「吸入が面倒くさい」を笑わない――思春期喘息児のセルフケア支援
看護師国家試験 第112回 午後 第105問 / 小児看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み問いに答えよ。 A君(11歳)は両親と3人で暮らしている。5歳で気管支喘息(bronchial asthma)と診断され、現在は抗アレルギー薬とステロイドの吸入薬が処方されている。本日、学校から帰ってきた後から咳嗽がみられ元気がなかった。夕食はあまり食べずに就寝した。夜間になり「苦しくて眠れない」と訴え、母親と救急外来を受診した。口元での喘鳴が著明であり、問診すると途切れ途切れに話した。受診時のバイタルサインは、体温36.9℃、呼吸数32/分、心拍数120/分、経皮的動脈血酸素飽和度<SpO 2 >92%(room air)であった。 この設問は、<前問>の続きの設問となります。 A君は1年前から気管支喘息(bronchial asthma)の急性増悪<発作>を起こして救急外来の受診を繰り返していることが分かった。看護師がA君に今の症状に対する認識を確認すると「喘息発作が起きていて、家で吸入をしても治まらなかった」と答えた。学校生活や服薬については「学校は好きだけど、体育は嫌だな。吸入が面倒くさい。吸入しなくても発作が起きなければいいんでしょ」と話した。看護師は、急性増悪<発作>を繰り返しているA君のセルフケアへの支援をする必要があると考えた。 A君への看護師の対応で最も適切なのはどれか。
- 1.毎日運動するよう勧める。
- 2.お薬手帳を持ち歩くよう伝える。
- 3.A君と服薬管理について話し合う。
- 4.喘息発作があったことを母親から担任の先生に伝えるよう提案する。
対話形式の解説
博士
A君は発作を繰り返して救急受診を続けておる。そして「吸入しなくても発作が起きなければいいんでしょ」と話している。どう思う?
サクラ
症状がないときは薬をやめてもいい、と思ってそうですね。
博士
そうじゃ。これは喘息のコントローラーとリリーバーの区別がついていない証拠じゃ。
サクラ
コントローラーとリリーバーって何ですか?
博士
リリーバーは発作時に気管支を広げる短時間作用性β2刺激薬。コントローラーは毎日継続する長期管理薬で、主に吸入ステロイドやロイコトリエン受容体拮抗薬じゃ。
サクラ
吸入ステロイドって、症状がなくても続けるんですか?
博士
その通り。喘息は気道の慢性炎症が本体じゃ。症状がないときも炎症は続いておるので、毎日の吸入で炎症を抑え続けることで発作を減らせるのじゃ。
サクラ
だから「症状がないから吸入しない」は一番やってはいけないパターンなんですね。
博士
さよう。そしてA君の「面倒くさい」という言葉は、思春期のセルフケア支援において重要な手がかりじゃ。頭ごなしに「ダメ」と言うより、面倒と感じる具体的理由を一緒に探ることが出発点なのじゃ。
サクラ
選択肢3の「服薬管理について話し合う」が正解なのは、本人の主体性を尊重する支援だからですね。
博士
その通り。話し合いのなかで、吸入手技の再確認、吸入後のうがい(口腔カンジダや嗄声予防)、学校での吸入場所の工夫、ピークフローの活用などを一緒に考えていくのじゃ。
サクラ
選択肢1の「毎日運動するよう勧める」はどうですか?
博士
本人が「体育は嫌」と言っているうえ、運動は喘息発作の誘発因子にもなる。コントロール不良のまま毎日運動を勧めるのは逆効果じゃ。
サクラ
選択肢2の「お薬手帳を持ち歩く」は?
博士
大事な習慣じゃが、A君の問題は吸入の自己中断。直接的な解決策にはならん。優先度は低い。
サクラ
選択肢4は母親から担任に伝える、ですね。
博士
情報共有は必要じゃが、母親経由で進めるのは本人の自立を邪魔しかねん。A君の同意を得て、本人主体で学校に共有するのが望ましい。
サクラ
思春期の喘息ケアって、「本人を主語にする」が合言葉ですね。
博士
うむ。小児科から成人科への移行、つまりトランジショナルケアの始まりでもあるのじゃ。
POINT
発作を繰り返す思春期喘息児のセルフケア支援では、本人を主語にした対話が出発点となります。A君は吸入ステロイド(コントローラー)の意義を十分理解しておらず、「症状がない=吸入不要」という誤解がアドヒアランス低下を招いています。看護師はまず服薬管理についてA君本人と話し合い、面倒に感じる理由を具体的に把握したうえで、吸入手技の確認、うがいの習慣化、ピークフローやアクションプランの活用など段階的な支援を行います。母親や担任への情報共有も、本人の同意と主体的参加が前提となります。思春期は小児科的ケアから成人ケアへのトランジションが始まる時期であり、自己決定を尊重した教育的関わりが将来のコントロールに直結します。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:次の文を読み問いに答えよ。 A君(11歳)は両親と3人で暮らしている。5歳で気管支喘息(bronchial asthma)と診断され、現在は抗アレルギー薬とステロイドの吸入薬が処方されている。本日、学校から帰ってきた後から咳嗽がみられ元気がなかった。夕食はあまり食べずに就寝した。夜間になり「苦しくて眠れない」と訴え、母親と救急外来を受診した。口元での喘鳴が著明であり、問診すると途切れ途切れに話した。受診時のバイタルサインは、体温36.9℃、呼吸数32/分、心拍数120/分、経皮的動脈血酸素飽和度<SpO 2 >92%(room air)であった。 この設問は、<前問>の続きの設問となります。 A君は1年前から気管支喘息(bronchial asthma)の急性増悪<発作>を起こして救急外来の受診を繰り返していることが分かった。看護師がA君に今の症状に対する認識を確認すると「喘息発作が起きていて、家で吸入をしても治まらなかった」と答えた。学校生活や服薬については「学校は好きだけど、体育は嫌だな。吸入が面倒くさい。吸入しなくても発作が起きなければいいんでしょ」と話した。看護師は、急性増悪<発作>を繰り返しているA君のセルフケアへの支援をする必要があると考えた。 A君への看護師の対応で最も適切なのはどれか。
解説:正解は 3 です。A君は11歳で、喘息発作を予防するための長期管理薬(抗アレルギー薬と吸入ステロイド)の意義を十分に理解していない可能性があります。「吸入しなくても発作が起きなければいい」という発言は、発作治療薬(リリーバー)と発作予防薬(コントローラー)の違いを理解していないサインでもあります。発作を繰り返している背景には吸入の自己中断があると推測されるため、まずA君自身と服薬管理について話し合い、吸入の必要性の理解度、面倒に感じる具体的な理由、実行可能な服薬スケジュールを一緒に検討することが最も適切な支援になります。
選択肢考察
-
× 1. 毎日運動するよう勧める。
A君は「体育は嫌だな」と発言しており、喘息発作時には運動が誘発因子にもなりうる。管理不十分な段階でやみくもに毎日運動を勧めるのは、本人の思いを無視した上、発作誘発のリスクもある。
-
× 2. お薬手帳を持ち歩くよう伝える。
お薬手帳は救急時や他院受診時に有用だが、A君の課題である「吸入を自己中断している」問題の直接的解決にはならない。優先順位が低い。
-
○ 3. A君と服薬管理について話し合う。
思春期入口のA君は自己決定を求める一方で、吸入ステロイドの意義を十分理解していない可能性が高い。本人と具体的な服薬方法・感じている負担・予防と治療の違いを話し合うことは、発達段階に応じたセルフケア支援の核心となる。
-
× 4. 喘息発作があったことを母親から担任の先生に伝えるよう提案する。
情報共有自体は必要だが、母親経由で伝達してしまうとA君の自己管理機会を奪い、本人抜きで物事が進むという思春期には逆効果となる。本人の同意と主体的参加が前提。
小児気管支喘息の薬剤は、発作時に用いる短時間作用性β2刺激薬(リリーバー)と、毎日継続して発作を予防する吸入ステロイドやロイコトリエン受容体拮抗薬など(コントローラー)に大別される。特にICS(吸入ステロイド)は症状がなくても継続することで気道の慢性炎症を抑え、発作を減らす効果がある。「症状がないから吸入しない」という誤解はアドヒアランス低下の典型で、発作を繰り返す最大要因となる。思春期では本人を主語にした教育(トランジショナルケアの始まり)が重要で、吸入手技の再確認、吸入後のうがい(口腔カンジダ予防)、ピークフローモニタリング、アクションプランの共有などを段階的に進める。
発作を繰り返す思春期喘息児に対して、発達段階に即したセルフケア支援の第一歩を選ぶ問題。
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