仮設住宅移行期の幼児ストレスケア
看護師国家試験 第105回 午後 第118問 / 小児看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aちゃん(4歳、男児)は、昨夜の土砂災害によって両親とともに小学校の体育館に避難している。母親は自分の両親の安否が不明なため眠ることができなかった。また、落ち着きがなく感情的になっている。父親はずっと毛布をかぶって横になっている。 Aちゃんの母親は自分の両親と連絡がとれた。避難所生活5日目、親子3人で過ごすことが多くなってきた。Aちゃんの活気がなくなってきている。 避難から3週後、Aちゃん家族は仮設住宅に移動が決定し、両親は忙しくしている。Aちゃんは1人で過ごすことが多く、絵本を持ってぼんやりとしていることが多い。母親からAちゃんの様子がいつもと違うと看護師に相談があった。 母親への対応で最も適切なのはどれか。
- 1.引っ越しすることを説明するよう促す。
- 2.スキンシップの時間を増やすように促す。
- 3.すぐに専門医の外来を受診するよう促す。
- 4.子どもの反応は母親の関わりが原因だと話す。
対話形式の解説
博士
災害から3週後、Aちゃん家族は仮設住宅への移動が決定し両親は多忙。Aちゃんは一人でぼんやり絵本を持つ時間が増え、母親から相談があった。さて最も適切な対応は?
アユム
3週間が経って、状況が変わってきていますね。
博士
そうじゃ。避難所から仮設住宅へというフェーズは、一見改善に向かう時期じゃが、親が実務で忙殺されて子どもとの関わりが減りやすい落とし穴があるんじゃ。
アユム
Aちゃんは活気がなく一人で過ごす時間が多いんですね。
博士
そこが問題じゃ。4歳児の情緒的な支えは、信頼できる大人との関わりの質と量で決まる。両親が忙しくて関わりが減ると、不安は潜在化して『ぼんやり』『活気低下』『遊ばない』といった形で現れるんじゃ。
アユム
ではどういう介入が効果的なんでしょう?
博士
幼児に最も効くのは言葉より身体接触じゃ。抱っこ、手をつなぐ、添い寝、膝の上で絵本を読む。こうしたスキンシップはオキシトシン分泌を促し、親子双方の自律神経を安定させる。愛着の再確認にもなる。
アユム
オキシトシンは『愛情ホルモン』とも言われますよね。
博士
そう、触れあいで分泌が増え、不安・抑うつを和らげる作用がある。科学的にも裏付けのある介入じゃ。短時間でも意識的に触れあう時間を作ることが大事じゃよ。
アユム
では選択肢を見ていきます。選択肢1の『引っ越しの説明を促す』は?
博士
発達段階に応じた環境変化の説明は大切じゃが、今はそれより情緒の安定が先決じゃ。説明だけではぼんやりの改善にならん。
アユム
選択肢2の『スキンシップの時間を増やす』が正解ですね。
博士
そのとおり。家庭内で今日から実行でき、親子双方のストレス軽減に直結する。母親にも具体的で取り入れやすい助言じゃ。
アユム
選択肢3の『すぐに専門医の外来を受診するよう促す』は?
博士
現段階は災害後の正常なストレス反応の範囲内で、まず家族ケアで様子をみる段階じゃ。即時受診は過剰対応で母親の不安も煽る。ただし1か月以上持続したり生活に支障が出る場合は児童精神科やDPATへ紹介を検討する。
アユム
選択肢4の『子どもの反応は母親の関わりが原因だと話す』は?
博士
これは絶対禁忌じゃ。母親も被災者で自分のことで精一杯な中、責める発言は罪責感とストレスを増大させ親子関係を壊す。支援の原則は『保護者を支えることで子どもを支える』じゃよ。
アユム
母親を責めないことが大事なんですね。むしろ労う視点が必要ですね。
博士
そうじゃ。母親に『大変な中よくがんばっていますね』『短い時間でも触れあう時間を作ってみましょう』と具体的かつ温かく助言する。母親が孤立した気持ちにならないよう寄り添うんじゃ。
アユム
親が安定すれば子どもも安定するんですね。
博士
まさにそれじゃ。災害精神保健の合言葉じゃ。親子関係そのものが最大の治療資源じゃから、保護者支援なくして子ども支援はない。専門医紹介の判断基準は症状の『持続』『強度』『生活への支障』じゃから覚えておきなさい。
アユム
災害時の子どものケアは、環境・遊び・スキンシップ・家族支援を総合的に考える必要があるんですね。
博士
そのとおり。そして時期ごとに支援の重点が変わる。急性期は安全確保、避難所期は遊びの場、仮設移行期は家族の関わり再構築、復興期は生活再建と学校復帰の支援。段階に応じた支援が看護師の腕の見せ所じゃよ。
POINT
災害3週後の仮設住宅移行期は両親が多忙で親子の関わりが減りやすい時期です。4歳児のAちゃんが活気を失いぼんやり過ごす姿には、スキンシップを増やして安心感を取り戻すことが最も適切な助言です。オキシトシン分泌を通じて親子双方のストレスを軽減できます。即時の専門医受診や母親を責める対応は不適切で、1か月以上症状が持続する場合に児童精神科などへ紹介します。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aちゃん(4歳、男児)は、昨夜の土砂災害によって両親とともに小学校の体育館に避難している。母親は自分の両親の安否が不明なため眠ることができなかった。また、落ち着きがなく感情的になっている。父親はずっと毛布をかぶって横になっている。 Aちゃんの母親は自分の両親と連絡がとれた。避難所生活5日目、親子3人で過ごすことが多くなってきた。Aちゃんの活気がなくなってきている。 避難から3週後、Aちゃん家族は仮設住宅に移動が決定し、両親は忙しくしている。Aちゃんは1人で過ごすことが多く、絵本を持ってぼんやりとしていることが多い。母親からAちゃんの様子がいつもと違うと看護師に相談があった。 母親への対応で最も適切なのはどれか。
解説:正解は 2 です。災害後3週の時点で、両親が仮設住宅準備で多忙になりAちゃんが一人でぼんやり過ごす状況は、親子の関わりが相対的に減り安心感を得にくい状態です。4歳児にとって最も有効なストレスケアは、信頼できる大人(特に母親)との身体接触・温かい関わりによって安心感を取り戻すことです。スキンシップ(抱っこ・手をつなぐ・添い寝・絵本の読み聞かせなど)の時間を増やすことは、愛着の再確認と自律神経の安定を促し、子どものストレス反応を和らげる最も適切な助言です。
選択肢考察
-
× 1. 引っ越しすることを説明するよう促す。
仮設住宅への移動説明は発達に応じて必要ですが、現在の最優先課題はAちゃんのストレス反応への対応です。説明を促すだけではぼんやりとした様子の改善にはつながりません。
-
○ 2. スキンシップの時間を増やすように促す。
幼児の不安・ストレス反応には、信頼できる大人との身体接触が最も効果的な安心材料です。抱っこ・添い寝・読み聞かせなどを通じて愛着の再確認を行い、自律神経の安定と情緒の回復を促せます。
-
× 3. すぐに専門医の外来を受診するよう促す。
現段階のAちゃんの反応は災害後の正常なストレス反応の範囲で、まず家族ケアで様子をみる段階です。反応が長期化・悪化した場合は専門機関につなぎますが、即時受診は過剰対応で母親の不安も助長します。
-
× 4. 子どもの反応は母親の関わりが原因だと話す。
被災・忙殺の中にある母親を責める発言は母親のストレスと罪責感を増大させ、親子関係にも悪影響を及ぼします。支援の原則は保護者を支えることにあり、非難は禁忌です。
災害後の家族支援では『親が安定すれば子どもも安定する』という原則が重要です。スキンシップはオキシトシン分泌を促し、親子双方のストレス軽減に役立ちます。母親への助言は『短時間でもいいから意識的に触れあう時間を作る』『絵本の読み聞かせ』『就寝前の添い寝』など具体的で実行可能なものにします。1か月以上ストレス反応が持続する場合はPTSDを疑い、児童精神科や災害派遣精神医療チーム(DPAT)への紹介を検討します。
災害3週後の幼児のストレス反応に対し、専門医受診や原因追及ではなくスキンシップという家庭内で実行可能な介入を助言できるかを問う問題です。
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