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休養目的で入院したASDのAさん、最初に聴くべき情報はどれ?

看護師国家試験 第109回 午前 第112問 / 精神看護学 / 状況設定問題

国試問題にチャレンジ

109回 午前 第112問

次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん(男性、26 歳、会社員)は、高校時代に自閉症スペクトラム( autism spectrum disorder )障害の診断を受け、外来通院をしながら仕事を続けていた。これまでの職場ではストレスが少なく、規則正しい生活ができていた。しかし、1 か月前に新しい職場に異動になってから生活が不規則となり、数日前より無断欠勤が続いている。同居している家族に対してAさんは「家にいると仕事のことばかり考えてしまい眠れない。食欲もないし、環境を変えてゆっくり休みたい」と話したため、Aさんは家族とともに精神科外来を受診し、休養目的で任意入院することになった。 看護師が入院時に聴取する情報で優先度が高いのはどれか。

  1. 1.業務量の変化
  2. 2.職場での人間関係
  3. 3.最近 1 か月の生活状況
  4. 4.無断欠勤に対する親の反応

対話形式の解説

博士 博士

今日は自閉スペクトラム症のAさんの任意入院時の情報収集について学ぶぞ。まず任意入院とは何か覚えておるか?

アユム アユム

本人の同意に基づく入院で、精神保健福祉法に規定されている入院形態ですね。開放的処遇が原則で、本人の意思で退院を申し出ることもできます。

博士 博士

その通り。Aさんは休養目的で自ら入院を希望しておる。ここが大きなポイントじゃ。

アユム アユム

問題文には『眠れない』『食欲もない』『環境を変えてゆっくり休みたい』とあります。疲弊しきっている印象です。

博士 博士

そう。入院目的が休養である以上、最初に把握すべきは生活そのものの崩れ具合じゃ。

アユム アユム

でも異動のストレスが原因なら、業務量や人間関係も気になります。

博士 博士

確かに重要なストレス因じゃが、入院直後に仕事の話を掘り下げるとAさんを再び緊張させてしまう。休める環境を作るのが先じゃよ。

アユム アユム

なるほど、ストレス因の詳細は状態が落ち着いてからでも間に合うのですね。

博士 博士

うむ。最近1か月の睡眠時間、食事回数、日中の過ごし方、入浴、服薬状況などを丁寧に聴くと、看護計画の土台ができる。

アユム アユム

家族の反応を聴く選択肢は少し気になりました。

博士 博士

家族の反応は支援体制の参考にはなるが、本人の前で親の反応を問うのは心理的負担が大きい。優先度は低いのじゃ。

アユム アユム

ASDの方への面接で気をつけることはありますか?

博士 博士

抽象的な質問より具体的な質問、口頭より視覚的な提示が伝わりやすい。たとえば『最近どうでしたか?』より『先週は何時に寝ていましたか?』と尋ねると答えやすい。

アユム アユム

同一性への固執や感覚過敏への配慮も必要ですね。

博士 博士

その通り。入院初期は刺激の少ない個室環境、スケジュールの視覚化、予定変更を最小限にすることが回復を支える。

アユム アユム

生活状況の把握が援助の出発点になるという原則がよくわかりました。

POINT

自閉スペクトラム症のAさんは、異動に伴う環境変化で生活リズムが崩れ、不眠・食欲低下・無断欠勤に至り、休養目的で任意入院となりました。入院目的が休養である以上、初期に最も優先される情報は『最近1か月の生活状況』であり、睡眠・食事・活動・清潔・服薬の実態を把握することが援助計画の出発点となります。業務量や人間関係などストレス因の詳細、家族の反応といった心理社会的情報も重要ですが、疲弊した入院初期に深掘りすると再度負荷を与えかねないため、状態の回復に応じて段階的に収集します。ASDの特性を踏まえ、具体的で視覚的な問いかけ、予定の可視化、刺激の少ない環境調整を組み合わせることが、精神科看護の基本姿勢として求められます。

解答・解説

正解は 3 です

問題文:次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん(男性、26 歳、会社員)は、高校時代に自閉症スペクトラム( autism spectrum disorder )障害の診断を受け、外来通院をしながら仕事を続けていた。これまでの職場ではストレスが少なく、規則正しい生活ができていた。しかし、1 か月前に新しい職場に異動になってから生活が不規則となり、数日前より無断欠勤が続いている。同居している家族に対してAさんは「家にいると仕事のことばかり考えてしまい眠れない。食欲もないし、環境を変えてゆっくり休みたい」と話したため、Aさんは家族とともに精神科外来を受診し、休養目的で任意入院することになった。 看護師が入院時に聴取する情報で優先度が高いのはどれか。

解説:正解は 3 です。今回の入院の目的は『休養』であり、不眠・食欲低下・無断欠勤といった心身の疲弊が入院の背景となっています。優先される情報収集は、入院を要するに至った生活の乱れそのものを具体的に把握することであり、最近1か月の睡眠時間・食事摂取・日中の過ごし方・入浴や服薬状況などを聴取することが、休息計画や環境調整の出発点となります。また自閉スペクトラム症のある人は生活パターンの変化に強い影響を受けやすく、過度に侵襲的な質問はかえって混乱させるため、最初の面接では負担の少ない生活面の情報から入ることが望ましいとされています。

選択肢考察

  1. × 1.  業務量の変化

    異動によるストレス因として重要ではあるが、仕事そのものを想起させる質問はAさんを再び緊張させ、休養目的の入院初期には負担が大きい。ストレス要因の詳細は状態が落ち着いてから段階的に聴取すべき情報である。

  2. × 2.  職場での人間関係

    自閉スペクトラム症のある人にとって対人関係の問題は主要なストレス源になり得るが、入院直後の疲弊した状態で詳細を掘り下げることは症状悪化を招きやすい。優先順位としては後回しでよい。

  3. 3.  最近 1 か月の生活状況

    休養目的で入院しているため、最優先は睡眠・食事・活動・清潔・服薬など日常生活のリズムがどう乱れているかを把握すること。ここから休息環境の設定、食事の工夫、服薬の再確認など具体的な援助計画を立てられる。

  4. × 4.  無断欠勤に対する親の反応

    家族の反応は支援体制を検討するうえで参考になるが、本人の休養に直接関わる情報ではない。また本人の前で親の反応を問うことは心理的負担となるため、優先度は低い。

自閉スペクトラム症(ASD)は、社会的コミュニケーションの困難、限定的・反復的な行動様式、感覚過敏・感覚鈍麻などを特徴とする神経発達症で、DSM-5以降は自閉症・アスペルガー症候群などが一つの連続体として再編された。本事例のように環境変化(異動、引越し、人事の入れ替わり)は、同一性への固執が特性としてあるASDの人に大きな負荷となり、睡眠障害・食欲不振・無断欠勤といった二次的な適応障害・うつ症状として顕在化しやすい。入院初期は感覚刺激を抑えた環境を整え、予定を視覚化し、面接でも負荷の少ない生活面の情報から順に把握していくことが治療の第一歩となる。

休養目的の任意入院という目的を踏まえ、入院初期の情報収集の優先順位を判断できるかを問う問題。ストレス因の深掘りではなく、まず生活リズムの把握が先という原則を押さえる。