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摂食障害の看護

精神看護学 / 神経症・パーソナリティ障害・その他

解説

摂食障害とは、食行動の異常と体重・体型へのとらわれを中心とする精神疾患の総称です。今回は摂食障害の看護について解説します。

摂食障害の総論

摂食障害(eating disorder)には、神経性やせ症(神経性無食欲症、anorexia nervosa)、神経性過食症(bulimia nervosa)、過食性障害などが含まれます。思春期から若年女性に好発し、心理・社会・家族的要因が複雑に関与します。なかでも神経性やせ症は精神疾患全体でみても死亡率が最も高い疾患の一つであり、低栄養に伴う身体合併症と自殺が主な死因となります。看護では身体管理と心理的支援を並行して進める姿勢が欠かせません。

神経性やせ症の診断とボディイメージ障害

DSM-5では神経性やせ症を、①必要量に対する摂取制限による有意な低体重、②体重増加や肥満に対する強い恐怖、③体重・体型に関する自己評価の歪み(ボディイメージ障害)、の3点で診断します。病型には食事制限が中心の制限型と、過食や自己誘発嘔吐・下剤乱用を伴う過食・排出型があります。BMI15未満は重症の目安です。

ボディイメージ障害をもつ患者に対して「太っていない」と直面化させる関わりは反発を招きやすく、治療同盟を損ねます。受容的・共感的傾聴を基本とし、痩せたい背景にある自己肯定感の低さ、対人関係、家族・社会的圧力を一緒に言語化していくことが看護の第一歩です。

身体合併症と入院早期の観察

低栄養により、低血糖、低カリウム血症、徐脈、低体温、低血圧、無月経、骨密度低下、脳萎縮、低アルブミン血症に伴う浮腫など、多臓器に影響が及びます。入院早期は、循環不全徴候としての浮腫、隠れ食い・自己誘発嘔吐・下剤乱用などの排出行動、ストレッチを続ける・食物を細かく刻むなどの過活動を注意深く観察します。

リフィーディング症候群とその予防

リフィーディング症候群は、長期飢餓状態の患者に急速に栄養を補給した際、糖質代謝亢進に伴って細胞内へリン・カリウム・マグネシウムが取り込まれ、低リン血症・低カリウム血症・低マグネシウム血症を生じる病態です。心不全、不整脈、呼吸不全、浮腫を引き起こし致死的となります。

予防として、栄養補給は10kcal/kg/日程度から段階的に増量し、開始前にリン・カリウム・マグネシウム、そしてウェルニッケ脳症予防のためのビタミンB1を補充します。電解質は頻回にモニタリングします。

看護の原則と心理療法

看護の基本は、症状を非難せず患者の体験を受けとめる受容的傾聴と治療同盟の構築です。心理療法では、摂食障害特化型の認知行動療法(CBT-E)、思春期例の第一選択である家族療法(FBT、Maudsley法)、対人関係療法(IPT)、衝動性が高い例での**弁証法的行動療法(DBT)**が用いられます。FBTは、①家族が食事管理を担う、②本人にコントロールを戻す、③自立と自己同一性を支える、の3段階で進みます。臨床心理士(公認心理師)が構造化セッションでCBTを提供し、看護師はセッション外の日常生活場面でアクションプラン実践とセルフモニタリングの振り返りを支援します。

神経性過食症の症状と合併症

神経性過食症では、過食エピソードに続いて自己誘発嘔吐、緩下薬・利尿薬乱用、絶食などの排出行動が反復されます。身体所見として、唾液腺腫大、歯のエナメル質喪失、手背の吐きダコであるラッセルサイン、食道炎、マロリー・ワイス症候群、脱水、月経異常などがみられます。

排出行動による胃酸喪失や低カリウム血症から、低クロール血症と代謝性アルカローシスが生じます。低カリウム血症の心電図では、T波平低化、U波出現、QT(QU)延長、ST低下、心室期外収縮を経て、心室頻拍やTorsades de pointes、心室細動に至る危険があります。血清K3.0mEq/L未満で不整脈リスクが高まり、2.5未満は緊急補正の適応です。神経性過食症では致死性不整脈が重要な死因となるため、心電図モニタリングを優先します。

自傷行為への対応と家族療法

自傷行為は「死ぬため」ではなく、不安・怒り・空虚感など耐えがたい情動への対処行動として行われることが多いです。看護では、傷を非難せず非審判的・受容的に話を聴き、氷を握る、ゴムバンドを手首ではじくなどの代替行動を共に考えます。批判や説得、二度としないという約束の強要は逆効果となります。DBTは情動調整スキルを高め、自傷の減少に有効です。

摂食障害は、自立と依存の葛藤、完璧主義、母娘の密着など家族関係が背景にあることが多く、家族療法は重要な治療選択肢となります。

まとめ

摂食障害の看護では、神経性やせ症の低栄養とリフィーディング症候群、神経性過食症の電解質異常と致死性不整脈という身体面のリスクを把握しつつ、ボディイメージ障害や自傷行為に対しては直面化を避け、受容的傾聴を基盤として治療同盟を築くことが重要です。心理療法と多職種・家族との連携を意識した支援が回復への鍵となります。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    摂食障害のうち、精神疾患のなかでも死亡率が最も高いとされるのはである。

  2. 2.

    神経性やせ症のDSM-5診断では、低体重、体重増加への強い恐怖に加え、体重・体型に関する自己評価の歪みであるが含まれる。

  3. 3.

    長期飢餓状態の患者に急速な栄養補給を行うことで、低リン血症・低カリウム血症・低マグネシウム血症が生じ、心不全や不整脈をきたす病態をという。

  4. 4.

    リフィーディング症候群の予防では、栄養補給をkcal/kg/日程度から段階的に開始し、ウェルニッケ脳症予防のためを事前に補充する。

  5. 5.

    神経性過食症で繰り返される自己誘発嘔吐により、胃酸が喪失してを呈する。

  6. 6.

    自己誘発嘔吐を反復する患者の手背に生じる吐きダコをという。

  7. 7.

    低カリウム血症の心電図では、T波平低化に続いてが出現し、QT延長や心室頻拍、Torsades de pointesなどの致死性不整脈に至る危険がある。

  8. 8.

    思春期の神経性やせ症で第一選択とされる、家族が食事管理を担う段階から始まる家族療法は(FBT)と呼ばれる。

  9. 9.

    衝動性や自傷行為を伴う症例で、情動調整スキルの獲得を目的に用いられる心理療法は(DBT)である。

  10. 10.

    ボディイメージ障害をもつ患者への看護では、誤りを指摘する直面化を避け、・共感的傾聴を通じて治療同盟を築くことが基本である。

摂食障害の看護」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。