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アルコールが抜けたあと何が起きるか――離脱症候群のタイムラインを読み解く

看護師国家試験 第109回 午後 第112問 / 精神看護学 / 状況設定問題

国試問題にチャレンジ

109回 午後 第112問

次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん( 43 歳、男性、会社員)は、妻( 38 歳)と 2 人暮らし。1 年前から、仕事上の失敗を上司から叱責されることが続いていた。半年前からAさんの飲酒量は次第に増えていき、最近では酒気を帯びたままの出勤や、飲酒を原因とした遅刻や欠勤をすることが増えていた。ある夜、Aさんは居酒屋で多量に飲酒し、その場で意識が消失したため、救急車で救命救急センターへ搬送され、入院となった。器質的検査および生理的検査では異常が認められなかったが、入院翌日に飲酒の問題について同じ病院内の精神科を受診した結果、Aさんはアルコール依存症( alcohol dependence syndrome )と診断された。 入院後 3 日までにAさんに出現する可能性が高い症状はどれか。2 つ選べ。

  1. 1.観念奔逸
  2. 2.緘黙
  3. 3.強迫症状
  4. 4.幻覚
  5. 5.振戦

対話形式の解説

博士 博士

今日は43歳男性Aさんのアルコール依存症の事例じゃ。仕事のストレスから飲酒量が増え、居酒屋で意識消失して救急搬送、入院となった。

アユム アユム

器質的・生理的検査は異常なしで、翌日の精神科受診でアルコール依存症と診断されたんですよね。

博士 博士

そう。問われているのは、入院後3日までに出現する可能性が高い症状を2つ選ぶというものじゃ。

アユム アユム

選択肢は観念奔逸、緘黙、強迫症状、幻覚、振戦ですね。これは離脱症状を思い浮かべれば良さそうです。

博士 博士

その通り。アルコール依存症患者が入院して急に断酒すると、血中アルコール濃度の低下とともに離脱症候群が始まる。タイムラインを整理できるかな。

アユム アユム

えっと、断酒6〜12時間くらいから手の震えや発汗、不眠、不安、動悸が出て…その後24〜48時間で痙攣発作のリスクが上がる、でしたっけ。

博士 博士

よく覚えておる。そして48〜72時間のピーク時期に起こるのが振戦せん妄じゃ。意識障害を伴い、小さな虫や動物が見える鮮明な幻視、見当識障害、著しい自律神経症状を呈する。

アユム アユム

ということは、入院3日目までの時間帯にかぶるので、振戦と幻覚は必発級に考えておくべきなんですね。

博士 博士

うむ。だから答えは4の幻覚と5の振戦じゃ。観念奔逸はどの疾患の症状だったかな。

アユム アユム

双極性障害の躁状態ですね。次々と連想が飛んで話がまとまらなくなる思路障害。

博士 博士

その通り。緘黙は言葉は話せるのに特定場面で話せなくなる状態で、主に小児の場面緘黙として学ぶ。強迫症状は強迫症の中核症状で、アルコール離脱とは結びつかない。

アユム アユム

離脱症状が重症化するとどんな危険がありますか。

博士 博士

振戦せん妄は死亡率が5〜15%とも言われる重症病態じゃ。だからベンゾジアゼピン系薬剤で予防・治療を行い、ビタミンB1を早期に投与してウェルニッケ脳症を防ぎ、輸液で電解質を整える。

アユム アユム

ウェルニッケ脳症は眼球運動障害、失調、意識障害の三徴で習いました。ブドウ糖だけ先に入れると悪化するんですよね。

博士 博士

よく覚えておるな。だからB1を先行ないし同時に投与するのが鉄則。看護師はCIWA-Arなどのスケールを使って離脱症状を定量評価し、早期に医師に報告する役割を担うのじゃ。

アユム アユム

離脱症状のピーク時期と症状像をセットで押さえれば、国試でも臨床でも対応できそうですね。

POINT

アルコール依存症患者が急に断酒すると、血中アルコール濃度低下とともに離脱症候群が生じます。断酒6〜12時間では振戦・発汗・不眠・不安・一過性幻覚などの早期離脱、24〜48時間では離脱性痙攣、48〜72時間では振戦せん妄(鮮明な幻視・意識障害・自律神経症状)が出現します。Aさんは入院3日目にあたり、幻覚と振戦の出現可能性が最も高い時期です。振戦せん妄は死亡率の高い重篤な状態であり、ベンゾジアゼピン系、ビタミンB1、電解質補正による早期介入と、CIWA-Arなどを用いた継続的観察が重要です。離脱症状のタイムラインを頭に入れておくことは、救急・精神科・一般病棟いずれでもアルコール多飲歴のある患者をケアするうえで欠かせない基礎知識です。

解答・解説

正解は 4 5 です

問題文:次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん( 43 歳、男性、会社員)は、妻( 38 歳)と 2 人暮らし。1 年前から、仕事上の失敗を上司から叱責されることが続いていた。半年前からAさんの飲酒量は次第に増えていき、最近では酒気を帯びたままの出勤や、飲酒を原因とした遅刻や欠勤をすることが増えていた。ある夜、Aさんは居酒屋で多量に飲酒し、その場で意識が消失したため、救急車で救命救急センターへ搬送され、入院となった。器質的検査および生理的検査では異常が認められなかったが、入院翌日に飲酒の問題について同じ病院内の精神科を受診した結果、Aさんはアルコール依存症( alcohol dependence syndrome )と診断された。 入院後 3 日までにAさんに出現する可能性が高い症状はどれか。2 つ選べ。

解説:正解は 4 の幻覚と 5 の振戦です。アルコール依存症患者が入院などで急に断酒した場合、血中アルコール濃度の低下に伴って離脱症候群が生じます。断酒6〜24時間程度で始まる早期(小)離脱症状として手指振戦・発汗・動悸・不眠・不安・嘔気・一過性の幻覚(幻視・幻聴)などが出現し、さらに48〜72時間頃には後期離脱症状である振戦せん妄(意識障害を伴う強い振戦、鮮明な幻視、見当識障害、自律神経症状)や離脱性痙攣発作のリスクが高まります。Aさんは入院前日まで多量飲酒しており、入院3日目はまさにこの離脱症状のピーク時期に当たるため、幻覚と振戦の出現可能性が特に高いと判断されます。

選択肢考察

  1. × 1.  観念奔逸

    次々と連想が飛び、話題がまとまらない思路障害で、双極性障害の躁状態で典型的にみられる症状。アルコール離脱症状の特徴ではない。

  2. × 2.  緘黙

    言語機能は保たれているのに特定場面で発話しなくなる状態で、社交不安や場面緘黙など小児・若年でみられることが多い。アルコール離脱の中核症状ではない。

  3. × 3.  強迫症状

    不合理と自覚しつつも繰り返してしまう強迫観念・強迫行為を指し、強迫症の特徴的症状。アルコール離脱症状として典型的に出現するものではない。

  4. 4.  幻覚

    早期離脱では一過性の幻視・幻聴、後期離脱(振戦せん妄)では虫や小動物が見えるなどの鮮明な幻視が高頻度で出現する。

  5. 5.  振戦

    手指の細かい震えは離脱症状の代表例で、断酒数時間から出現する。振戦せん妄では全身性の粗大な震えを伴い、意識障害や自律神経症状を合併する。

アルコール離脱症候群の経過は覚えておきたい。断酒6〜12時間で振戦・発汗・不眠・不安、12〜48時間で離脱性痙攣、48〜72時間前後で振戦せん妄(DT)がピークを迎える。振戦せん妄は死亡率が5〜15%にも及ぶ重篤な状態であり、ベンゾジアゼピン系による予防・治療、ビタミンB1投与(ウェルニッケ脳症予防)、輸液による電解質補正が必須。CIWA-Arなどのスケールで重症度を定量評価する。

アルコール依存症患者の断酒数日以内に生じる離脱症状を問う設問。早期離脱と後期離脱(振戦せん妄)の典型像を知っているかがポイント。