StudyNurse

消化器の解剖と生理

人体の構造・機能 / 消化器・代謝・内分泌

解説

今回は消化器の解剖と生理について解説します。 消化器系は、口から肛門までの長い管(消化管)と、これに付属する肝臓・胆嚢・膵臓などの臓器から構成され、食物の消化・吸収・排泄を担います。国試では各臓器の細胞種と分泌物、吸収経路、神経支配などが繰り返し問われます。

消化管の上皮組織

消化管の内腔は粘膜で覆われており、部位によって上皮の種類が異なります。胃・小腸・大腸・胆嚢などには単層円柱上皮が分布します。単層円柱上皮は1層の背の高い円柱状細胞からなり、分泌と吸収に適した構造です。一方、食道や口腔・肛門管下部のように物理的刺激にさらされる部位は重層扁平上皮で覆われています。膀胱・尿管・腎盂は移行上皮、気管・気管支は多列線毛上皮、肺胞や血管内皮は単層扁平上皮、甲状腺濾胞や尿細管は単層立方上皮です。

胃と胃酸分泌

胃底腺の細胞と分泌物

胃底腺には4種類の細胞が存在し、それぞれ異なる分泌物を出します。主細胞はペプシノーゲンを分泌し、これは不活性な前駆体ですが胃酸により活性化されてペプシン(タンパク分解酵素)となります。壁細胞(傍細胞)は塩酸(胃酸)と内因子を分泌します。内因子はビタミンB12の吸収に必須で、欠乏すると悪性貧血を生じます。副細胞は粘液(ムチン)を分泌して胃粘膜を保護し、幽門腺のG細胞はガストリンを分泌します。

胃酸分泌の調節

胃酸分泌を促進する因子はアセチルコリン(M3受容体)・ガストリン(CCK2受容体)・ヒスタミン(H2受容体)の3つで、最終的に壁細胞のプロトンポンプ(H+/K+ATPase)が胃酸を分泌します。PPI(プロトンポンプ阻害薬)はこの最終段階を遮断します。抑制因子はセクレチン・コレシストキニン(CCK)・ソマトスタチン・GIPで、酸性内容物が十二指腸に流入するとS細胞からセクレチンが分泌され、ガストリンを抑制すると同時に膵HCO3-分泌を促します。胃酸分泌は脳相・胃相・腸相の3相で調節されます。

膵臓の外分泌と内分泌

膵臓は外分泌腺と内分泌腺の両方の機能をもちます。外分泌として1日1〜1.5Lの膵液を分泌し、膵液は弱アルカリ性(pH約8)でHCO3-に富み、十二指腸で酸性粥状物を中和します。膵酵素にはアミラーゼ(糖質分解)、トリプシン・キモトリプシン・カルボキシペプチダーゼ(蛋白分解)、リパーゼ(脂肪分解)、RNase・DNase(核酸分解)が含まれ、三大栄養素のすべてを分解できます。トリプシノーゲンは不活性前駆体として分泌され、十二指腸でエンテロキナーゼにより活性化されてトリプシンとなります。膵内で活性化が起こると急性膵炎を発症します。セクレチンは水分・電解質の豊富な膵液分泌を促し、CCKは膵酵素分泌と胆嚢収縮を促進します。 内分泌はランゲルハンス島が担い、α細胞からグルカゴン、β細胞からインスリン、δ細胞からソマトスタチン、PP細胞から膵ポリペプチドが分泌されます。

胆汁と腸肝循環

胆汁は肝細胞がコレステロールから一次胆汁酸(コール酸・ケノデオキシコール酸)を合成し、グリシンやタウリンと抱合して分泌したものです。胆汁は脂肪を乳化して膵リパーゼによる消化を助け、脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の吸収を促進します。一次胆汁酸は腸内細菌により二次胆汁酸(デオキシコール酸・リトコール酸)となり、約95%が回腸末端で再吸収されて肝臓に戻ります。この経路を腸肝循環といいます。

小腸での吸収経路

小腸で吸収された栄養素は2つの経路で全身に運ばれます。単糖類・アミノ酸・電解質・水溶性ビタミン・短鎖および中鎖脂肪酸は毛細血管から門脈を経て肝臓へ運ばれます(門脈系)。一方、中性脂肪(トリグリセリド)・コレステロール・脂溶性ビタミンはカイロミクロンとしてリンパ管に取り込まれ、胸管を経由します。胸管は最終的に左鎖骨下静脈に合流して血液循環へ入ります。

門脈系と肝臓

門脈は上腸間膜静脈・下腸間膜静脈・脾静脈などが合流して形成され、肝門から肝臓に入ります。消化管の毛細血管→門脈→肝臓類洞と、毛細血管を2度通過するのが特徴です。肝硬変などで門脈圧が亢進すると、側副血行路として食道静脈瘤・メズサの頭(腹壁静脈怒張)・痔静脈瘤が出現します。 肝臓は「人体の化学工場」と呼ばれ、糖代謝(グリコーゲン貯蔵・糖新生)、脂質代謝(コレステロール合成・ケトン体産生)、蛋白合成(アルブミン・凝固因子)、解毒(アンモニア→尿素)、胆汁産生、貯蔵(グリコーゲン・ビタミンADEK・B12・鉄)など多彩な機能を担います。肝硬変・肝不全では低アルブミン血症による浮腫・腹水、凝固因子低下による出血傾向、高アンモニア血症による肝性脳症、ビリルビン代謝障害による黄疸が出現します。

直腸・肛門と排便のしくみ

直腸は長さ約20cmで、上部には漿膜がありますが下部にはありません。粘膜には腸腺(リーベルキューン腺)が発達し、杯細胞が粘液を分泌します。肛門管には歯状線という境界があり、ここで円柱上皮から重層扁平上皮へ移行します。歯状線より上にできる痔核は内痔核(無痛)、下にできるものは外痔核(有痛)です。 排便反射は、便が直腸壁を伸展させると骨盤神経を介して仙髄の排便中枢に伝わり、内肛門括約筋(平滑筋・不随意)が弛緩することで始まります。続いて陰部神経を介して外肛門括約筋(横紋筋・随意)が弛緩し、排便に至ります。排便時の努責(バルサルバ手技)では、声門を閉じて呼息位で息を止めながら横隔膜と腹筋を収縮させて腹腔内圧を高めます。腹圧上昇に伴い血圧・頭蓋内圧・眼圧も一過性に上昇するため、心疾患や脳血管障害患者では注意が必要です。

まとめ

消化器系では、胃の主細胞・壁細胞・副細胞・G細胞の分泌物と内因子の役割、膵液の弱アルカリ性とトリプシノーゲンのエンテロキナーゼによる活性化、胆汁酸の腸肝循環、脂溶性物質がカイロミクロンとして胸管経由で左鎖骨下静脈に入る経路、門脈系の二重毛細血管構造、排便時の内・外肛門括約筋の支配神経、肝臓の代謝・解毒・合成機能が国試頻出のポイントです。各部位の細胞と分泌物・調節因子を関連づけて整理することが攻略の鍵となります。

確認問題(穴埋め)

空欄をタップすると答えが表示されます。

  1. 1.

    胃や小腸の粘膜のように、分泌や吸収に適した1層の背の高い細胞からなる上皮をという。

  2. 2.

    胃底腺の壁細胞は塩酸とともに、ビタミンB12の吸収に必要なを分泌する。

  3. 3.

    胃底腺の主細胞から分泌される不活性な前駆体で、胃酸により活性化されてペプシンとなるものをという。

  4. 4.

    酸性内容物が十二指腸に流入するとS細胞から分泌され、ガストリンを抑制して膵HCO3-分泌を促進する消化管ホルモンをという。

  5. 5.

    膵液は重炭酸イオンに富み、pHは約8ので、十二指腸内の酸性粥状物を中和する。

  6. 6.

    膵臓から不活性な前駆体トリプシノーゲンとして分泌され、十二指腸でにより活性化されてトリプシンとなる。

  7. 7.

    胆汁酸は肝細胞においてから合成され、脂肪の乳化と脂溶性ビタミン吸収を助ける。

  8. 8.

    小腸で吸収された中性脂肪や脂溶性ビタミンはとしてリンパ管に取り込まれ、胸管を経て左鎖骨下静脈に合流する。

  9. 9.

    一次胆汁酸の約95%が回腸末端で再吸収されて肝臓に戻る経路をという。

  10. 10.

    排便時に声門を閉じて息を止め、腹筋と横隔膜を収縮させて腹腔内圧を高める動作をという。

消化器の解剖と生理」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。