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神経学的診察(小脳・反射・徴候)

基礎看護学 / バイタル・フィジカルアセスメント

解説

今回は神経学的診察、特に小脳機能・深部腱反射・錐体路徴候・麻痺の分類について解説します。

神経学的診察の全体像

神経学的診察とは、脳・脊髄・末梢神経のどこに障害があるかを身体所見から推定するための診察法です。意識・脳神経・運動・感覚・反射・協調運動・歩行などを系統的に観察し、所見の組み合わせから障害部位を絞り込みます。看護師国試では、それぞれの手技が「神経系のどの部分」を評価しているかを正しく結びつけることが繰り返し問われます。

運動ニューロンと錐体路の基礎

運動は、大脳皮質運動野から始まる上位運動ニューロンと、脊髄前角細胞から筋へ向かう下位運動ニューロンの2段階で支配されます。上位運動ニューロンの軸索は束となって錐体路を形成し、延髄で大部分が交叉して反対側の脊髄を下行します。このため、一側の大脳半球の障害では反対側の手足に麻痺が出ます。錐体路が障害されると、腱反射の亢進、痙性、病的反射の出現といった所見がみられます。逆に、下位運動ニューロンや末梢神経が障害されると、腱反射の低下・消失、筋萎縮、弛緩性麻痺がみられます。

麻痺の分類

麻痺は分布によって名前が決まります。身体の左右どちらか一側の上下肢に出る麻痺を片麻痺といい、脳血管障害による上位運動ニューロン障害で最も多くみられます。両下肢の麻痺は対麻痺で、脊髄損傷などで生じます。両上下肢の麻痺は四肢麻痺、一肢のみの麻痺は単麻痺、顔面と反対側の体幹・四肢に出る麻痺は交叉性麻痺と呼ばれ、脳幹部の病変で生じます。

軽度の運動麻痺を捉えるBarré徴候

錐体路障害による軽度の片麻痺は、安静時には気づきにくいことがあります。これを引き出す代表的な手技がBarré(バレー)徴候です。患者に両上肢を肩の高さまで前方に挙上させ、手のひらを上に向けて(回外位)肘を伸展した状態で閉眼させ、10〜30秒保持してもらいます。錐体路に障害があると、麻痺側の上肢が徐々に回内しながら下降します。これがバレー徴候陽性所見です。下肢では腹臥位で両膝を約45度から90度に屈曲させ、麻痺側が徐々に下降する所見でみます。

深部腱反射と髄節レベル

深部腱反射は、腱を打腱器で叩打して筋紡錘を伸展させ、反射的に筋を収縮させる伸張反射です。反射弓は感覚神経から脊髄の特定分節を経て運動神経に戻るため、反射の有無や左右差から障害髄節を推定できます。代表的な反射と支配髄節の対応は、上腕二頭筋反射がC5〜C6、上腕三頭筋反射がC7〜C8、膝蓋腱反射がL2〜L4、アキレス腱反射がS1〜S2です。膝蓋腱反射は膝を軽く屈曲した状態で膝蓋骨直下の膝蓋腱を叩くと大腿四頭筋が収縮し、下腿が前方に蹴り上がります。求心路・遠心路ともに大腿神経を介するため、L2〜L4の機能評価に用いられます。 反射の減弱・消失は下位運動ニューロンや末梢神経、脊髄分節そのものの障害を示唆し、反射の亢進は錐体路(上位運動ニューロン)障害を示唆します。評価では必ず左右を比較します。

病的反射

健常者ではみられず、錐体路障害で出現する反射を病的反射といいます。代表はBabinski(バビンスキー)反射で、足底の外側を踵から小趾の付け根に向けてゆっくりこすると、母趾が背屈し他の趾が扇状に開きます。Chaddock反射、Hoffmann反射なども同様に錐体路障害の徴候です。

小脳機能検査

小脳は運動の協調・平衡・筋緊張の調節を担います。小脳が障害されると、目標までの距離を測りそこなう測定異常、目標に近づくほど震えが強くなる企図振戦、動作が分節的になる運動分解などが出現します。 小脳機能を評価する代表的な検査が**指鼻試験(指鼻指試験)**です。患者に自分の鼻先と検者の指先を交互にできるだけ速く触れさせ、上肢の協調運動を観察します。下肢では踵膝試験を行います。手のひらを返す動作を繰り返させる回内回外試験は反復拮抗運動を評価し、拙劣であれば変換運動障害と判定します。立位で両足を揃え、開眼と閉眼で動揺を比べるRomberg試験は平衡機能をみる検査ですが、小脳性失調では開眼でも倒れやすく、開閉眼で差が出にくいのが特徴です。

音叉を用いる聴力検査

神経学的診察には聴力の簡易検査も含まれます。Weber(ウェーバー)試験は振動させた音叉を前額部正中や頭頂部に当て、左右どちらの耳でより大きく聞こえるかをみる検査です。伝音性難聴では患側に音が偏倚し、感音性難聴では健側に偏倚します。Rinne試験と組み合わせて難聴の型を推定します。打腱器は腱反射、検眼鏡は眼底検査に用いる器具であり、聴力検査には使いません。

まとめ

神経学的診察では、それぞれの手技がどの部位を評価しているかを区別することが重要です。バレー徴候は錐体路障害による軽度の片麻痺を、膝蓋腱反射はL2〜L4の脊髄分節と大腿神経を、指鼻試験は小脳の協調運動機能を、ウェーバー試験は音叉を用いた聴力評価をそれぞれみています。腱反射の亢進と病的反射の出現は上位運動ニューロン障害、反射の消失と弛緩性麻痺は下位運動ニューロン障害を示唆します。麻痺の分類では、一側上下肢に生じる片麻痺が脳血管障害で最も多いことを押さえておきましょう。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    両上肢を肩の高さで前方に挙上し、手掌を上に向けて閉眼させたとき、麻痺側上肢が回内しながら下降する所見を陽性という。

  2. 2.

    バレー徴候陽性は、大脳皮質運動野から脊髄前角細胞に至るの障害を示唆し、脳梗塞や脳出血が原因となる。

  3. 3.

    膝蓋腱反射の反射中枢は第に存在し、この部位の障害評価に用いられる。

  4. 4.

    深部腱反射のうち、アキレス腱反射の支配髄節はである。

  5. 5.

    腱反射が消失・低下している場合は末梢神経や下位運動ニューロンの障害、亢進している場合はの障害を示唆する。

  6. 6.

    足底の外側を踵から小趾の付け根に向けてこすると母趾が背屈する病的反射をといい、錐体路障害で陽性となる。

  7. 7.

    患者に自分の鼻先と検者の指先を交互に触れさせて上肢の協調運動を評価する検査をといい、を評価する。

  8. 8.

    振動させた音叉を前額部正中に当てて左右の聞こえ方を比較する聴力検査をといい、検査器具としてを用いる。

  9. 9.

    身体の左右どちらか一側の上下肢に生じる麻痺をといい、脳血管障害による上位運動ニューロン障害で最も多くみられる。

神経学的診察(小脳・反射・徴候)」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。