脳卒中疑いの救急観察 意識レベルが最優先な理由
看護師国家試験 第106回 午前 第115問 / 成人看護学 / 脳・神経系
国試問題にチャレンジ
Aさん(70歳、男性)。妻(74歳)と2人で暮らしている。Aさんがトイレに入ったまま戻ってこないので妻が見に行くと、トイレで倒れていた。妻が発見直後に救急車を要請した。救急隊からの情報ではジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉Ⅱ-20で右片麻痺があり、バイタルサインは、体温36.5℃、呼吸数16/分、脈拍108/分、血圧200/120mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO 2 〉96%であった。 救命救急センター到着時に観察する項目で最も優先するのはどれか。
- 1.体温
- 2.心電図波形
- 3.意識レベル
- 4.尿失禁の有無
対話形式の解説
博士
トイレで倒れた70歳男性。右片麻痺、血圧200/120、JCS Ⅱ-20じゃ。これはほぼ脳卒中と考えてよい状況じゃな。
サクラ
血圧がすごく高いですね。正常は収縮期130くらいですよね。
博士
その通り。高血圧歴があるかは不明じゃが、脳出血の典型的な血圧じゃな。被殻出血や視床出血は高血圧性脳出血の代表的な部位じゃ。
サクラ
JCS Ⅱ-20ってどのレベルですか?
博士
JCSは「3-3-9度方式」で、Ⅰ(覚醒しているが意識清明でない)、Ⅱ(刺激で覚醒する)、Ⅲ(刺激しても覚醒しない)と大別される。Ⅱ-20は「大きな声や身体の揺さぶりで開眼する」レベルじゃ。
サクラ
中等度の意識障害ですね。救急到着時、一番観察すべきなのは?
博士
意識レベルじゃ。脳血管障害では意識レベル・瞳孔・麻痺の経時的変化が治療方針を決める最重要情報なのじゃ。
サクラ
なぜそこまで意識レベルが大事なんですか?
博士
脳内の出血が増えたり脳圧が亢進すると、意識レベルは短時間で悪化する。Ⅱ-20がⅢ-100になれば、開頭手術や気道確保の判断が必要になる。変化を見逃せばその機会を失うのじゃ。
サクラ
体温もバイタルの一つですけど、なぜ最優先ではないんですか?
博士
体温は重要じゃが、脳卒中急性期での優先度は意識・神経症状の下になる。発熱は脳保護の観点から管理するが、それは治療方針が決まってからでよい。
サクラ
心電図はどうですか?心房細動なら心原性脳塞栓症を疑いますよね。
博士
よく知っておるのう。心電図は原因鑑別に重要じゃが、「最優先の観察項目」ではない。意識レベルと神経所見の次に見るのじゃ。
サクラ
尿失禁は?倒れた時にあったかもしれないですが。
博士
尿失禁は生命維持に直結しないので優先度は低い。ただし、意識障害や神経性膀胱の所見としては参考になることがあるのう。
サクラ
脳卒中で覚えておくべきポイントって何ですか?
博士
まず「クッシング現象」じゃ。頭蓋内圧亢進で血圧上昇・徐脈・呼吸異常(三徴)が起こる。これが出たら脳ヘルニアが近い。
サクラ
他には?
博士
治療の時間的制約じゃな。脳梗塞に対するt-PA静注療法は発症4.5時間以内、血栓回収療法は24時間以内が目安じゃ。発症時刻が不明な場合の扱いも国試頻出じゃよ。
サクラ
素早い判断と観察が命を守るんですね。
POINT
脳血管障害が強く疑われる患者の救急初期対応では、意識レベルの経時的観察が最優先となります。JCS Ⅱ-20という中等度の意識障害に右片麻痺と著明な高血圧が加わる本症例では、脳出血・脳梗塞いずれにせよ病態が急速に悪化しうるため、意識レベル・瞳孔・麻痺の変化を連続して把握することが治療方針決定の鍵となります。体温や心電図、尿失禁の観察も大切ですが、生命維持と治療適応判断に直結するのは意識レベルです。脳卒中急性期看護では、クッシング現象や脳ヘルニアの兆候を早期に捉え、t-PAや血栓回収療法などの時間的制約を意識した対応が求められます。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:Aさん(70歳、男性)。妻(74歳)と2人で暮らしている。Aさんがトイレに入ったまま戻ってこないので妻が見に行くと、トイレで倒れていた。妻が発見直後に救急車を要請した。救急隊からの情報ではジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉Ⅱ-20で右片麻痺があり、バイタルサインは、体温36.5℃、呼吸数16/分、脈拍108/分、血圧200/120mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO 2 〉96%であった。 救命救急センター到着時に観察する項目で最も優先するのはどれか。
解説:正解は 3 です。JCS Ⅱ-20は「刺激を加えれば覚醒するが、大きな声や身体を揺さぶると開眼する」レベルで、中等度の意識障害にあたる。右片麻痺と高血圧(200/120mmHg)から脳血管障害(特に脳出血・脳梗塞)が強く疑われる状況であり、脳圧亢進や出血の増大により意識レベルはさらに悪化する可能性がある。救急外来では意識レベルの経時的変化が治療方針決定(手術適応、血圧管理、気道確保)の決定的な指標となるため、最優先で観察する。
選択肢考察
-
× 1. 体温
体温もバイタルサインの一つだが、発症直後の脳血管障害ではまず意識レベルと神経学的所見が最優先となる。体温管理(解熱、クーリング)は病態が安定し脳保護の観点から検討される。
-
× 2. 心電図波形
心電図は心原性脳塞栓症(心房細動など)の鑑別に有用だが、意識レベルと神経症状の観察に続く優先度。生命維持に直結する脳障害の進行を判断するのは意識レベルが中心。
-
○ 3. 意識レベル
脳血管障害が疑われる状況では、意識レベル(JCS、GCS)と瞳孔所見、麻痺の経時的変化が最重要観察項目。治療方針(開頭術、血栓溶解療法、降圧管理)決定に直結するため最優先で継続観察する。
-
× 4. 尿失禁の有無
尿失禁の有無は生命予後や治療方針に直接関わる所見ではなく、救命救急センター到着時の最優先項目とはならない。
JCS(ジャパン・コーマ・スケール)は3-3-9度方式で、Ⅰ(覚醒)、Ⅱ(刺激で覚醒)、Ⅲ(刺激しても覚醒しない)の3桁で表現する。Ⅱ-20は「大きな声または身体を揺さぶると開眼する」レベル。脳血管障害では意識レベル・瞳孔・麻痺の経時変化を観察し、脳圧亢進の三徴(意識障害、血圧上昇、徐脈=クッシング現象)にも注意する。また、治療可能な脳梗塞の時間的制約(t-PA 4.5時間以内、血栓回収療法24時間以内)も重要な知識。
脳血管障害が強く疑われる患者の救急初期観察では、意識レベルが最優先となることを問う問題。
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