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神経性やせ症の入院初期 浮腫と過食を見逃すな

看護師国家試験 第106午前112(状況設定問題)

国試問題にチャレンジ

106午前112

状況設定

Aさん(23歳、女性)は、大学を卒業後、インテリア会社に事務職として就職した。入社後に「ユニフォームが似合うようになりたい」とダイエットを始め、次第にやせが目立つようになった。母親がAさんに食事を作っても「太るのが怖い」と言って食べず、体重は2週間で5kg減少した。心配した母親とともに精神科外来を受診し、摂食障害( eating disorder )と診断され、開放病棟へ入院した。入院時、身長160cm、体重37kgであった。

入院から1週間の期間に観察すべき項目はどれか。2つ選べ。

  1. 1.浮腫の程度
  2. 2.過食の有無
  3. 3.活動量の低下
  4. 4.嚥下障害の有無
  5. 5.振戦せん妄の有無

対話形式の解説

博士博士
さて今回は摂食障害で入院したAさんの、入院後1週間の観察項目を考えるのじゃ。
サクラサクラ
BMIを計算すると37÷1.6²で約14.5。これってかなりの低体重ですよね。
博士博士
その通りじゃ。WHO基準ではBMI16未満は重度やせ。日本の摂食障害ガイドラインでもBMI15未満は入院治療の目安になるのじゃ。
サクラサクラ
低栄養でまず心配なのって、何ですか?
博士博士
低タンパク血症による浮腫じゃな。血清アルブミンが下がると膠質浸透圧が落ちて、血管外に水分が漏れる。下腿や顔面に浮腫が出るのじゃ。
サクラサクラ
やせているのに浮腫が出るって、ちょっと意外ですね。
博士博士
初心者が見落としやすいポイントじゃ。さらに急激に栄養補給すると「リフィーディング症候群」で浮腫や心不全が起こるから、浮腫の観察はとても重要なのじゃ。
サクラサクラ
リフィーディング症候群って、低リン血症が有名でしたっけ。
博士博士
よく覚えておるのう。長期飢餓後に糖質を急に入れるとインスリンが出てリン・カリウム・マグネシウムが細胞内に取り込まれ、低リン血症から心不全や呼吸不全を起こす病態じゃ。
サクラサクラ
もう一つの答えが「過食の有無」なのは、なぜですか?やせている人が過食するんですか?
博士博士
神経性やせ症には「制限型」と「過食排出型」があってな。制限型でも経過中に過食や自己誘発嘔吐、下剤乱用が出ることが多いのじゃ。体重を増やしたくないから食後にこっそり吐いたりするのじゃよ。
サクラサクラ
じゃあトイレに頻繁に行くとか、食後に席を立つとかも観察ポイントですね。
博士博士
そうじゃ。食事場面だけでなく食後の行動までしっかり観察する。隠れ食いも見逃さないようにのう。
サクラサクラ
「活動量の低下」はなぜ違うんですか?やせているなら動けなくなりそうですけど。
博士博士
逆なのじゃ。神経性やせ症は「過活動」が特徴で、カロリーを消費したい一心で強迫的に運動するのじゃ。ベッドの上でもずっとストレッチしておる患者さんは珍しくない。
サクラサクラ
嚥下障害や振戦せん妄は、摂食障害とはそもそも関係ないですね。
博士博士
そうじゃ。振戦せん妄はアルコール離脱の症状。断酒48〜72時間で出る幻覚・発汗・振戦が三徴じゃ。国試でよく出るからセットで覚えておくとよい。
サクラサクラ
やせているだけでなく、身体の中では低栄養の影響が多彩に出ているんですね。

POINT

神経性やせ症の入院初期において、低栄養の合併症と摂食行動の変化という2つの視点から観察項目を選ぶ問題。

解答・解説

正解は1です

問題文:入院から1週間の期間に観察すべき項目はどれか。2つ選べ。

解説:正解は 1 と 2 です。入院時のBMIは37÷1.6²≒14.5であり、重度のるい痩にあたる。低栄養による低アルブミン血症は膠質浸透圧を低下させて浮腫を引き起こすため、下腿や顔面の浮腫を継続的に観察する必要がある。また、神経性やせ症は経過中に過食や自己誘発嘔吐など過食・排出行動が出現することが多く、特に制限型から過食排出型へ移行するケースもある。体重を増やしたくないがゆえに隠れ食いや嘔吐、下剤乱用が起こる可能性を念頭に置き、食事摂取量や食後の行動、嘔吐の有無を注意深く観察する。

選択肢考察

  1. 1.  浮腫の程度

    重度のるい痩では血清アルブミンが低下し、膠質浸透圧が下がるため低タンパク性浮腫が出現する。また、リフィーディング症候群でも水分貯留による浮腫が起こりうるため、下腿・顔面の浮腫の程度を経時的に観察することは重要。

  2. 2.  過食の有無

    摂食障害では制限型でも経過中に過食や自己誘発嘔吐・下剤乱用などの代償行動が現れることが多い。食事場面や食後の行動、トイレへの頻回な出入りを観察し、過食・嘔吐の兆候を早期に捉える必要がある。

  3. ×3.  活動量の低下

    神経性やせ症では体重増加を避けるため過活動(強迫的運動)を示すことが多く、「活動量の低下」よりも「過活動」に注意すべきである。23歳で入院1週目という状況で、活動量低下を特に優先して観察する根拠は乏しい。

  4. ×4.  嚥下障害の有無

    神経性やせ症には嚥下機能障害は通常伴わない。嚥下障害は脳血管障害、神経筋疾患、加齢などで問題となる観察項目で、本症例には該当しない。

  5. ×5.  振戦せん妄の有無

    振戦せん妄はアルコール離脱症候群の代表的症状で、断酒後48〜72時間に出現する。摂食障害の病態とは直接関係がない。

神経性やせ症の入院早期では、低血糖、低カリウム血症、徐脈、低体温、低血圧などの身体合併症に加え、急激な栄養投与で生じるリフィーディング症候群(低リン血症、低カリウム血症、心不全、浮腫)に要注意である。BMI15未満は重症の目安で、身体管理を優先しつつ心理療法を組み合わせる。過食・嘔吐・下剤乱用などの排出行動や、食事を隠す・運動を繰り返すなどの行動面の観察も重要。

神経性やせ症の入院初期において、低栄養の合併症と摂食行動の変化という2つの視点から観察項目を選ぶ問題。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。