ場所で目覚めて環境変化によるせん妄や混乱を起こしており、まず現状を繰り返し分かりやすく説明することで見当識を支援する必要があります。また点滴ラインを外そうとしているため、自己抜去予防のためにラインを衣服の下などに隠して視界から外す工夫も有効です。身体拘束や不要な薬物使用は最終手段であり、まず環境調整と安心感の提供で対応します。

選択肢考察

  1. × 1.  睡眠薬を与薬する。

    せん妄のある高齢者に安易に睡眠薬(特にベンゾジアゼピン系)を使用すると、転倒リスク増加、呼吸抑制、せん妄悪化を招く恐れがあります。薬物的介入は非薬物的対応を十分に行った後の最終手段です。

  2. 2.  入院中であることを伝える。

    認知症+せん妄では見当識障害が強く、現在の状況を理解できずに不安・興奮します。「ここは病院で、お熱があって治療中ですよ」など、場所・時間・状況を繰り返し優しく説明することで安心感が得られます。

  3. × 3.  興奮が落ち着くまで身体拘束を行う。

    身体拘束は切迫性・非代替性・一時性の3要件を満たす場合にのみ許容される最終手段です。まず環境調整・声かけ・ライン隠蔽などで対応すべきで、この時点での身体拘束は不適切です。

  4. × 4.  息子に退院まで付き添うよう連絡する。

    家族の付き添いは安心感提供に有効ですが、仕事が忙しい息子に退院まで付き添わせるのは家族に過度な負担を強いるもので適切ではありません。面会や電話での声かけなどの柔軟な調整を検討します。

  5. 5.  点滴静脈内注射のラインを見えないようにする。

    点滴ラインを衣服の袖や包帯で覆って視界から外すことで、気になって引き抜く行動を減らせます。身体拘束に該当しない自己抜去予防策として有効で、まず試みるべき非侵襲的介入です。

入院に伴う環境変化は高齢者のせん妄の主要な誘発因子です。せん妄の3大誘発因子は(1)身体因子(感染、脱水、低酸素、疼痛、薬剤など)、(2)環境因子(入院、暗い病室、拘束、騒音など)、(3)精神的因子(不安、孤独)です。Aさんは発熱・脱水という身体因子と見知らぬ病室という環境因子の両方が揃っており、高リスク状態です。せん妄予防・対応の原則は(1)誘発因子の是正、(2)見当識支援(時計・カレンダー・家族写真・適切な照明)、(3)早期離床とリハビリ、(4)睡眠覚醒リズムの維持、(5)家族との面会促進です。身体拘束は厚生労働省の「身体拘束ゼロへの手引き」で、切迫性・非代替性・一時性の3要件を満たす場合のみ許容される最終手段とされます。

認知症高齢者のせん妄・興奮への対応原則として、見当識支援と非侵襲的な自己抜去予防の重要性を問う問題です。