思春期の女の子を苦しめる満月様顔貌──それでも飲み続ける理由
看護師国家試験 第106回 午後 第97問 / 小児看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
Aちゃん(11歳、女児)。眼瞼浮腫がみられたため、眼科を受診し治療を受けたが改善しなかった。その後、Aちゃんと母親が下腿の浮腫に気付き眼科の医師に相談したところ、特発性ネフローゼ症候群( idiopathic nephrotic syndrome )を疑われたため、小児科のある病院を紹介され受診した。 Aちゃんは、ステロイド治療の開始後10日で尿蛋白が陰性となり、浮腫等の症状が改善した。入院後3週、ステロイド薬の副作用(有害事象)として、満月様顔貌が出現している。他に明らかな副作用(有害事象)は出現していない。ステロイド薬の内服を続けながら退院することになった。 Aちゃんの退院後の生活について指導する内容で適切なのはどれか。
- 1.日光を避ける。
- 2.体重の測定は毎日行う。
- 3.1か月は学校を欠席する。
- 4.入浴ではなくシャワー浴とする。
- 5.満月様顔貌が気になる場合もステロイド薬の内服を続ける。
対話形式の解説
博士
Aちゃんの退院前指導じゃ。ステロイド治療開始10日で尿蛋白が陰性化し、浮腫も改善。入院3週目には満月様顔貌(ムーンフェイス)が出てきた。
サクラ
思春期の女の子に満月様顔貌は辛いですね…。
博士
うむ、心理的負担は大きい。だからこそ医療者が事前に『可逆的な変化じゃ』と説明し、自己中断を防ぐ必要がある。
サクラ
選択肢5の『満月様顔貌が気になる場合もステロイドの内服を続ける』が答えですね。
博士
その通り。自己判断で中止・減量すると2つの危険がある。ひとつは疾患の再燃、もうひとつはステロイド離脱症候群(副腎不全)じゃ。
サクラ
離脱症候群ってどんな症状ですか?
博士
発熱、倦怠感、嘔気、食欲不振、血圧低下、低血糖、時にショック。長期内服で副腎が萎縮しておるため、外から補充していたステロイドを急に切ると副腎機能が追いつかなくなる。
サクラ
だから漸減(tapering)しながら止めるんですね。
博士
その通り。必ず医師の指示に従って少しずつ減量する。
サクラ
選択肢1の日光を避けるはなぜダメなんですか?
博士
ステロイドと強い光線過敏の関連は通常ない。全身性エリテマトーデス(SLE)など膠原病では日光過敏がテーマになるが、ネフローゼ症候群のプレドニゾロン内服では違う。
サクラ
選択肢2の毎日の体重測定は?
博士
急性期では浮腫管理のため毎日必要じゃが、寛解後は週1~2回で十分。むしろ食欲亢進による肥満傾向の把握が主目的になる。
サクラ
選択肢3の1か月学校休みは?
博士
寛解して退院する段階なので学校復帰が基本。易感染性は確かにあるから麻疹や水痘の流行期には注意が必要じゃが、画一的に1か月休むのは不適切じゃ。
サクラ
感染対策は具体的に何をしますか?
博士
手洗い・うがい・マスク、感染者との接触回避、予防接種の計画的実施。特に麻疹・水痘患者と接触したら速やかに受診じゃ。
サクラ
選択肢4のシャワー浴のみも×なんですね。
博士
ステロイド内服中でも入浴は可能。公衆浴場は感染リスクを避ける意味で控える程度でよい。
サクラ
ステロイドの副作用って他に何がありましたっけ?
博士
①易感染性②満月様顔貌・中心性肥満③食欲亢進・高血糖(ステロイド糖尿病)④骨粗鬆症⑤消化性潰瘍⑥精神症状(不眠・興奮)⑦緑内障・白内障⑧成長障害(小児)⑨副腎抑制、この9つは必修じゃ。
サクラ
小児特有の成長障害も重要ですね。
博士
その通り。身長の伸びが一時的に抑えられるが、寛解維持しステロイドを減量・中止すればキャッチアップ成長が期待できる。
サクラ
思春期女子にとって、満月様顔貌って本当に大きな悩みだと思います。精神的なサポートも必要ですね。
博士
そうじゃ。『減量したらきれいに戻るよ』『いまは病気を治すことを最優先に』と本人と家族を支える言葉かけ、心理面のケアも看護の大切な役割じゃ。
サクラ
なるほど。生活指導と心のケアをセットで考える必要があるんですね。
POINT
小児ネフローゼ症候群でステロイド治療中に退院する際、最も重要な指導は『自己判断でステロイドを中断・減量しない』ことです。自己中断は疾患の再燃だけでなく副腎不全による離脱症候群(倦怠感・血圧低下・低血糖など)を招く危険があります。思春期女児にとって満月様顔貌は心理的負担が大きい副作用ですが、ステロイド減量に伴い可逆的に改善することを丁寧に説明し、服薬継続の動機づけと心理面のサポートを併行して行います。易感染性への対策(手洗い・うがい・感染者との接触回避)や、減量計画、感染時の早期受診なども含めた包括的な退院指導が、小児ネフローゼの長期管理では不可欠です。
解答・解説
正解は 5 です
問題文:Aちゃん(11歳、女児)。眼瞼浮腫がみられたため、眼科を受診し治療を受けたが改善しなかった。その後、Aちゃんと母親が下腿の浮腫に気付き眼科の医師に相談したところ、特発性ネフローゼ症候群( idiopathic nephrotic syndrome )を疑われたため、小児科のある病院を紹介され受診した。 Aちゃんは、ステロイド治療の開始後10日で尿蛋白が陰性となり、浮腫等の症状が改善した。入院後3週、ステロイド薬の副作用(有害事象)として、満月様顔貌が出現している。他に明らかな副作用(有害事象)は出現していない。ステロイド薬の内服を続けながら退院することになった。 Aちゃんの退院後の生活について指導する内容で適切なのはどれか。
解説:正解は 5 です。ステロイド薬の自己中断は離脱症候群(副腎不全:倦怠感・嘔気・血圧低下・低血糖など)を招き、さらにネフローゼ症候群の再燃リスクを高める。満月様顔貌はステロイド減量に伴い徐々に改善する可逆的な副作用であり、思春期女子にとって心理的負担は大きいが、自己判断での減量・中止は厳禁であることを本人・家族に丁寧に伝える。
選択肢考察
-
× 1. 日光を避ける。
プレドニゾロン内服と強い光線過敏は通常関連しない。SLEなど膠原病とは別。ただし感染予防の観点での手洗い・うがいは重要。
-
× 2. 体重の測定は毎日行う。
急性期は浮腫と尿量管理のため毎日測定するが、寛解後の退院生活で毎日必須ではない。週1~2回程度の体重チェックで十分で、むしろ食欲亢進による肥満傾向の把握が目的となる。
-
× 3. 1か月は学校を欠席する。
寛解後は通学可能。易感染性があるため手洗い・うがい・麻疹/水痘患者との接触回避など感染予防は必要だが、画一的な長期欠席は社会的・心理的に不適切。
-
× 4. 入浴ではなくシャワー浴とする。
ステロイド内服中でも入浴制限はない。感染予防のため公衆浴場を避ける程度の配慮は状況により。
-
○ 5. 満月様顔貌が気になる場合もステロイド薬の内服を続ける。
自己判断での中止は離脱症候群と疾患再燃を招く。満月様顔貌は減量につれ改善する可逆的変化であり、医師の指示通り服薬継続を最優先に指導する。
ステロイド薬(糖質コルチコイド)の主な副作用:①易感染性②満月様顔貌・中心性肥満③食欲亢進・高血糖(ステロイド糖尿病)④骨粗鬆症⑤消化性潰瘍⑥精神症状(不眠・興奮)⑦緑内障・白内障⑧成長障害(小児)⑨副腎機能抑制。特に長期内服後の急激な中止は副腎不全クリーゼを起こすため、必ず漸減(tapering)する。小児ネフローゼでは生ワクチン接種は主治医と相談の上、免疫抑制度に応じて検討する。麻疹・水痘患者との接触時は速やかに受診・予防投与を検討。
ステロイド内服中の小児への退院指導で、最も強調すべきは『自己中断しない』こと。副作用の種類と離脱症候群の概念を押さえる問題。
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