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過食がやめられない患者さんへの最初の一言 セルフモニタリングという治療技法

看護師国家試験 第115午前116(状況設定問題)

国試問題にチャレンジ

115午前116

状況設定

Aさん(24歳、女性)は両親と3人で暮らしている。会社員として働いているが、最近責任の大きな仕事が増えていた。仕事帰りにコンビニエンスストアでサンドイッチやおにぎりなどを買い込み、家族が寝た後に一気に食べるようになった。量が増えていき、食べた後に自ら嘔吐することを繰り返すようになった。過食嘔吐をやめられないことに悩み、クリニックを受診し、神経性過食症と診断された。 来院時の身体所見:身長155 cm、体重48 kg、体温36.4℃、血圧104/60 mmHg、脈拍66/分(不整)。 検査所見:赤血球400万/μL、Hb 12.5 g/dL、白血球6,300/μL、Na 135 mEq/L、K 2.7 mEq/L、Cl 98 mEq/L、AST 30 IU/L(U/L)、ALT 35 IU/L(U/L)、γ-GTP 29 IU/L(U/L)、血糖92 mg/dL。

2回目の外来受診日に、Aさんから外来看護師に「過食がやめられません。私はどうすればいいのでしょうか」と神経性過食症との付き合い方について相談があった。 外来看護師の声かけとして適切なのはどれか。

  1. 1.「毎食の食事は手作りしましょう」
  2. 2.「過食したくなるときの状況を記録してみましょう」
  3. 3.「家族の力は借りず自分の力で頑張っていきましょう」
  4. 4.「理想体重を維持できるよう毎日体重計に乗りましょう」

対話形式の解説

博士博士
今日は神経性過食症の外来支援についてじゃ。Aさんは24歳の会社員で、仕事のストレスから夜中に過食嘔吐を繰り返しておる。2回目の受診で「過食がやめられません、どうすればいいでしょうか」と看護師に相談してきた場面じゃ。
サクラサクラ
うーん、難しいです…。「頑張りましょう」とか「手作りしてみては」と言いたくなりますが、なんだか違う気がします。
博士博士
鋭い直感じゃな。その「違和感」が大事なのじゃ。摂食障害の患者さんに対して、努力や根性で乗り越えさせようとする声かけは、ほぼ全て逆効果になる。なぜなら、本人はすでに必死で努力しておるからじゃ。
サクラサクラ
じゃあ正解は何ですか?
博士博士
正解は2の「過食したくなるときの状況を記録してみましょう」じゃ。これは「セルフモニタリング」と呼ばれる、認知行動療法の中核技法なのじゃよ。
サクラサクラ
セルフモニタリング…?日記みたいなものですか?
博士博士
近いが、もう少し構造化されておる。過食が起こった時刻、場所、その直前の気分、何があったか、何をどれくらい食べたか、嘔吐したか、を記録するのじゃ。すると本人も気づいていなかった「引き金」が見えてくる。
サクラサクラ
あ、なるほど!「上司に叱られた日の夜に過食している」とか「金曜の帰り道に必ず買い込む」とか、パターンが見えるんですね。
博士博士
その通り!引き金が分かれば、過食以外の対処法を一緒に考えられる。例えば「金曜の帰り道はコンビニを通らない道を選ぶ」「ストレスがたまったら友人に電話する」とかな。これを「行動置換」と呼ぶ。
サクラサクラ
他の選択肢はなぜダメなんですか?1の「毎食手作り」は健康的に聞こえますが…
博士博士
それが落とし穴じゃ。仕事で疲れ切っている人に毎食の自炊を課したら、できなかった時に「またダメだった」と自責感が強まる。摂食障害の治療では失敗体験を増やさないことが鉄則なのじゃ。
サクラサクラ
3の「家族の力を借りず自分で頑張る」は…明らかにダメですね。摂食障害は孤立すると悪化しそうです。
博士博士
その通り。社会的支援は治療資源の柱の一つじゃ。そして4の「毎日体重計に乗る」も罠じゃ。摂食障害の本質は体重・体型への過剰なとらわれ。毎日測れば数値に振り回され、悪循環が強化される。
サクラサクラ
なるほど…全部「一見良さそうだけど実は逆効果」なんですね。摂食障害の支援は普通の生活指導とはまったく違うんですね。
博士博士
うむ。さらに重要なのは身体面じゃ。Aさんは前問で見たように血清カリウムが2.7 mEq/Lと低カリウム血症で、脈拍も不整。嘔吐による電解質喪失は致死的不整脈につながり得るから、心理支援と並行して身体管理が必須じゃ。
サクラサクラ
心と体の両方を見るんですね。看護師が外来でできることは何でしょう?
博士博士
非批判的に傾聴すること、治療継続を支えること、そして患者さんが「責められない安全な場所」と感じてもらうことじゃ。記録を見せてもらっても「できた・できない」を評価せず、一緒にパターンを探す姿勢が大事なのじゃよ。
サクラサクラ
責めない、孤立させない、体重に焦点化しない。摂食障害支援の3原則として覚えます!

POINT

神経性過食症の外来初期支援における基本姿勢を問う問題。「責めない」「孤立させない」「体重に焦点化しない」「セルフモニタリングで引き金を可視化する」という認知行動療法的アプローチが鍵となる。

解答・解説

正解は2です

問題文:2回目の外来受診日に、Aさんから外来看護師に「過食がやめられません。私はどうすればいいのでしょうか」と神経性過食症との付き合い方について相談があった。 外来看護師の声かけとして適切なのはどれか。

解説:正解は 2 です。神経性過食症(神経性大食症、bulimia nervosa)は、短時間に大量の食物を制御感を失った状態で摂取する「過食エピソード」と、体重増加を防ぐための代償行動(自己誘発性嘔吐、下剤・利尿薬乱用、絶食、過剰運動など)を反復する摂食障害である。Aさんは仕事のストレスを背景に過食嘔吐を繰り返しており、低カリウム血症や不整脈という身体的リスクも抱えている。 外来治療の初期段階で推奨される基本的アプローチは、認知行動療法(CBT-E:摂食障害に特化した強化型認知行動療法)に基づく「セルフモニタリング」である。過食が起こる時間帯・場所・直前の気分や出来事・食べた内容・嘔吐の有無などを毎日記録することで、過食の「引き金(トリガー)」となる感情・状況・思考パターンが可視化される。引き金を認識できれば、過食以外の対処行動(誰かに連絡する、散歩する、深呼吸するなど)を一緒に考えることができ、患者自身が自己コントロール感を取り戻す第一歩となる。「過食したくなるときの状況を記録してみましょう」という声かけは、患者を責めず、具体的で実行可能な行動を提示しており、援助的かつ治療的に妥当である。

選択肢考察

  1. ×1.  「毎食の食事は手作りしましょう」

    毎食の手作りは時間的・心理的負担が大きく、仕事のストレスを背景に過食している現状ではかえって失敗体験を積ませる可能性が高い。食事準備そのものが新たなストレッサーとなり、症状を悪化させかねないため不適切。

  2. 2.  「過食したくなるときの状況を記録してみましょう」

    認知行動療法の中核技法であるセルフモニタリング。過食衝動が生じる時刻・場面・感情・直前の出来事を本人が記録することで、引き金が客観化され、代替行動を検討する糸口になる。看護師が共に振り返る対話の素材としても有効であり、外来治療初期の声かけとして最も適切。

  3. ×3.  「家族の力は借りず自分の力で頑張っていきましょう」

    摂食障害は孤立化により悪化しやすい疾患であり、家族や周囲のサポート資源を活用することが治療継続の鍵となる。支援資源を遮断するような助言は、本人の孤独感や自責感を強め、回復から遠ざけてしまうため不適切。

  4. ×4.  「理想体重を維持できるよう毎日体重計に乗りましょう」

    摂食障害患者は体重や体型へのとらわれ(ボディイメージの障害)が症状の中核にある。毎日の体重測定は数値への過剰な注目を強化し、自己評価の不安定化や過食嘔吐の悪循環を助長するため避けるべき。

神経性過食症の治療は、(1)身体管理(電解質補正、特に低カリウム血症と不整脈への注意)、(2)心理療法(認知行動療法CBT-E、対人関係療法IPTなど)、(3)薬物療法(SSRIのフルオキセチンが過食衝動軽減に有効)、(4)家族・社会的支援の4本柱で構成される。外来看護師の役割は、症状を責めず非批判的態度で傾聴し、治療継続を支えることが第一。セルフモニタリング記録は本人が「気づき」を得るためのツールであり、達成度を評価する手段ではない点を伝えると患者の負担が減る。神経性やせ症(拒食症)と異なり体重が標準範囲内のことも多いが、嘔吐による電解質異常・う歯・唾液腺腫脹・Russell徴候(手背の擦過傷)などの身体徴候は見逃さない。

神経性過食症の外来初期支援における基本姿勢を問う問題。「責めない」「孤立させない」「体重に焦点化しない」「セルフモニタリングで引き金を可視化する」という認知行動療法的アプローチが鍵となる。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。