高齢認知症患者の脱水予防 計画的な水分摂取
看護師国家試験 第108回 午後 第99問 / 老年看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み問いに答えよ。 Aさん(82歳、女性)は、Alzheimer<アルツハイマー>型認知症(dementia of Alzheimer type)で、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準IIb、要介護で1ある。息子と2人暮らしであったが、1年前から認知症対応型共同生活介護<認知症高齢者グループホーム>に入所している。息子は仕事が忙しいため、2か月に1回面会に来所する。Aさんは2日前から活気がなくなり、食事量も減少した。本日、発熱や下痢を主訴に介護職員に付き添われて外来を受診した。外来の看護師が介護職員に普段の健康状態の把握の方法を尋ねると、1日1回の体温と血圧の測定、月1回の体重測定、レクリエーションへの参加の様子を確認しているという回答を得た。Aさんは、看護師の簡単な質問に答えることができる。 身体所見:体温37.0°C、呼吸数24/分、脈拍72/分、血圧132/82mmHg、呼吸音は異常なし。水様便が3回/日、濃縮尿、手指の冷感あり、顔色は不良。皮膚の乾燥あり。体重45.8kg。 検査所見:Ht40%、白血球9,800/μL、尿素窒素25mg/dL。Na150mEq/L、尿比重1.030。 入院後3日。Aさんは開始された食事を全量摂取し、活気が出てきた。Aさんは自ら水分を摂ることはなかったが、看護師がお茶を勧めると、少量ずつ摂取している。体重47kg。Aさんの尿の性状は淡黄色で尿臭はなく、血液検査データは改善して基準値となったため、点滴静脈内注射が中止となり、退院が決まった。 Aさんが外来受診時と同じ状態を起こさないために、看護師が介護職員に伝える予防策で適切なのはどれか。
- 1.室温は30°Cに保つ。
- 2.8g/日の食塩を摂取する。
- 3.カフェインを含む水分を摂取する。
- 4.熱の放散を抑制する衣類を選択する。
- 5.食事を含めて1,300mL/日の水分を摂取する。
対話形式の解説
博士
今日は入院した原因となった脱水を再び起こさないための予防策じゃ。Aさんはグループホームに戻る。
サクラ
選択肢は室温30°C、食塩8g/日、カフェイン摂取、熱放散抑制衣類、水分1,300mL/日の5つですね。
博士
正解は5番の「食事を含めて1,300mL/日の水分を摂取する」じゃ。脱水予防は水分摂取が基本じゃよ。
サクラ
なぜ高齢者は脱水を起こしやすいのですか。
博士
複数の要因があるんじゃ。体内水分量の減少(若年60%→高齢者50%)、口渇感の低下、腎濃縮能の低下、嚥下機能低下、利尿薬の内服などじゃ。
サクラ
認知症があるとさらにリスクが上がりますよね。
博士
その通り。認知症患者は自分から水分を摂る行動が減少する。Aさんも入院中に「自ら水分を摂ることはなかった」と記載されておる。これが脱水の根本原因じゃ。
サクラ
1日の水分必要量はどのくらいですか。
博士
目安は体重1kgあたり30mL程度じゃ。Aさんは47kgだから1日約1,400mL必要となる。食事から600〜800mL摂れるから、飲水で600〜700mL追加する計算じゃ。
サクラ
なるほど、1,300mL/日は妥当な量ですね。では1番の室温30°Cはなぜ誤りですか。
博士
30°Cは高すぎるんじゃ。高齢者の快適な室温は夏26〜28°C、冬20〜22°C。30°Cでは発汗増加による不感蒸泄が増え、脱水を悪化させる。熱中症のリスクも上がるんじゃ。
サクラ
2番の食塩8g/日は多いですね。
博士
女性の食塩摂取目標量は6.5g/日未満じゃ。8gは過剰で、高血圧や心不全のリスクを高める。脱水予防は水分摂取で対応するのが原則じゃ。
サクラ
3番のカフェインは利尿作用がありますね。
博士
カフェインには利尿作用があるから、飲んだ水分量以上に尿が出てしまう。脱水予防には水、麦茶、経口補水液など利尿作用の少ないものが適切じゃ。
サクラ
4番の熱放散抑制衣類はどうでしょう。
博士
熱放散を抑える衣類を選ぶと体温が上がり発汗が増え、かえって脱水を招く。通気性・吸湿性のよい衣類で季節に応じた調整を行うべきじゃ。
サクラ
経口補水液について詳しく教えてください。
博士
経口補水液ORSはナトリウムとブドウ糖のバランスがよく、小腸での水分吸収効率が高い。発熱・下痢・嘔吐時の脱水予防・治療に有効じゃ。ただし健康時に日常的に飲むと塩分過剰になるので使い分けが必要じゃよ。
サクラ
介護施設での水分管理はどうすれば良いですか。
博士
水分摂取チェック表を活用して1日の摂取量を可視化することが推奨されておる。お茶タイム、食事時、レクリエーション後など定時的に水分を提供する工夫が有効じゃ。
サクラ
認知症患者さんには「飲みたい時に飲んで」ではダメなんですね。
博士
その通り。「声かけ+提供」をセットで行う。「一緒にお茶を飲みませんか」と誘う方が効果的じゃ。
サクラ
1日約1,300〜1,400mLを食事+飲水で確保するんですね。
博士
Aさんの体重と活動量を考慮して、介護職員と連携した個別プランが大切じゃ。
サクラ
脱水の早期発見のサインもおさえておきたいです。
博士
口腔内乾燥、皮膚ツルゴール低下、尿量減少・濃縮尿、活気低下、食欲不振などじゃ。これらを日々観察することで早期発見・対応ができる。
サクラ
退院後も施設と医療機関の連携が重要ですね。
博士
継続的な連携こそが再発予防の鍵じゃよ。
POINT
高齢認知症患者は口渇感の低下や自発的水分摂取行動の減少により脱水ハイリスク群である。予防の基本は体重あたり30mL/日を目安とした計画的な水分摂取で、Aさんの場合食事を含めて1,300mL/日程度が適切となる。介護者による定時的な声かけと提供、水分摂取チェック表の活用が有効で、カフェイン飲料や高室温は脱水を悪化させるため避けるべきである。脱水の早期兆候を観察しつつ、施設と医療機関の連携による継続的なケアが再発予防の鍵となる。
解答・解説
正解は 5 です
問題文:次の文を読み問いに答えよ。 Aさん(82歳、女性)は、Alzheimer<アルツハイマー>型認知症(dementia of Alzheimer type)で、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準IIb、要介護で1ある。息子と2人暮らしであったが、1年前から認知症対応型共同生活介護<認知症高齢者グループホーム>に入所している。息子は仕事が忙しいため、2か月に1回面会に来所する。Aさんは2日前から活気がなくなり、食事量も減少した。本日、発熱や下痢を主訴に介護職員に付き添われて外来を受診した。外来の看護師が介護職員に普段の健康状態の把握の方法を尋ねると、1日1回の体温と血圧の測定、月1回の体重測定、レクリエーションへの参加の様子を確認しているという回答を得た。Aさんは、看護師の簡単な質問に答えることができる。 身体所見:体温37.0°C、呼吸数24/分、脈拍72/分、血圧132/82mmHg、呼吸音は異常なし。水様便が3回/日、濃縮尿、手指の冷感あり、顔色は不良。皮膚の乾燥あり。体重45.8kg。 検査所見:Ht40%、白血球9,800/μL、尿素窒素25mg/dL。Na150mEq/L、尿比重1.030。 入院後3日。Aさんは開始された食事を全量摂取し、活気が出てきた。Aさんは自ら水分を摂ることはなかったが、看護師がお茶を勧めると、少量ずつ摂取している。体重47kg。Aさんの尿の性状は淡黄色で尿臭はなく、血液検査データは改善して基準値となったため、点滴静脈内注射が中止となり、退院が決まった。 Aさんが外来受診時と同じ状態を起こさないために、看護師が介護職員に伝える予防策で適切なのはどれか。
解説:正解は 5 です。Aさんは入院の原因となった脱水を予防するため、食事を含めて1日約1,300mL程度の水分摂取を介護職員が意識的に促すことが必要です。認知症患者は口渇感の自覚が乏しく自発的に水分を摂取しない傾向があるため、定時的・定量的な水分提供が重要な予防策となります。
選択肢考察
-
× 1. 室温は30°Cに保つ。
室温30°Cは高すぎます。高齢者の快適な室温は夏季26〜28°C、冬季20〜22°Cとされ、30°Cでは発汗による不感蒸泄が増加し脱水を悪化させます。熱中症のリスクも高まります。
-
× 2. 8g/日の食塩を摂取する。
日本人の食事摂取基準で女性の食塩摂取目標量は6.5g/日未満とされ、8g/日は過剰です。高血圧や心不全のリスクを高め、特に高齢者には不適切です。脱水予防は水分摂取が基本です。
-
× 3. カフェインを含む水分を摂取する。
カフェインには利尿作用があり、水分摂取量以上の尿排泄を招いて脱水を悪化させる可能性があります。脱水予防には水、麦茶、経口補水液など利尿作用の少ない飲料が適切です。
-
× 4. 熱の放散を抑制する衣類を選択する。
熱放散を抑制する衣類は体温上昇と発汗による不感蒸泄増加を招き脱水のリスクを高めます。高齢者には通気性・吸湿性の良い衣類を選択し、室温に応じた調整を行うべきです。
-
○ 5. 食事を含めて1,300mL/日の水分を摂取する。
高齢者の1日水分必要量の目安は体重1kgあたり30mL程度で、Aさん(47kg)では約1,400mLとなります。食事を含めて1,300mL/日は適切な水分摂取量で、計画的な摂取促進が脱水予防の基本です。
高齢者は以下の理由で脱水を起こしやすくなっています。(1)体内水分量の減少(若年成人60%→高齢者50%程度)、(2)口渇感の低下、(3)腎濃縮能の低下、(4)嚥下機能低下、(5)利尿薬などの内服、(6)ADL低下による水分摂取行動の困難。特に認知症患者は自発的に水分摂取しない傾向が強く、介護者による定時的な水分提供が重要です。1日水分必要量の目安は体重×30mL程度(例:47kg→約1,400mL)で、このうち食事から約600-800mL、残りを飲水で補います。経口補水液(ORS)は電解質バランスが良く、発熱・下痢時の脱水予防・治療に有効です。グループホームなど介護施設では「水分摂取チェック表」を活用し、1日の摂取量を可視化して管理する方法が推奨されます。
高齢認知症患者の脱水予防として、適切な水分摂取量と介護者による計画的な提供の重要性を問う問題です。
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