医療保険制度の概論
健康支援と社会保障制度 / 医療保険・社会保障制度
解説
医療保険制度とは、病気やけがをしたときに医療費の一部を保険者が負担することで、誰もが必要な医療を受けられるようにする社会保障の仕組みです。今回は日本の医療保険制度の全体像について解説します。
国民皆保険制度
日本では1961年(昭和36年)に国民健康保険法が全国で施行され、すべての国民が何らかの公的医療保険に加入する国民皆保険制度が確立しました。これにより、職業や年齢を問わず、国民全員が医療給付を受けられる体制が整いました。日本の社会保険は、医療・年金・介護・雇用・労災の5つを柱としており、このうち医療保険と年金保険は皆保険・皆年金として全国民を対象としています。
公的医療保険の3区分
公的医療保険は、加入者の属性によって大きく3つに分けられます。1つ目は被用者保険(職域保険)で、会社員が加入する健康保険(協会けんぽや組合管掌健康保険)、船員保険、公務員や私立学校教職員などが加入する各種共済組合が含まれます。被用者保険の加入者は被扶養者を含めて人口の約6割を占め、3区分の中で最大の加入者数となっています。2つ目は国民健康保険(地域保険)で、自営業者や退職者などが加入し、市町村や国民健康保険組合が運営しています。加入者数はおよそ3,800万人前後です。3つ目は後期高齢者医療制度で、75歳以上の高齢者を対象とします。後期高齢者医療制度の財源は、公費5割・現役世代からの支援金4割・高齢者本人の保険料1割でまかなわれています。
自己負担割合
医療機関の窓口で支払う自己負担の割合は、年齢によって異なります。義務教育就学前の乳幼児は2割、6歳から70歳未満の現役世代は原則3割です。70歳から74歳は2割ですが、現役並み所得者は3割となります。75歳以上は原則1割で、一定以上の所得がある人は2割、現役並み所得者は3割を負担します。
療養の給付
療養の給付とは、健康保険法に基づき、業務外の事由による疾病や負傷について保険医療機関で治療を受けられる給付のことで、サービスそのものを受けられる現物給付にあたります。給付の対象となるのは、診察、薬剤や治療材料の支給、処置や手術その他の治療、在宅で療養する際の管理・看護、入院とその際の看護です。一方、予防や健康管理は対象外であり、健康診断、人間ドック、予防接種は給付されません。また、美容を目的とした医療、正常分娩、業務上の傷病(労災保険の対象)も療養の給付の対象外となります。
保険外併用療養費と先進医療
保険が適用されない治療を受けると本来は医療費の全額が自己負担となりますが、評価療養や選定療養に該当するものについては、保険診療と併用しても保険給付部分を受け取れる保険外併用療養費の制度が設けられています。代表的なものが先進医療で、これは厚生労働大臣が定める高度な医療技術のうち保険適用の評価対象となっているものです。先進医療を受ける場合、先進医療にかかる費用(技術料)は全額自己負担となりますが、診察・検査・投薬・入院料など通常の治療と共通する部分には保険給付が適用されます。
現物給付と現金給付
保険給付は、サービスを直接受ける現物給付と、お金で支給される現金給付に分けられます。現物給付には、療養の給付、入院時食事療養費、訪問看護療養費、高額療養費、家族療養費などがあります。現金給付には、病気で働けない期間に支給される傷病手当金、出産前後の休業を補償する出産手当金、出産時に支給される出産育児一時金、死亡時に支給される埋葬料などがあります。
診療報酬制度
診療報酬とは、医療機関や薬局が提供した医療サービスの対価として支払われる公定価格です。診療報酬の改定は、中央社会保険医療協議会(中医協)で審議され、厚生労働大臣が決定します。改定は2年ごとに行われます。保険診療を行う医療機関は保険医療機関として厚生労働大臣の指定を受ける必要があり、6年ごとに更新されます。さらに医師個人も保険医として厚生労働大臣の登録を受けることが必要で、これを二重指定制といいます。支払方式には、行った医療行為ごとに点数を積み上げる出来高払いと、診断群分類に基づいて1日あたりの点数を定めるDPC/PDPSによる包括払いがあります。入院基本料の算定にあたっては、看護必要度や看護配置(7対1、10対1など)が要件となっています。
特定健康診査・特定保健指導
特定健康診査・特定保健指導は、高齢者医療確保法(高齢者の医療の確保に関する法律)を根拠として、40〜74歳の医療保険加入者を対象に実施される予防事業で、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の予防・改善を目的としています。実施主体は市町村ではなく各医療保険者(健康保険組合、協会けんぽ、市町村国保など)であり、加入者と被扶養者に健診を提供する義務を負います。特定健康診査では腹囲・BMI・血圧・血中脂質・血糖・肝機能などを測定し、その結果に基づいて**リスク区分(情報提供・動機付け支援・積極的支援)**が判定されます。特定保健指導はリスクのある者(動機付け支援・積極的支援に該当する者)のみに実施され、全員に行うものではない点に注意が必要です。
まとめ
日本の医療保険制度は1961年に確立した国民皆保険を基盤として、被用者保険・国民健康保険・後期高齢者医療制度の3区分で運営されています。年齢に応じた自己負担割合、療養の給付を中心とした現物給付と傷病手当金などの現金給付の区別、先進医療など保険外併用療養費の扱い、2年ごとに改定される診療報酬と二重指定制、各医療保険者が実施する特定健康診査・特定保健指導など、看護師として制度の枠組みを理解しておくことが重要です。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
日本では1961年に国民健康保険法の全国実施により制度が確立した。
- 2.
公的医療保険は、被用者保険、、後期高齢者医療制度の3つに区分される。
- 3.
公的医療保険3区分のうち、加入者数が最も多く人口の約6割を占めるのはである。
- 4.
後期高齢者医療制度の対象年齢は歳以上である。
- 5.
6歳から70歳未満の現役世代の医療費自己負担割合は原則割である。
- 6.
健康保険法に基づき、保険医療機関で診察や治療を受けられる現物給付をという。
- 7.
傷病手当金や出産育児一時金は給付に分類される。
- 8.
診療報酬は(中医協)で審議され、厚生労働大臣が決定する。
- 9.
診療報酬は年ごとに改定される。
- 10.
診断群分類に基づく包括払い方式をという。
- 11.
保険外併用療養費の対象であるを受けた場合、その技術料部分は全額自己負担となるが、通常の診察・検査・投薬などには保険給付が適用される。
- 12.
特定健康診査・特定保健指導の対象年齢は歳で、メタボリックシンドロームの予防・改善を目的としている。
- 13.
特定健康診査・特定保健指導の実施主体は市町村ではなく各であり、根拠法令は高齢者医療確保法である。
- 14.
特定保健指導は受診者全員ではなく、健診結果から判定された(動機付け支援・積極的支援)に該当する者のみに実施される。
「医療保険制度の概論」の過去問演習
日本の医療保険、誰がどこに入っている?人口比で見る3つの柱
第115回 午前 第30問
特定健診・特定保健指導を制度の骨格から理解する
第115回 午前 第86問
医療保険で受けられるもの・受けられないものを整理する
第114回 午前 第5問
診療報酬制度の仕組みを整理しよう
第111回 午後 第30問
誰もが医療を受けられる国 ─ 国民皆保険1961
第109回 午後 第4問
健康保険の「療養の給付」、治療だけが対象
第109回 午前 第4問
公的医療保険はどれ?
第108回 午前 第86問
日本の医療保険制度、公的保険のキホンを押さえよう
第107回 午前 第64問
医療保険制度の基本をおさえよう
第105回 午前 第31問
