過食症の家族をどう支える?叱責から理解へ、看護師が担う橋渡し
看護師国家試験 第115回 午前 第117問(状況設定問題)
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状況設定
Aさん(24歳、女性)は両親と3人で暮らしている。会社員として働いているが、最近責任の大きな仕事が増えていた。仕事帰りにコンビニエンスストアでサンドイッチやおにぎりなどを買い込み、家族が寝た後に一気に食べるようになった。量が増えていき、食べた後に自ら嘔吐することを繰り返すようになった。過食嘔吐をやめられないことに悩み、クリニックを受診し、神経性過食症と診断された。 来院時の身体所見:身長155 cm、体重48 kg、体温36.4℃、血圧104/60 mmHg、脈拍66/分(不整)。 検査所見:赤血球400万/μL、Hb 12.5 g/dL、白血球6,300/μL、Na 135 mEq/L、K 2.7 mEq/L、Cl 98 mEq/L、AST 30 IU/L(U/L)、ALT 35 IU/L(U/L)、γ-GTP 29 IU/L(U/L)、血糖92 mg/dL。
Aさんは受診時に母親と一緒に来院した。母親から「父親は、普段はAとあまり話すことはありませんが、過食を見つけると我慢が足りないからだとAを叱ります。私は食費が高くて困っています。どうしたらいいのでしょう」と外来看護師に相談があった。 看護師が母親に行う支援として、適切なのはどれか。2つ選べ。
- 1.家族心理教育や家族会を紹介する。
- 2.疾患による家計への影響は仕方がないと伝える。
- 3.食行動の異常には厳しく接するように指導する。
- 4.Aさんの疾患や今後の見通しについて説明をする。
- 5.家族が原因であるため、すぐ態度を改めるよう指導する。
対話形式の解説
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士POINT
神経性過食症の家族からの相談に対する適切な支援を問う問題。「家族を責めない」「叱責ではなく理解を促す」「家族を治療パートナーとして資源につなぐ」という摂食障害支援の原則を押さえているかが鍵。
解答・解説
正解は1です
問題文:Aさんは受診時に母親と一緒に来院した。母親から「父親は、普段はAとあまり話すことはありませんが、過食を見つけると我慢が足りないからだとAを叱ります。私は食費が高くて困っています。どうしたらいいのでしょう」と外来看護師に相談があった。 看護師が母親に行う支援として、適切なのはどれか。2つ選べ。
解説:正解は 1 と 4 です。神経性過食症は本人だけでなく家族全体に大きな影響を及ぼす疾患であり、家族が病気を「我慢の問題」「本人の意志の弱さ」と誤解したまま叱責を続けると、Aさんの自己評価がさらに低下し、過食嘔吐がエスカレートする悪循環に陥りやすい。看護師がまず行うべき支援は、母親に対して摂食障害が脳機能や心理社会的要因を背景に持つ精神疾患であることを正しく理解してもらい(選択肢4)、同じ立場にある家族と経験を共有できる家族心理教育プログラムや家族会などの社会資源につなぐこと(選択肢1)である。家族の対応が「叱責から共感的理解へ」と変わることで、本人の回復環境が整い、治療継続率も上がることが知られている。
選択肢考察
- ○1. 家族心理教育や家族会を紹介する。
家族心理教育は、疾患の特徴・経過・対応方法を系統的に学ぶプログラムであり、家族会は同じ悩みを抱える家族同士が体験を共有し孤立感を和らげる場である。摂食障害領域では再発予防・治療継続に有効性が報告されており、母親自身の疲弊軽減にもつながる。経済的負担(食費)の相談先や行政・自助グループの情報提供も含めて紹介することが望ましい。
- ×2. 疾患による家計への影響は仕方がないと伝える。
「仕方がない」と突き放す対応は、母親の困り感を受け止めないことになり援助関係を損なう。食費負担は現実的な問題であり、買い置きの管理方法、自治体の相談窓口、医療費助成制度の活用など具体的な工夫を一緒に考える姿勢が求められる。
- ×3. 食行動の異常には厳しく接するように指導する。
叱責や厳しい監視は、本人の罪悪感・自己嫌悪を強め、隠れての過食嘔吐を助長して症状を悪化させる。神経性過食症の家族対応は「責めない・批判しない・本人の苦しみを理解する」ことが基本であり、厳しく接するよう指導するのは禁忌に近い対応である。
- ○4. Aさんの疾患や今後の見通しについて説明をする。
神経性過食症は意志の問題ではなく治療を要する精神疾患であること、回復には時間を要するが治療を継続すれば改善が期待できることを説明することで、家族の誤解が解け、Aさんへの接し方が変わるきっかけになる。父親の「我慢が足りない」という認識を修正し、家族全体で治療を支える土台づくりにつながる。
- ×5. 家族が原因であるため、すぐ態度を改めるよう指導する。
摂食障害の発症には遺伝的素因・性格傾向・ストレス・社会文化的要因など多因子が関与しており、家族を原因として断定するのは不正確かつ有害である。家族を責める姿勢は罪悪感を生み、治療への協力意欲を削いでしまうため、家族を「治療パートナー」として位置づける関わりが原則である。
神経性過食症(Bulimia Nervosa)は、反復するむちゃ食いエピソードと、体重増加を防ぐための不適切な代償行動(自己誘発嘔吐・下剤乱用・絶食・過剰運動など)を特徴とする摂食障害である。患者本人は症状を恥じて隠す傾向が強く、家族が気づいたときには電解質異常(特に低K血症)や歯のエナメル質侵食、唾液腺腫脹、手背のタコ(Russell徴候)などが進行していることも多い。家族支援では、(1)疾患教育、(2)感情表出(EE)の調整(批判・敵意・過干渉を減らす)、(3)家族自身のセルフケア、(4)家族会・自助グループの活用、が4つの柱となる。経済的負担については自立支援医療制度(精神通院医療)による医療費軽減なども情報提供できる。
神経性過食症の家族からの相談に対する適切な支援を問う問題。「家族を責めない」「叱責ではなく理解を促す」「家族を治療パートナーとして資源につなぐ」という摂食障害支援の原則を押さえているかが鍵。
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