立ちくらみはなぜ起きる?起立性低血圧の仕組みと看護
看護師国家試験 第106回 午前 第74問 / 人体の構造・機能 / 循環器系
国試問題にチャレンジ
起立性低血圧について正しいのはどれか。
- 1.脱水との関連はない。
- 2.高齢者には起こりにくい。
- 3.塩分の過剰摂取によって起こる。
- 4.脳血流の一時的な増加によって生じる。
- 5.自律神経障害を起こす疾患で生じやすい。
対話形式の解説
博士
今回は起立性低血圧について学ぶぞ。急に立ち上がってクラッとしたことはないかの?
アユム
ありますあります!朝、急に立ち上がるとふらっとします。
博士
それが起立性低血圧の軽い症状じゃ。正式には立位で収縮期血圧が20mmHg以上、または拡張期血圧が10mmHg以上下がる状態を言う。
アユム
どうして立つと血圧が下がるんですか?
博士
重力じゃ。立つと血液は下肢にたまってしまう。そのままだと脳に血液が届かなくなるから、体は急いで血圧を上げる仕組みを働かせる。
アユム
どんな仕組みですか?
博士
圧受容器反射じゃ。大動脈弓と頸動脈洞にあるセンサーが血圧低下を察知し、延髄の血管運動中枢に伝える。そこから交感神経が働いて、末梢血管を収縮させ心拍数を上げる。これで血圧が保たれるのじゃ。
アユム
その反射が自律神経ってことですか!
博士
その通り。だからパーキンソン病や糖尿病性神経障害、多系統萎縮症など自律神経が障害される疾患では、起立性低血圧が起こりやすい。
アユム
なるほど、選択肢5の『自律神経障害を起こす疾患で生じやすい』が正解ですね。
博士
正しい!他の選択肢も見てみよう。1の『脱水との関連はない』はどう?
アユム
脱水だと循環血液量が減るから、むしろ起きやすいんじゃないですか?
博士
その通り、誤りじゃ。高齢者は口渇中枢も鈍くて脱水になりやすいから注意じゃ。
アユム
2の『高齢者には起こりにくい』は?
博士
これも逆じゃな。加齢で圧受容器の感受性が低下し、血管も硬くなり、さらに降圧薬や利尿薬を飲んでいることも多い。高齢者こそ起きやすい。
アユム
3の塩分過剰は?
博士
塩分は血圧を上げる方向に働く。治療で適度な塩分摂取を勧めることもあるくらいじゃ。誤り。
アユム
4の『脳血流の一時的な増加』は…逆で減少ですよね。
博士
その通り。立位で下肢に血液がたまって脳血流が減少するから、めまいや失神が起きるのじゃ。
アユム
看護のポイントはありますか?
博士
よい質問じゃ。①起立はゆっくり、臥位→端座位→立位の三段階で。②弾性ストッキングで下肢の静脈還流を助ける。③水分・塩分の適切な摂取。④食後低血圧にも注意。⑤薬剤確認、特に降圧薬・利尿薬・三環系抗うつ薬・α遮断薬じゃな。
アユム
高齢者の転倒予防にも直結する話ですね。
博士
その通り。高齢者の骨折や頭部外傷の原因としても無視できないのじゃ。
POINT
起立性低血圧は、立位で収縮期血圧が20mmHg以上、または拡張期血圧が10mmHg以上低下する病態で、立ちくらみ・めまい・失神を引き起こします。通常は圧受容器反射(大動脈弓・頸動脈洞→延髄→交感神経)で血圧が維持されますが、この反射を担う自律神経が障害される疾患(パーキンソン病、糖尿病性神経障害、多系統萎縮症など)では起立性低血圧が高頻度にみられます。誘因として脱水、加齢、降圧薬・利尿薬・三環系抗うつ薬などがあり、塩分制限や食後の体位にも注意が必要です。看護では、段階的な起立介助、弾性ストッキング、水分・塩分管理、服薬管理を通じて転倒予防につなげることが重要です。
解答・解説
正解は 5 です
問題文:起立性低血圧について正しいのはどれか。
解説:正解は 5 の『自律神経障害を起こす疾患で生じやすい』です。起立性低血圧とは、臥位や座位から立ち上がった際に、収縮期血圧が20mmHg以上、または拡張期血圧が10mmHg以上低下する病態で、立ちくらみ・めまい・失神などを引き起こします。通常は立位になると重力で下肢に血液がたまり、そのままでは脳血流が減少しますが、圧受容器反射(大動脈弓・頸動脈洞→延髄の血管運動中枢→交感神経)によって末梢血管を収縮させ、心拍数を上げて血圧を維持します。この反射機構は自律神経系が中心となって働いているため、パーキンソン病、多系統萎縮症(Shy-Drager症候群)、糖尿病性自律神経障害、脊髄損傷など自律神経障害を伴う疾患では起立性低血圧が起こりやすくなります。
選択肢考察
-
× 1. 脱水との関連はない。
誤り。脱水では循環血液量が減少し、立位時の血圧維持がさらに難しくなるため起立性低血圧を起こしやすい。高齢者や利尿薬使用中の患者で特に注意。
-
× 2. 高齢者には起こりにくい。
誤り。加齢により圧受容器反射の感受性低下、血管壁の硬化、自律神経機能低下、脱水傾向などが重なり、高齢者ほど起立性低血圧が起こりやすい。降圧薬・利尿薬・抗パーキンソン病薬なども誘因となる。
-
× 3. 塩分の過剰摂取によって起こる。
誤り。塩分過剰摂取は循環血液量を増やし血圧を上昇させる方向に働くため、起立性低血圧の誘因ではない。むしろ治療として適度な塩分・水分摂取が推奨される場合もある。
-
× 4. 脳血流の一時的な増加によって生じる。
誤り。起立時に下肢へ血液が移動することで、脳血流は一時的に『減少』する。めまいや失神の原因はこの脳灌流の低下。
-
○ 5. 自律神経障害を起こす疾患で生じやすい。
正しい。圧受容器反射は自律神経系(主に交感神経)が担うため、パーキンソン病、糖尿病性神経障害、多系統萎縮症などで起立性低血圧が高頻度にみられる。
起立性低血圧の診断基準は『立位3分以内に収縮期血圧20mmHg以上、または拡張期血圧10mmHg以上の低下』(2011年ACC/AHA基準)。看護のポイントとしては、①起立時はゆっくり段階的に(臥位→端座位→立位)、②弾性ストッキング着用、③水分・塩分の適切な摂取、④食後低血圧にも注意(食後30分〜1時間以内の立位で症状が出やすい)、⑤降圧薬・利尿薬・三環系抗うつ薬・α遮断薬などの服薬確認。高齢者の転倒・骨折の重要な原因の一つである。
起立性低血圧の病態生理(圧受容器反射と自律神経)と、それに関連する疾患・リスク因子を問う問題。『自律神経が関与する』という一点を押さえれば解ける。
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