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依存症患者の家族への支援

看護師国家試験 第107回 午後 第106問 / 精神看護学 / 状況設定問題

国試問題にチャレンジ

107回 午後 第106問

Aさん( 32歳、男性 )。自宅の部屋で多量の鎮咳薬を見つけた母親に心配され、自宅近くの病院を受診した。「5年前、仕事が忙しくなって風邪がなかなか治らないことがあった。そのときに処方された咳止めの薬を飲むと、頭がボーッとして気持ちが良かったのがきっかけで、近所の薬局で咳止めを買うようになった。3年前から飲む量が増えるようになり、やめられなくなっている。仕事もうまくいかなくなり、退職した」と言う。Aさんは紹介を受けた精神科を受診した。 さらに2週が経過し、Aさんは鎮咳薬の服用をやめる意思を強く固め、今後の依存症の治療について真剣に考えるようになった。Aさんの父親はAさんが幼少期のころ死亡しており、Aさんは母親と2人で暮らしていた。母親は週2回面会に来て、Aさんに対して小さな子どもに接するように世話をしていた。担当看護師が母親と今後のことについて話すと、母親は「私が何とかします。私しかこの子の力になってあげられないのです。本当はもっとAにしっかりして欲しい。でも、そう言うとAは怒ってしまいます」と話した。 担当看護師の母親への声かけで適切なのはどれか。

  1. 1.「親戚で頼りになる方はいませんか」
  2. 2.「なるべく怒らせないようにすることが大切です」
  3. 3.「お母さんは今までどおりの関わりで良いですよ」
  4. 4.「Aさんが自分で自分のことをできるようにサポートしていきましょう」

対話形式の解説

博士 博士

博士じゃ。Aさんの母親は「私しかこの子の力になれない」と言うておるが、どう思うかの。

アユム アユム

母親なりの愛情ですが、Aさんを小さな子ども扱いしているのが気になります。

博士 博士

鋭いの。依存症では家族が抱え込みすぎる「共依存」が起こりやすいのじゃ。

アユム アユム

イネイブラーという言葉も聞いたことがあります。

博士 博士

そうじゃ、本人の問題を肩代わりして結果的に依存を助長する存在のことじゃな。

アユム アユム

では母親にはどう声をかけたらよいのでしょう。

博士 博士

母親の気持ちを認めつつ、Aさんが自分のことを自分でできるように支える方向へ促すのじゃ。

アユム アユム

「怒らせないように」と助言するのはどうでしょうか。

博士 博士

それは逆効果じゃ。言いたいことを言わずに迎合すると共依存が深まってしまうぞ。

アユム アユム

「今まで通りで良い」と伝えるのも違いますね。

博士 博士

うむ、現状維持ではAさんの自立が育たぬ。

アユム アユム

親戚に頼ることを勧めるのは。

博士 博士

新たな支援者を足すより、まず母親自身の関わり方を見直すのが先決じゃ。

アユム アユム

母親自身が家族教室や自助グループに参加するのも有効ですね。

博士 博士

その通りじゃ。家族も支援を受けながら適切な距離で関わることを学ぶのじゃよ。

POINT

依存症では家族が問題を肩代わりしすぎるイネイブリングが本人の回復を妨げる要因となります。看護師は母親の献身的な思いを受け止めつつ、本人の自立を支援する方向に関わりを変えるよう促します。家族自身も共依存から抜け出すために家族教室やNar-Anonなどの自助グループへつなげ、距離の取り方を学ぶことが重要です。母親の健康と生活を守ることが結果的にAさんの回復を後押しすることにもなります。

解答・解説

正解は 4 です

問題文:Aさん( 32歳、男性 )。自宅の部屋で多量の鎮咳薬を見つけた母親に心配され、自宅近くの病院を受診した。「5年前、仕事が忙しくなって風邪がなかなか治らないことがあった。そのときに処方された咳止めの薬を飲むと、頭がボーッとして気持ちが良かったのがきっかけで、近所の薬局で咳止めを買うようになった。3年前から飲む量が増えるようになり、やめられなくなっている。仕事もうまくいかなくなり、退職した」と言う。Aさんは紹介を受けた精神科を受診した。 さらに2週が経過し、Aさんは鎮咳薬の服用をやめる意思を強く固め、今後の依存症の治療について真剣に考えるようになった。Aさんの父親はAさんが幼少期のころ死亡しており、Aさんは母親と2人で暮らしていた。母親は週2回面会に来て、Aさんに対して小さな子どもに接するように世話をしていた。担当看護師が母親と今後のことについて話すと、母親は「私が何とかします。私しかこの子の力になってあげられないのです。本当はもっとAにしっかりして欲しい。でも、そう言うとAは怒ってしまいます」と話した。 担当看護師の母親への声かけで適切なのはどれか。

解説:正解は4の「Aさんが自分で自分のことをできるようにサポートしていきましょう」です。母親は「自分しかこの子の力になれない」と過度な保護・共依存的な関わりを続けながら、内心ではAさんの自立を望む葛藤を抱えています。依存症回復には本人が自己責任で行動変容を続ける必要があり、家族が抱え込まずに見守り支える関係へ転換することが欠かせません。看護師は母親の思いを受け止めつつ、自立を支える関わり方へ促す声かけが最も適切です。

選択肢考察

  1. × 1.  「親戚で頼りになる方はいませんか」

    新たな支援者探しは状況によっては有効ですが、母親の共依存的関わりを変える本質的支援にはなりません。優先されるべきは親子の関係性の再調整です。

  2. × 2.  「なるべく怒らせないようにすることが大切です」

    怒りを避けるために本人の意向に迎合する関わりは、かえって過保護と共依存を強化し、回復を妨げます。適切な声かけとは言えません。

  3. × 3.  「お母さんは今までどおりの関わりで良いですよ」

    今まで通りの小さな子どもに接するような関わりは、本人の自立を阻み依存関係を維持します。現状維持を肯定すべき場面ではありません。

  4. 4.  「Aさんが自分で自分のことをできるようにサポートしていきましょう」

    本人の自立を後押しする方向での支援は、依存症回復の大原則に合致します。母親の葛藤を尊重しながら関わり方の変更を提案する適切な声かけです。

依存症家族には「イネイブラー(支え手だが結果的に依存を助長する存在)」となるケースが多く、問題を肩代わりしすぎて本人の回復機会を奪ってしまいます。家族教室や家族自助グループ(Nar-Anonなど)では、共依存を脱し適切な距離で関わる方法を学べます。家族自身のメンタルヘルスケアも不可欠です。

依存症の回復支援では家族の共依存を解除し、本人の自立を支える関係づくりを促すことが重要です。家族を責めず自立支援の方向を示します。