強迫性障害の手洗いへの看護対応
看護師国家試験 第107回 午後 第107問 / 精神看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
Aさん( 23歳、女性 )。両親との3人暮らし。Aさんは大学受験に失敗して以来、自宅に引きこもりがちになった。1年前から手洗いを繰り返すようになり、最近では夜中も起き出して手を洗い、手の皮膚が荒れてもやめなくなった。心配した母親が付き添って受診したところ、Aさんは強迫性障害(obsessive-compulsive disorder)と診断された。母親は、Aさんについて「中学生までは成績優秀で、おとなしい子どもだった」と言う。Aさんには極度に疲労している様子がみられたことから、その日のうちに任意入院となった。 入院後、Aさんは主治医と話し合い、1日の手洗いの回数を決めたが、毎日その回数を超えて手洗いを続けている。看護師が確認するといつも洗面所にいる。 Aさんが決めた回数を超えて洗面所で手洗いを続けているときに、看護師がとる対応で適切なのはどれか。
- 1.手洗いを続けてしまうことについてAさんと一緒に話し合う。
- 2.病棟は清潔であることをAさんに説明する。
- 3.主治医にAさんの隔離について相談する。
- 4.Aさんと決めた手洗いの回数を増やす。
対話形式の解説
博士
博士じゃ。Aさんは決めた回数を超えて手洗いを続けておるな。
サクラ
止めたいのに止められない、強迫性障害の特徴的な行動ですね。
博士
そうじゃ、本人も不合理とわかっておるのに不安で止められぬ。看護師はどう関わるべきじゃろう。
サクラ
回数を守れなかったことについて一緒に話し合うのがよいのでしょうか。
博士
その通り。責めるのではなく、どんな不安があったのかを共有する対話が治療の第一歩じゃ。
サクラ
病棟は清潔だと説明するのはどうですか。
博士
強迫観念は論理で納得させることができぬ。説明しても不安は消えぬどころか本人を追い詰めてしまうぞ。
サクラ
隔離を検討するのはいかがでしょう。
博士
隔離は自傷他害の危険があるときの最終手段じゃ。手洗いを抑えるために使うものではないのう。
サクラ
回数を増やすのはどうでしょう。
博士
それでは強迫行為を肯定し、症状を強化してしまうぞ。回数は本人と治療チームで慎重に決めるものじゃ。
サクラ
治療には薬と認知行動療法が使われるのですね。
博士
うむ、SSRIと曝露反応妨害法の組み合わせが標準じゃ。
サクラ
看護師はまず信頼関係を築くことが大切なのですね。
博士
そうじゃ、共感的な対話こそが治療の土台になるのじゃよ。
POINT
強迫性障害は自分でも不合理だと分かりながら不安を打ち消すために強迫行為を繰り返す疾患です。看護では行為を禁止したり論理的に説得したりせず、本人の不安体験を一緒に言語化する関わりが重要です。薬物療法としてSSRIが、心理療法として曝露反応妨害法が組み合わされ、看護師はその治療関係を支える伴走者として機能します。対話に基づく信頼構築が、後の認知行動療法の成果を大きく左右します。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:Aさん( 23歳、女性 )。両親との3人暮らし。Aさんは大学受験に失敗して以来、自宅に引きこもりがちになった。1年前から手洗いを繰り返すようになり、最近では夜中も起き出して手を洗い、手の皮膚が荒れてもやめなくなった。心配した母親が付き添って受診したところ、Aさんは強迫性障害(obsessive-compulsive disorder)と診断された。母親は、Aさんについて「中学生までは成績優秀で、おとなしい子どもだった」と言う。Aさんには極度に疲労している様子がみられたことから、その日のうちに任意入院となった。 入院後、Aさんは主治医と話し合い、1日の手洗いの回数を決めたが、毎日その回数を超えて手洗いを続けている。看護師が確認するといつも洗面所にいる。 Aさんが決めた回数を超えて洗面所で手洗いを続けているときに、看護師がとる対応で適切なのはどれか。
解説:正解は1のAさんと一緒に話し合うことです。強迫性障害の患者は、自分の行為が不合理だと気づいていても不安から止められません。決めた回数を超えて手洗いをする状況では、行為を一方的に禁止したり回数を増やしたりせず、なぜ守れなかったのか、どんな不安が強まったのかをAさんと共有することが治療の第一歩です。治療者と患者の協働関係を基盤に、段階的に不安へ向き合う認知行動療法の基礎作りとなります。
選択肢考察
-
○ 1. 手洗いを続けてしまうことについてAさんと一緒に話し合う。
本人の不安や思考パターンを共に言語化することが治療的関わりの基本です。責めずに共感的に対話することで、信頼関係と認知行動療法の土台が築かれます。
-
× 2. 病棟は清潔であることをAさんに説明する。
強迫観念は合理的説得で解消しません。「清潔だから大丈夫」と論理的に説明しても不安は和らがず、本人を追い詰める可能性すらあります。
-
× 3. 主治医にAさんの隔離について相談する。
隔離は自傷他害の切迫した危険がある場合の最終手段です。強迫行為を止めるための隔離は治療目的から外れ、Aさんの不安をさらに悪化させます。
-
× 4. Aさんと決めた手洗いの回数を増やす。
目標回数の引き上げは強迫行為を肯定することになり、症状を強化します。回数は本人と医療チームで慎重に設定し勝手に変更しません。
強迫性障害の治療は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と認知行動療法(特に曝露反応妨害法)の併用が有効です。曝露反応妨害法では不安を感じる状況にあえて向き合い、強迫行為をしないで我慢する体験を積み重ねます。看護ではまず共感的関係づくりを優先し、強制や説得は避けます。
強迫性障害の看護では行為を責めず、本人の不安を共に言葉にする関わりが治療関係の基盤です。説得や禁止ではなく対話を優先します。
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