神経性過食症のAさんに潜む致命的サイン――K 2.7 mEq/Lが意味するもの
看護師国家試験 第115回 午前 第115問(状況設定問題)
国試問題にチャレンジ
状況設定
Aさん(24歳、女性)は両親と3人で暮らしている。会社員として働いているが、最近責任の大きな仕事が増えていた。仕事帰りにコンビニエンスストアでサンドイッチやおにぎりなどを買い込み、家族が寝た後に一気に食べるようになった。量が増えていき、食べた後に自ら嘔吐することを繰り返すようになった。過食嘔吐をやめられないことに悩み、クリニックを受診し、神経性過食症と診断された。 来院時の身体所見:身長155 cm、体重48 kg、体温36.4℃、血圧104/60 mmHg、脈拍66/分(不整)。 検査所見:赤血球400万/μL、Hb 12.5 g/dL、白血球6,300/μL、Na 135 mEq/L、K 2.7 mEq/L、Cl 98 mEq/L、AST 30 IU/L(U/L)、ALT 35 IU/L(U/L)、γ-GTP 29 IU/L(U/L)、血糖92 mg/dL。
Aさんの来院時の所見から考えられるのはどれか。
- 1.貧血
- 2.低血糖
- 3.肝機能障害
- 4.低カリウム血症
対話形式の解説
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラPOINT
嘔吐を繰り返す神経性過食症患者の検査所見から、生命に関わる電解質異常を読み取れるかを問う問題。基準値と照らし合わせ、Kの著明な低下と不整脈所見を結びつけて考えることが鍵となる。
解答・解説
正解は4です
問題文:Aさんの来院時の所見から考えられるのはどれか。
解説:正解は 4 です。Aさんは神経性過食症で、過食の後に自己誘発嘔吐を繰り返している点が重要な臨床背景です。検査所見のうちK 2.7 mEq/Lは基準値(おおむね3.5〜5.0 mEq/L)を明らかに下回っており、低カリウム血症と判断できます。胃液(HCl)と消化液を反復して喪失することで、水素イオン・塩化物イオンとともにカリウムも体外へ失われ、代謝性アルカローシスを伴いながら血清Kが低下します。さらに低カリウム血症は心筋の電気的活動を不安定にするため、来院時に脈拍66/分(不整)と記載されている所見とも合致しており、不整脈の出現は摂食障害患者の突然死リスクとして特に注意すべき所見です。
選択肢考察
- ×1. 貧血
成人女性の貧血は一般にHb 12.0 g/dL未満で定義されることが多く、AさんはHb 12.5 g/dL、赤血球400万/μLでいずれも基準範囲内である。貧血を示唆する所見は得られない。
- ×2. 低血糖
血糖値は92 mg/dLであり、空腹時血糖の基準範囲(およそ70〜110 mg/dL)に収まっている。低血糖(一般に70 mg/dL未満)ではない。
- ×3. 肝機能障害
AST 30 IU/L、ALT 35 IU/L、γ-GTP 29 IU/Lはいずれも基準範囲内またはごく軽度で、明らかな肝機能障害を示すデータではない。
- ○4. 低カリウム血症
K 2.7 mEq/Lは基準値(3.5〜5.0 mEq/L程度)を大きく下回り、明確な低カリウム血症である。反復する自己誘発嘔吐による胃液喪失でKが失われた結果と考えられ、脈拍が不整である所見も低K血症による心筋興奮性異常で説明できる。
神経性過食症(Bulimia Nervosa)は過食エピソードと、体重増加を防ぐための不適切な代償行動(自己誘発嘔吐、下剤・利尿薬乱用、過剰な運動など)を特徴とする摂食障害である。嘔吐を繰り返す患者では低K血症・低Cl血症・代謝性アルカローシスが典型的に出現し、致死的不整脈(QT延長、心室頻拍)の原因となる。また自己誘発嘔吐では手背に吐きダコ(Russell徴候)、う蝕、耳下腺腫脹なども見られる。血清K 3.0 mEq/L未満は緊急対応の目安で、心電図モニタリングとともに慎重なK補正(急速静注は不整脈誘発のため避ける)を行う。神経性無食欲症(拒食症)と異なり体重は正常範囲のことが多く、外見からは重症度が見えにくい点も看護のポイントである。
嘔吐を繰り返す神経性過食症患者の検査所見から、生命に関わる電解質異常を読み取れるかを問う問題。基準値と照らし合わせ、Kの著明な低下と不整脈所見を結びつけて考えることが鍵となる。
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