扁桃炎の原因菌は?ブドウ球菌と溶連菌の重要ペア
看護師国家試験 第109回 午後 第30問 / 疾病の成り立ちと回復の促進 / 基本的な病因
国試問題にチャレンジ
成人の急性扁桃炎( acute tonsillitis )の原因となる菌はどれか。
- 1.百日咳菌〈 Bordetella pertussis 〉
- 2.黄色ブドウ球菌〈 Staphylococcus aureus 〉
- 3.インフルエンザ菌〈 Haemophilus influenzae 〉
- 4.ヘリコバクター・ピロリ〈 Helicobacter pylori 〉
対話形式の解説
博士
今日は急性扁桃炎の原因菌の問題じゃ。
アユム
扁桃炎って細菌感染なんですか?
博士
実はウイルス性が半数以上じゃ。アデノウイルス、EBウイルス、インフルエンザウイルスなどが代表的じゃ。細菌性ではA群β溶血性連鎖球菌と黄色ブドウ球菌が二大巨頭じゃな。
アユム
A群溶連菌がなぜ重要なんですか?
博士
合併症が怖いからじゃ。リウマチ熱、急性糸球体腎炎、猩紅熱、扁桃周囲膿瘍を起こすことがあり、感染後2〜3週間後に腎炎が発症するのが特徴じゃ。
アユム
診断はどうするんですか?
博士
迅速抗原検査で10分程度で判定できる。臨床所見ではCentor criteria(発熱、咽頭滲出物、前頸部リンパ節腫脹、咳嗽なし)の4項目中2項目以上で疑うのじゃ。
アユム
治療は何ですか?
博士
ペニシリン系抗菌薬が第一選択で、通常10日間投与する。合併症予防のために完全投与が重要じゃ。
アユム
黄色ブドウ球菌はどんな菌ですか?
博士
ヒトの鼻前庭や皮膚に常在するグラム陽性球菌じゃ。皮膚感染症、食中毒、肺炎、敗血症、骨髄炎、そして扁桃炎と多彩な感染症を起こす。
アユム
MRSAもこの菌の仲間ですね。
博士
そうじゃ。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌で、院内感染の代表。接触予防策が必要になる。
アユム
百日咳菌はどういう菌ですか?
博士
Bordetella pertussisじゃな。激しく発作的な咳が長引く病気の原因で、年長児や成人では軽症化するが乳児では致死的になり得る。DPT-IPVワクチンで予防する。
アユム
インフルエンザ菌って、インフルエンザウイルスと違うんですか?
博士
全く別物じゃ。Haemophilus influenzaeは細菌、インフルエンザはウイルス。名前が紛らわしいが、発見時にインフルエンザ流行中の患者から分離されたため命名されたのじゃ。Hibワクチンで髄膜炎が激減した。
アユム
ピロリ菌は胃の疾患ですよね。
博士
そうじゃ。胃粘膜に住み、慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、MALTリンパ腫、胃癌の原因となる。除菌療法で根治可能じゃ。
アユム
扁桃周囲膿瘍ってどんな状態ですか?
博士
扁桃炎が進行し扁桃被膜の外に膿がたまる合併症じゃ。開口障害、含み声、片側の強い痛みが3徴で、切開排膿が必要な救急疾患じゃ。
アユム
ありふれた扁桃炎も、菌を見分ける力とケアの知識が大切なんですね。
POINT
成人の急性扁桃炎の主要細菌はA群β溶血性連鎖球菌と黄色ブドウ球菌で、選択肢中では黄色ブドウ球菌が該当します。A群溶連菌感染は迅速抗原検査で診断し、ペニシリン系10日間投与でリウマチ熱や急性糸球体腎炎などの合併症を予防することが重要です。百日咳菌は気道感染症、インフルエンザ菌は中耳炎・髄膜炎などの原因、ヘリコバクター・ピロリは胃疾患の原因と、それぞれ感染臓器が異なります。扁桃周囲膿瘍など重症化にも注意し、看護師は咽頭所見、嚥下状態、呼吸状態、リンパ節腫脹を丁寧に観察して早期対応につなげる必要があります。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:成人の急性扁桃炎( acute tonsillitis )の原因となる菌はどれか。
解説:正解は 2 の黄色ブドウ球菌です。成人の急性扁桃炎はウイルス性と細菌性がありますが、細菌性の原因としてはA群β溶血性連鎖球菌(GAS)が最も有名で、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌も関与します。選択肢の中で扁桃炎の主要原因菌に該当するのは黄色ブドウ球菌のみであるため、これが正解となります。
選択肢考察
-
× 1. 百日咳菌〈 Bordetella pertussis 〉
百日咳の原因菌で、長引く発作性咳嗽が特徴。気道粘膜に感染するが扁桃炎の主因ではない。ワクチン(DPT-IPV)で予防される代表疾患。
-
○ 2. 黄色ブドウ球菌〈 Staphylococcus aureus 〉
皮膚・鼻腔の常在菌で、急性扁桃炎、皮膚感染症、食中毒、肺炎、敗血症など多彩な感染症を起こす。A群β溶血性連鎖球菌とともに成人の細菌性扁桃炎の主要原因菌である。MRSAの原因菌としても重要。
-
× 3. インフルエンザ菌〈 Haemophilus influenzae 〉
小児では中耳炎、副鼻腔炎、髄膜炎、喉頭蓋炎、肺炎の原因となる。成人の急性扁桃炎の主要原因菌には通常含まれない。Hibワクチン導入で重症感染症は激減した。インフルエンザウイルスとは別物。
-
× 4. ヘリコバクター・ピロリ〈 Helicobacter pylori 〉
胃粘膜に住み着くラセン菌で、慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、胃癌の原因。咽頭・扁桃感染は起こさない。
急性扁桃炎の原因はウイルスと細菌に大別される。ウイルス性はアデノウイルス、EBウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルスなど。細菌性はA群β溶血性連鎖球菌(GAS/化膿レンサ球菌)が最重要で、学童〜若年成人に多い。他に黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、嫌気性菌など。GAS扁桃炎はリウマチ熱、急性糸球体腎炎、猩紅熱、扁桃周囲膿瘍などの合併症があり、迅速抗原検査で診断しペニシリン系で10日間治療するのが標準。Centor criteria(発熱、咽頭滲出物、前頸部リンパ節腫脹、咳嗽なし)はGAS感染の予測に役立つ。扁桃周囲膿瘍は開口障害、含み声、片側強い痛みが特徴で切開排膿が必要。
扁桃炎の主要細菌のうち、選択肢で該当するのが黄色ブドウ球菌のみ。他の選択肢は別臓器の感染症原因菌であることを識別できるか。
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