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経鼻経管栄養

基礎看護学 / 食事・嚥下・排泄援助

解説

経鼻経管栄養とは、鼻腔から食道を経て胃内にカテーテル(経鼻胃管)を留置し、栄養剤や水分、薬液を直接消化管へ投与する経腸栄養法の一つです。今回は経鼻経管栄養について、解剖学的な距離から挿入手技、留置位置の確認方法、注入時の体位、合併症と看護観察までを体系的に解説します。

経腸栄養法の位置づけ

経腸栄養法とは、経口摂取が困難な患者に対して、消化管へ直接栄養剤を投与する栄養補給法の総称です。投与経路には鼻から胃にチューブを通す経鼻胃管法、腹壁から胃に瘻孔を造設する胃瘻(PEG)、空腸に瘻孔を造設する腸瘻があります。経鼻経管栄養は、嚥下障害や意識障害があり経口摂取ができない患者、あるいは数週間程度の比較的短期間の栄養補給が必要な患者に適応されます。消化管が機能している限り、中心静脈栄養などの経静脈栄養よりも生理的で、腸管粘膜の萎縮や感染合併症を抑える利点があります。

挿入時の解剖学的距離と体位

成人の鼻孔から胃の入口である噴門までの長さは、鼻孔から咽頭まで約15cm、咽頭が約10cm、食道が約25cmで、合わせて概ね45〜55cmとなります。個別の挿入長を推定する目安として、鼻尖から耳朶を経て剣状突起までの長さを測るNEX法が臨床で用いられます。

挿入時の体位は、座位または半坐位(ファウラー位)が基本です。重力を利用してチューブが食道側へ進みやすく、また誤嚥のリスクも軽減されます。

挿入手技の流れ

カテーテルが鼻腔から咽頭に達するまでは、頸部をやや伸展させると鼻腔から咽頭へのカーブが緩やかになり通過しやすくなります。チューブが咽頭に達したら、今度は頸部を前屈させて顎を引いた姿勢にし、同時に嚥下運動を促します。頸部を前屈すると喉頭蓋が気管入口を閉じて食道への誘導が確実になるためです。嚥下のタイミングに合わせてゆっくりと進めることで、気管への誤挿入を防ぎます。

挿入中に患者が激しく咳き込む、チアノーゼを呈する、声が出ないといった症状が出現した場合は、チューブが気管へ誤挿入されている可能性が高く、直ちに抜去して呼吸状態を確認します。気管誤挿入を見逃したまま栄養剤を注入すると、窒息や重篤な肺炎、肺損傷を起こすため重大事故につながります。

胃内留置の確認方法

チューブの先端が確実に胃内にあることの確認は、安全管理の要です。最も確実な方法はX線撮影ですが、毎回行うことは現実的でないため初回挿入後や位置のずれが疑われる時に実施します。ベッドサイドで最も推奨されるのは、シリンジで吸引した内容物が胃内容物(黄褐色〜緑色の胃液や食物残渣)であることを確認する方法で、必要に応じてpH試験紙でpH5.5以下の酸性であることを確かめます。気管に誤挿入されていれば通常は胃内容物を引くことはできません。心窩部に聴診器を当てて空気注入時の気泡音を聴取する方法は古くから用いられてきましたが、気管や食道、胸腔内に誤挿入されていても似た音が聞こえるため信頼性が低く、現在は補助的位置づけにとどまります。

位置確認は留置時の一度だけでは不十分で、体動・嘔気・咳嗽・固定テープのずれなどでチューブが逸脱する可能性があるため、栄養剤や薬液を注入する前には毎回確認することが必須です。

注入時の体位と速度

栄養剤注入時の体位は、上半身を30〜45度挙上した**Fowler位(半坐位)**とします。半坐位は重力により胃内容の食道への逆流を抑制し、胃から十二指腸への排出を促進するため、誤嚥性肺炎の予防に直結します。注入中だけでなく、注入後も30分〜1時間はそのままの体位を維持してから体位変換を行います。栄養剤は体温程度に温め、指示された速度(一般に200〜400mL/時程度)で重力滴下または注入ポンプを用いて投与します。注入前後には白湯20〜30mLでチューブ内をフラッシュし、開通を保ちます。

経腸栄養剤の合併症

経腸栄養剤に伴う合併症は、消化器系、代謝性、機械的の三つに大別されます。最も頻度が高いのは消化器系合併症のうちの下痢で、施行患者の2〜5割に認められると報告されています。下痢の原因には、栄養剤の浸透圧が高いこと、投与速度が速すぎること、温度が低いこと、乳糖不耐症、栄養剤の細菌汚染、抗菌薬併用による腸内細菌叢の乱れなどがあります。下痢のほか、悪心・嘔吐、便秘、腹部膨満も生じやすく、対策としては投与速度を遅くする、栄養剤を人肌程度に温める、半固形栄養剤への変更、整腸剤の使用などが挙げられます。代謝性合併症には高血糖、電解質異常、低栄養状態からの急速な栄養投与で起こるrefeeding症候群があります。機械的合併症にはチューブの位置異常、チューブ閉塞、鼻翼や皮膚の損傷などがあります。

看護観察のポイント

看護師は、消化器症状(下痢・嘔吐・腹部膨満)、誤嚥徴候(咳嗽・呼吸状態の変化・発熱)、チューブ固定部位の皮膚状態、固定テープのずれと挿入長のマーキング、口腔内の清潔保持を継続的に観察します。経口摂取がなくても唾液分泌は減少するため、口腔ケアによる口腔内乾燥と感染予防が重要となります。長期に栄養管理が必要な場合は、胃瘻(PEG)など別の経路への切り替えが検討されます。

確認問題(穴埋め)

空欄をタップすると答えが表示されます。

  1. 1.

    経鼻経管栄養法において、成人の鼻孔から噴門までの長さは概ねである。

  2. 2.

    経鼻胃管挿入時の体位は座位または半坐位()が基本である。

  3. 3.

    カテーテルが咽頭に達したら頸部をさせ、嚥下を促して食道へ誘導する。

  4. 4.

    挿入中に激しい咳嗽・チアノーゼ・声が出ないなどが出現した場合、気管誤挿入が疑われるためする。

  5. 5.

    胃内留置の確認で最も確実かつ安全な方法は、吸引物がであることを確認する方法である。

  6. 6.

    栄養剤注入時は上半身を30〜45度挙上した(半坐位)を保ち、誤嚥性肺炎を予防する。

  7. 7.

    注入後もは同じ体位を維持してから体位変換を行う。

  8. 8.

    経腸栄養剤の合併症のうち最も頻度が高い消化器症状はである。

  9. 9.

    栄養剤や薬液の注入前には胃内留置を確認する必要がある。

経鼻経管栄養」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。