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ASDのAさんへの外来看護師の対応を考える

看護師国家試験 第113回 午前 第114問 / 精神看護学 / 状況設定問題

国試問題にチャレンジ

113回 午前 第114問

次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(22歳、男性)は、高校卒業後に就職したが、同僚との関係がうまく築けず、転職を繰り返している。「他の人と自分はどこか違う。自分の将来が不安だ」と感じたAさんは精神科クリニックを受診し、自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)と診断された。 Aさんは小学生のころから他人の気持ちが理解できないときがあり、対人関係を築くことが苦手で、学校で孤立していた。また、偏食が強く、るいそうがみられたために、同級生から容姿のことでいじめられたことがあった。中学校や高校では忘れ物が多く、集団生活になじめなかった。 就労移行支援を利用し、Aさんは仕事を始めたが、苦手な仕事内容が多く、失敗が続いているため同僚から注意を受け続けている。外来看護師は、Aさんから「毎日が憂うつでつらい。ストレスが溜まるのでどうしたらよいか」と相談を受けた。 Aさんへの対応で適切なのはどれか。

  1. 1.仕事に慣れるまで待つように説明する。
  2. 2.憂うつな気分について詳しく話してもらう。
  3. 3.職場の同僚とうまく付き合う方法を考えてもらう。
  4. 4.外来看護師が行っているストレス発散方法を指導する。

対話形式の解説

博士 博士

Aさんは22歳男性でASDと診断され、職場で失敗が続き「毎日憂うつでつらい」と相談してきたんじゃ。まず何を考える?

アユム アユム

とても苦しそうですね。看護師としては何から始めるべきでしょうか。

博士 博士

選択肢2の「憂うつな気分について詳しく話してもらう」が正解じゃ。訴えを丁寧に聴くのが基本じゃな。

アユム アユム

なるほど、支援の前にまず情報収集ということですね。

博士 博士

そうじゃ。ASDの人は自分の感情を言語化するのが苦手なことも多いから、落ち着いた環境で時間をかけて聞くのがコツじゃ。

アユム アユム

選択肢1の「慣れるまで待つ」はどうして不適切なのですか。

博士 博士

今まさに苦痛を訴えておるのに先送りにするのは寄り添っておらん。抑うつが進む危険もあるぞ。

アユム アユム

選択肢3の同僚との付き合い方を考えさせるのは?

博士 博士

対人関係の困難はASDの中核症状じゃ。本人に丸投げすれば自責感を強めるだけじゃよ。

アユム アユム

選択肢4の看護師のストレス発散法を教えるのは優しく見えますが。

博士 博士

押し付けになる。感覚特性は人それぞれじゃから、一緒に合う方法を探すのが筋じゃな。

アユム アユム

コーピングには種類があるのですよね。

博士 博士

問題焦点型と情動焦点型があり、本人が使いやすいものを選ぶんじゃ。就労移行支援やジョブコーチとの連携も視野に入れよう。

アユム アユム

まず聴く、そこからアセスメントを深めて個別支援へつなぐ流れがよく分かりました。

POINT

ASDのある人への相談対応では、表面的な助言に飛びつかず、まず訴えを傾聴しストレッサーと感情を共に整理することが最重要です。本人の特性や好みに合わせたコーピングを一緒に見つける姿勢が求められます。就労場面では就労移行支援事業所や産業保健スタッフとの協働も検討します。支援は一方的な指導ではなく、本人のペースに合わせた協働作業であることを押さえておきましょう。

解答・解説

正解は 2 です

問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(22歳、男性)は、高校卒業後に就職したが、同僚との関係がうまく築けず、転職を繰り返している。「他の人と自分はどこか違う。自分の将来が不安だ」と感じたAさんは精神科クリニックを受診し、自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)と診断された。 Aさんは小学生のころから他人の気持ちが理解できないときがあり、対人関係を築くことが苦手で、学校で孤立していた。また、偏食が強く、るいそうがみられたために、同級生から容姿のことでいじめられたことがあった。中学校や高校では忘れ物が多く、集団生活になじめなかった。 就労移行支援を利用し、Aさんは仕事を始めたが、苦手な仕事内容が多く、失敗が続いているため同僚から注意を受け続けている。外来看護師は、Aさんから「毎日が憂うつでつらい。ストレスが溜まるのでどうしたらよいか」と相談を受けた。 Aさんへの対応で適切なのはどれか。

解説:正解は 2 の「憂うつな気分について詳しく話してもらう。」です。自閉症スペクトラム障害のあるAさんは、幼少期から対人関係の困難や感覚過敏を抱え、職場でも失敗体験が重なり自己評価が低下している状態です。援助を組み立てる前提として、本人が何を「憂うつでつらい」と感じ、どのような状況でストレスを強く受けているのかを、本人の言葉で丁寧に聞き取り、共感的に整理することが不可欠です。訴えの内容を具体化して初めて、特性に沿ったコーピングや環境調整、関係機関との連携が検討できます。

選択肢考察

  1. × 1.  仕事に慣れるまで待つように説明する。

    「慣れるまで待つ」は現在Aさんが抱えている苦痛を棚上げする対応で、訴えを受け止めていません。ASDでは暗黙のルールや臨機応変な判断が苦手なため、時間経過だけで状況が改善する保証はなく、抑うつ状態が悪化するリスクもあるため不適切です。

  2. 2.  憂うつな気分について詳しく話してもらう。

    本人の訴えに寄り添い、ストレッサーと情動を具体的に言語化してもらうことは、精神科看護のアセスメントの基本です。ASDでは自分の感情を言語化しにくい特性もあるため、看護師が落ち着いた環境で丁寧に聴取することで、必要な支援の糸口が見えてきます。

  3. × 3.  職場の同僚とうまく付き合う方法を考えてもらう。

    対人関係そのものがASDの中核的な困難であり、本人に解決策を考えさせるだけでは負担と自責感を増やします。また訴えの中心は「仕事の失敗と注意」であり、論点がずれるため初期対応として不適切です。

  4. × 4.  外来看護師が行っているストレス発散方法を指導する。

    感覚特性や好みは個人差が大きく、看護師個人の方法をそのまま当てはめるのは押し付けになります。Aさん自身の好みや感覚特性を踏まえたコーピングを一緒に探す姿勢が必要で、この選択肢は看護の原則から外れます。

ASDの支援では、感覚過敏・こだわり・コミュニケーション特性を踏まえた環境調整が重要です。ストレスコーピングには、問題そのものに働きかける問題焦点型と、感情を和らげる情動焦点型があり、本人が使いやすい方法を一緒に選びます。就労支援ではジョブコーチや就労移行支援事業所との連携も検討されます。

精神疾患や発達障害のある人への相談対応では、まず本人の訴えを傾聴しアセスメントすることが出発点であることを問う問題です。