重症心身障害児の誤嚥性肺炎予防!他動的にできるケアとは
看護師国家試験 第106回 午後 第108問 / 小児看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
Aちゃん(6歳、女児)は、重症の新生児仮死で出生した。誤嚥性肺炎( aspiration pneumonia )で入退院を繰り返しているため、今回の入院で経鼻経管栄養法を導入し、退院後は週1回の訪問看護を利用することになった。現在は四肢と体幹の著しい運動障害があり、姿勢保持が困難で、移動および移乗は全介助である。声かけに笑顔はみられるが、指示に応じることはできない。 訪問看護師は、Aちゃんの誤嚥性肺炎( aspiration pneumonia )を予防するケアの方法を母親に指導することにした。 母親が行うAちゃんへのケアとして適切なのはどれか。
- 1.腹式呼吸を促す。
- 2.咳嗽の訓練を行う。
- 3.胸郭可動域の訓練を行う。
- 4.含嗽液を用いてうがいをさせる。
対話形式の解説
博士
前回のAちゃんの続きじゃ。誤嚥性肺炎予防のために母親が実施できるケアが今回のテーマじゃ。
アユム
Aちゃんは指示に応じられないんですよね。呼吸訓練って本人の協力が必要じゃないですか?
博士
よい視点じゃ。その点が選択肢を絞る鍵になる。まず『腹式呼吸を促す』はどうじゃ?
アユム
横隔膜を意識的に使う呼吸ですよね。本人が理解して協力しないとできないです。
博士
正解じゃ。指示理解が必要なため実施不能じゃな。
アユム
『咳嗽の訓練』も同じですよね。深呼吸してから強く吐き出すよう指示しても応じられないですし。
博士
その通り。随意的な協力が必須のため実施できん。代わりに吸引や体位排痰法で対応することになる。
アユム
『含嗽液を用いてうがいをさせる』は?
博士
含嗽も液体を口に含んで吐き出す随意動作が必要じゃ。Aちゃんの場合はむしろ誤嚥リスクが高まるため危険じゃな。
アユム
では口腔ケアはどうするんですか?
博士
スポンジブラシや口腔ケア用ウェットティッシュで他動的に清拭する方法を取る。これなら協力なしで家族が実施できる。
アユム
残る『胸郭可動域の訓練』が正解ですね。
博士
その通りじゃ。介助者が他動的にAちゃんの胸郭を左右や前後に動かし、柔軟性を保ちながら換気量増大と排痰促進を図る。
アユム
具体的にはどうやって行うんですか?
博士
呼気相に軽く胸郭を圧迫する『スクイージング』や、バイブレーションを加える『呼吸介助法』などを組み合わせる。理学療法士の指導を受けながら母親が習得する。
アユム
重症心身障害児の誤嚥性肺炎予防は他にどんな方法がありますか?
博士
ポイントは①他動的口腔ケア、②体位ドレナージ、③胸郭可動域訓練、④経管栄養時の体位と速度管理、⑤分泌物の適切な吸引、⑥予防接種などの感染予防、じゃな。
アユム
重症児は側弯もあって胸郭が硬くなりやすいですよね?
博士
よい着眼じゃ。体幹の運動障害で胸郭の柔軟性が低下し、側弯や胸郭変形も起こりやすい。これらは換気効率を下げ誤嚥性肺炎のリスクを高める。
アユム
だから他動的な胸郭訓練で柔軟性を維持することが重要なんですね。
博士
その通り。重症児ケアでは患児の協力度を見極め、家族が継続実施可能な他動的ケアを選ぶことが看護師の重要な判断じゃ。
アユム
患児の状態を踏まえて実施可能性で考える視点が身につきました!
POINT
重症心身障害児の誤嚥性肺炎予防では、患児の指示理解や協力度に応じて実施可能なケアを選択することが重要です。指示に応じられないAちゃんの場合、腹式呼吸・咳嗽訓練・含嗽など随意的協力を要する方法は実施不能となり、介助者が他動的に行える胸郭可動域訓練が母親への指導内容として最適です。胸郭可動域訓練は胸郭の柔軟性維持、換気量増大、排痰促進を通じて誤嚥性肺炎を予防します。加えて他動的口腔ケア、体位ドレナージ、経管栄養時の体位管理、適切な吸引、予防接種なども包括的に組み合わせ、家族が無理なく継続できるケア計画を立てることが訪問看護師の役割です。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:Aちゃん(6歳、女児)は、重症の新生児仮死で出生した。誤嚥性肺炎( aspiration pneumonia )で入退院を繰り返しているため、今回の入院で経鼻経管栄養法を導入し、退院後は週1回の訪問看護を利用することになった。現在は四肢と体幹の著しい運動障害があり、姿勢保持が困難で、移動および移乗は全介助である。声かけに笑顔はみられるが、指示に応じることはできない。 訪問看護師は、Aちゃんの誤嚥性肺炎( aspiration pneumonia )を予防するケアの方法を母親に指導することにした。 母親が行うAちゃんへのケアとして適切なのはどれか。
解説:正解は 3 です。Aちゃんは四肢体幹の著しい運動障害と姿勢保持困難があり、指示に応じることができない。このため腹式呼吸・咳嗽訓練・含嗽などの随意的な協力を要する呼吸訓練は実施不可能である。胸郭可動域訓練は介助者が他動的にAちゃんの胸郭を動かし、胸郭の柔軟性保持と換気量増大、排痰促進を図ることができ、母親が家庭で実施可能なケアとして最適である。
選択肢考察
-
× 1. 腹式呼吸を促す。
腹式呼吸は横隔膜を意識的に使う呼吸法で患者本人の協力が不可欠。Aちゃんは指示に応じられないため実施不能。
-
× 2. 咳嗽の訓練を行う。
咳嗽訓練は随意的な深呼吸と強制呼出の協力が必要。Aちゃんは指示理解ができず実施不能。吸引や体位排痰法が代替手段となる。
-
○ 3. 胸郭可動域の訓練を行う。
他動的に胸郭を圧迫・弛緩させる訓練で、介助者が実施可能。胸郭の柔軟性維持、換気量増大、排痰促進に有効で、誤嚥性肺炎予防のリハビリテーションとして適切。
-
× 4. 含嗽液を用いてうがいをさせる。
含嗽は口腔内に液体を保持し吐き出す随意動作が必要で、指示理解できないAちゃんには誤嚥の危険が高く実施不能。口腔ケアはスポンジブラシや口腔ケア用ウェットティッシュによる他動的清拭で行う。
重症心身障害児の誤嚥性肺炎予防は、①口腔ケア(他動的清拭)、②体位ドレナージ、③胸郭可動域訓練、④経管栄養時の体位と注入速度管理、⑤唾液・分泌物の適切な吸引、⑥感染予防(予防接種)が柱となる。胸郭可動域訓練は介助者が胸郭を左右や前後に他動的に動かし、呼気相に軽く圧迫する『スクイージング』、呼気相にバイブレーションを加える『呼吸介助法』なども組み合わせる。重症児では胸郭の柔軟性低下や側弯による換気効率低下が起こりやすく、他動的訓練で予防する意義が大きい。
重症心身障害児における誤嚥性肺炎予防で、患児の協力度に応じた実施可能なケアを選べるかを問う問題。
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